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この戦いからは逃げられない!

とりあえず幸か不幸か周囲の包囲網は解かれた。周囲からの奇襲を気にせずに戦えるが、だからといってそれで相手の攻撃を凌げるかはまた別の問題だ。


眼前の女の攻撃パターンは近距離は短剣、中距離は銃撃、遠距離は氷塊ぶちかましのオールレンジに対応している。接近戦を仕掛けるにも銃撃と氷塊の弾幕を潜り抜けて近づかなければならず、接近してもなんかやたら硬い短剣に防がれることなく一撃をお見舞いしないといけない。


とりあえず短剣で攻撃を弾かれたらノックバックからの麻痺で動けず詰みだろうな。さっきまでは油断というか、様子を見ているような雰囲気があったが、今の彼女からは一切そういった気配を感じられない。淡々と冷徹に冷酷に、業務を遂行する機械のような印象を纏っている。



「レオレクスさん、戦略的撤退もナシですか?」


「直接攻撃を仕掛けていないキミなら兎も角、オレにはそんな選択肢はないよ。やるかやられるか、それだけだよ」


「――驚いたな、隣の貴君は逃げられるつもりでいるのか」


「ッ!」



会話に割り込んだ女は夜空に掲げた左手を垂直に振り下ろし、氷槍を猛烈な勢いで解き放った。俺は槍を前面に突き出して魔法名を叫ぶ。



「『フレイム』!!」



穂先から放たれた炎が氷槍と衝突する――が止まらない!というより先程より炎の勢いが弱まっているのは……『恢白』のブーストがないからか!?現在『ランスロッド』を握っているのは極彩色の色が抜けた右手である。貯蔵されている魔力の強化があったからあの氷塊を溶かし尽くす事が出来たのであれば、そりゃ防げるはずもない!


慌てて持ち手を左手に持ち替えようとするもこれは間に合わ――



「――――『火焔槍・烈風』!!」



――ないかと思われたところで、レオレクスが握る槍から炎が放出されて氷槍を溶かしてみせた。溶け切った氷槍からは水蒸気が溢れて視界が遮られる。



「これで貸し借りなしだね」


「すみません、助かりまし――ッ!?」



窮地を救ってくれたレオレクスへ礼を述べようとした所で、物凄い速度の氷弾が水蒸気の煙幕を突き抜けて顔の横を掠めて飛んでいく。頬を掠めていたのか、若干のダメージを受けて体力が削られた。それから間髪入れずに氷弾が休みなく襲い掛かる。



「魔法で放つ氷弾ならそろそろ魔力切れを起こしてもよさそうなんだけど、まるで途切れる気配がない……、か。想定以上に面倒な相手に首突っ込んでしまったかもしれないね」



面で迫りくる氷の礫を華麗な槍捌きで叩き落としながらレオレクスがボヤく。俺もなんとか槍を動かし氷弾を叩き、弾き、間に合わないのは手甲で受けながら斉射をやり過ごす。数発の礫が触れただけで『恢白』がすぐさま極彩色の輝きを取り戻すのだから、相当の魔力が込められている。にも関わらず、氷の弾丸は尽きる様子はない。


流石に無尽蔵、というわけではないだろう。何かしらのカラクリがあるはずだ。銃かそれとも装備か。いやまあゲームシステム的に無尽蔵の可能性も考えられるが、そうなのだとしたら完全にお手上げだ。流石にその線はないと思いたいが……。

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