ステータスをリアルタイムで確認出来るということは、ログも残されているということで
「ご苦労。彼らは先程『フォルジュロン』前にて発生した騒動の重要参考人だ、私が対応する。空いている取調室はあるだろうか?」
「ハッ!現在、017号室以降であれば開放されております!」
「了解した。では017号室を使用する。貴君ら、付いてこい。此処からは私が先導する」
片側の扉が開き、先へと進むケーラの後を追う。コツコツと歩く度に靴音が反響する通路を進むと『017』と書かれた扉の前でケーラが立ち止まる。扉付近にはタッチパネルのようなモノがあり、ケーラがそれに右手をかざすと、扉は横にスライドして開いた。
室内はテレビドラマなどで見たことのある取調室とは若干様相が異なり、まず室内の照明が暖色であった。だいたいこういうのって寒色のイメージがあったんだが、なんか斬新だな。
室内も取り調べの為の椅子と机だけで窓もない殺風景――ではなく、複数のソファに小さなテーブル、壁際には観葉植物が置かれていた。脱走防止用と思われる柵はあるが、備え付けられた比較的大きな窓からは2つの月が顔を覗かせている。
「これが取調室、ね。ずいぶん趣きがあるみたいだけど」
「ここを訪れる事になった睡醒者は大半がこの一室に対して似たような感想を零すのだが、此処は間違いなく取調室だ。どこでもいい、好きに掛け給え」
レオレクスのつぶやきに対してケーラは淡々と答えた。背負っていたクレイは横長のソファに寝かされる。相変わらず動かないので実は落ちてるんじゃないだろうか?
「いま簡単な軽食を手配させる」
「まあなんとも至れり尽くせりな事で。それよりこのバングルの解除はまだかい?」
「それは調書を取ってからだ。私が貴君らをここに連れてきたのは取調が目的なのだから、終わるまで外すつもりはない」
「なら黙秘権を行使しまーす」
ソファに腰掛けて間延びした声でそっぽを向きながらレオレクスが答える。それを見たケーラはヤレヤレといった感じで両肩を竦めてみせた。
「モクヒケン、その単語が何を意味するのかは知らないが、私達が取り調べるのは睡醒者たる貴君らの本人の口から発せられる言葉ではないぞ。ここは解析機能のある一室であり、貴君ら睡醒者が1人の例外なく装着している端末であるステートウォッチの活動記録をスキャンして調書は作成される。解析には少々時間はかかるがな」
「……なにそれ、オレそんなの知らないんだけど」
「ステートウォッチってそんな機能があるんですか?」
「睡醒者に目覚めたとしても、真っ当に生きるなら知り得る事のない情報だから知らないのも無理はない。なに、別にそれは本当に自身は悪事を働いておらず、発した言葉に嘘偽りがなければ何も問題のない話だ、正直者なら何も心配は要らない」




