吐いた唾は飲めぬ
「いいだろう、ならば滑らぬようしっかりと氷漬けにしてやる」
明確な敵対意志を示した事で空気が変わる。張り詰めた冷気が空間を支配する。ゲームなので鳥肌が立つことはないのだが、ゾクリとした悪寒が背中を駆け巡る。前言撤回、睨まれただけで人が死ぬ事はあるかもしれない。
女は銃口を此方へと向け、躊躇いなく引き金に何度も手をかけ、連射されて勢いよく迫る氷の礫が視界を覆う。
「――――『火焔槍・烈風』!」
魔法の『フレイム』で撃ち溶かそうとしたところ、痺れ状態から回復したレオレクスの放った炎が氷弾を飲み込んだ。
「…………あー、ンンッ!みっともない姿を見せてしまったけど助かったよ、ありがとう」
バツが悪そうに咳払いをしながら、すぐ傍まで移動してきたレオレクスに礼を述べられる。
「気にしないで下さい。それよりどうするんですか?周囲完全に塞がれてますけど」
組織で動いているからか、周囲のフルフェイス集団は警戒しながらも決して独断で動こうとはせず、じっと俺とレオレクスの動きを観察していた。先程暴れていた二人組はというと、数人がかりで完全に取り押さえられている。何かしらの方法でここを切り抜けなければ俺達もすぐにああなってしまうだろう。
「どうするも何も、どうにかして切り抜ける以外方法ないよね」
「大人しく事情聴取を受け入れるのは?」
「ナシだね。今更そんな恥ずかしい真似出来ないよ」
「現在進行形で十分恥ずかしい真似してると思いますけど」
「うぐっ、…………キミ、意外と言うね?」
「あ、すみません」
眼前に立つ女の眼光というか圧が思いのほか強いせいか、普段なら親しい人間にしか出すことのない素の本音が溢れ落ちてしまう。うん、だいぶ余裕がないぞ?それほどまでに対峙する女のプレッシャーが凄まじい。実は隠しボスとかだったりしますかこの人?
「貴君らは決して手を出すなよ。先にその捕縛した2機を連れてに本部に帰還していたまえ。私もすぐに向かう」
「ハッ!!」
「承知致しました!!」
女の指示を受けて包囲が解かれ、フルフェイス集団は二人組を連れて離れて行く。二人組はそれぞれ暴れられないように猿轡を咬まされ、巨大な布で上半身を簀巻きにされて大柄な男と巨人族に担がれていた。完全にモノ扱いの晒し者である。
うん、これ『瑞氷』出したら終わるな。最悪捕まる事を想定すると絶対に『瑞氷』はダメだ。使って醜態晒したのがバレようものならエクレトゥールさんに吊るされる。いやまあ現状がバレた時点でアウトのような気がしないでもないけど。
「どうした?来ないのであればそのまま留まっているがいい。今、楽にしてやる」
女が再び左手を天にかざすと先程とは形状の異なる氷塊が夜空に浮かび上がった。今度は球状ではなく切り出された木材のような円柱であり、先端は鋭く尖っており、まるで巨大な槍である。それが2本3本……6本。こちらに照準を合わせている。やっぱボスだろこのキャラ?殺意が高すぎるぞ。




