お願いと脅迫は紙一重
氷の弾丸に使用されていた魔力を吸収したことで、『恢白』が煌々と極彩色に光り輝く。うん、眩しいのもあるが、めちゃくちゃ目立つなこれ?プレイヤーやNPCのヘイトを意図せず集めてしまうんじゃないのかと疑うレベルの光量である。
日中であれば色が目立つとはいえそんなに気にならなかったのだが、夜間で薄暗いとこうも眩しくなるのか。まあ外付けの魔力を得られるメリットがあるのだ、それ相応のデメリットがあっても不思議じゃない。
それに裏を返せば夜間や街灯のない薄暗い場所を歩く際に光源いらずだし、なんか上手いこと目眩ましとかにも使えたり……するのか?やってみないことにはなんとも言えないが。
考察もそこそこに視線を2人の戦闘へと戻す。弾丸を弾き飛ばしたレオレクスだが、こちらへ謝罪をすることもなく……というか謝罪する暇がなさそうだ。一瞬目を離した隙に、戦闘が激化していた。
連続で先程と同じサイズの氷弾を放ちながら、女がレオレクスへと接近して距離を詰める。レオレクスは巧みな槍捌きと穂先から放出している炎を駆使して氷弾の雨霰に対処しているが、単純な物量差で徐々に押され気味だ。
「ふむ、なかなか手強いな。数発も放てば大抵は大人しくなるが、まだ抵抗の意志を示すか」
「悪事を働いたわけでもないのに、誤認逮捕されようとしているなら抵抗するさ」
「逮捕ではなく聴取目的なのだが……、まあいい。ここまで歯応えのある者は稀だ。私も久々に本気を出すとしよう」
その発言の直後、女が右手で銃を連射しながら左手を夜空へと掲げると、視界が突如として暗くなる。視線を上空へ向けるとそこに浮かぶは巨大な氷塊。おいおいおい、まさかそれ落とすつもりじゃないだろうな……?
「物量が通じないのであれば、質量で押し潰させてもらおうか」
「はは、治安維持部隊とやらが率先して治安を乱すのはどうなんだい?」
「安心したまえ。周辺の建物へ被害を出さないよう細心の注意は払っている。貴君が大人しく同行してくれるなら何も問題はない」
「それ脅迫――――なんだよねッ!『身体強化・捌式』!」
強化スキルを発動させ、全身に青白いオーラを纏ったレオレクスが爆発的な力強い踏み込みで活路を求めて駆け出した。瞬く間に彼我の距離を詰めると燃え盛る炎の槍が女の喉元へと迫る。
「――――シッ!」
裂帛と共に繰り出された槍撃だが、その渾身の一撃は鋭い金属音が打ち鳴らされて不発に終わる事を告げる。
「ッ!?硬った……!?」
「希少な『蒼金剛晶』を素材にした短剣だ。生半可な武器では刀身に触れただけでへし折れるのだが……成程、その槍は担い手と遜色ない得物であったか」
ノックバックを受けて片膝を地面に擦りながら後方に下がるレオレクス。対峙する女の左手にはいつの間にか深い蒼の短剣が握られていた。




