姉より優れた妹など存在しない
「あ、姉君その、歓談している所申し訳ないのですが、その男は重要参考人でありまして」
「そうなん?ほんなら大人しく連行されとき。いい薬になるさかい」
「いやいや、別にオレが悪事を働いたわけじゃないから抵抗してたんだけど?そこの彼もオレが窮地に立たされた時に助けてくれたってだけで巻き込まれてさ、オレ達すごい迷惑してるんだよね」
「あんたはいつかなんかやらかす思うてたから別に驚かへんけんけど、白髪の兄ちゃんは付き合う相手、よぉく考えた方がええよ?咄嗟に人の為に動けるんは美徳やけど、必ずしもそれが正しいとは限らへんさかい」
「は、はい」
「うん、凄く聞き捨てならないんだよね。それにリーラライフだって公務を邪魔したようなものなんだから、お咎めが必要なんじゃないの?まさか身内だから見逃すなんて言わないよね?」
「何を世迷い言を。当然だ。例え姉君であろうと、邪魔立てするのであれば――」
「――へぇ?邪魔立てするなら、なんや?言うてみぃ?」
ピシリ、と空間に亀裂が入るかのような威圧感がリーラライフさんから発せられる。カシさんが失言やらかした時と同じ雰囲気が漂い始める。
この妹あってこの姉あり――というか、リーラライフさんも実はなんかすごい実力者なんじゃないか疑惑が急速浮上している。先程までオレ達を圧倒していた女が今では借りてきた猫のように萎縮してしまっているし。もしくは単純に姉としての威厳力が強すぎるか。
「じゃ、邪魔立てするのであれば………………あ、姉君、最近巷で絶品と評判の甘味品を見つけたので、よろしければ本部にて召し上がられませんか?」
ゴマすり忠犬ハチ公爆誕の瞬間である。姉の威厳は時に国家権力すらひれ伏せさせる破壊力を持つ。
「世迷い言じゃないか」
「う、煩い!!」
「堪忍なぁ、最近のうちは夜間に甘味は食べへんのよ。代わりにこの2人に食べさせたってなぁ。――『ウル・バインド』」
「ッ!?」
「なっ!?」
一瞬の隙にリーラライフさんが杖から放った魔法が俺とレオレクスの動きを拘束する。
「あ、姉君!?なぜ私まで!?」
「堪忍なぁ。この魔法強力なんやけど範囲で縛るさかい、近くにいると巻き込まれるんよ。まあケーラならこのひよっこ2人よりも早く拘束解けるやろうから、赦したってなぁ」
まさかの妹さんまで拘束してるが特に悪気もなさそうで。というかしれっとウル系の魔法を使ったんですけどリーラライフさん。
「うちは善良な一般市民さかい、その行いが善か悪かを判断するんはお役所にお任せしますわ。まあ理由はどうあれ2人はしっかり勉強しぃや。それとそこで愉快な置物になってる子ら、2人の知り合いならはよ助けたってな?ほななぁ」
リーラライフさんは場を収めると、そう言い残してスタスタと立ち去っていった。愉快な置物?……あ、クレイの事か!先程風で吹き飛ばした際に積もっていた雪山が吹き飛ばされ、奇抜な姿勢でノックダウンしているクレイとゴーニュが露わになってなっていた。




