爆発は生存フラグ
店外に出てまず飛び込んできたのは大きく燃え盛る火柱だった。地面に横たわる何かしらの物体が薪となり、轟々と音を立てて激しく燃えている。
……いやあれ人では? プレイヤーか?燃え盛る火柱の火元を目を凝らして見ると、力なく倒れている人のようにも見える。ただし火が強すぎるせいでハッキリとはわからない。なんらかのゲーム的な表現規制がされてるのも考えられるか。
火柱の周囲には人はおらず、地面の数カ所に何かが炸裂したような穴や、鋭い金属か何かで斬りつけたような痕が何箇所か出来ていた。それから先に店から出ていたレオレクスとクレイ、ゴーニュの姿が見当たらない。やられてしまったのか、もしくは場所を移したのかと周辺をグルリと見渡すと、上空で金属がぶつかり合う音が響いた。
視線を音の発生源へと向けると、そこには周辺の建物よりも高い上空で足元になんらかのスキルエフェクトを纏ったレオレクスが空中に留まっていた。すぐ傍には巨大なジェットパックを背負ったゴーニュに抱き抱えられ、滞空しているクレイの姿もある。3人が対峙しているのは……なんだあれ?背中に翼が生えてる人のように見えるが。
翼の生えた人型の存在の手に武器は見当たらない。というより右腕がなかった。そうなると、先程店の扉を突き破って中に飛び込んできたのは、おそらくあの飛行する存在の腕だろう。機械の腕だったので機人族か従機士のどちらかになるのだが、仮に従機士だとして従機士は敵性NPCになるのか?プレイヤーのお助けNPCみたいな立ち位置だよな?
上空に留まっている彼らはなにかしらの会話をしているようにも見えるのだが、距離があるせいで会話はまったく聞き取る事が出来ない。加勢しようにも、俺には上空での戦闘に参加出来るスキルは何一つとして所持していないので、傍観を決めることしか出来ない。――と思っていたのだが、事態が一変する。
火柱が動いた。否、動いたのは火柱ではなく、薪代わりに燃えていた人の形をした存在であった。
幽鬼の如くゆらりと立ち上がったそれは、上半身をダラリと力なく前方に傾けた直後、身体を大きく仰け反らせた。それにより、全身の纏わりついていた炎の鎧が弾け飛ぶ。飛散した焔は周囲に飛び散り、その一部が立ち並んでいる店頭の店先に設置されていた木製の看板に燃え移る。
「……アッブネー、油断シタゼ。ナントカ『再起動』間ニ合ッタカ。マサカアンナ簡単ニ攻撃ヲ喰ラッチマウナンテナ」
炎から解放された存在は、合成音声のような低音の声色で独りごちる。頭上にプレイヤー名の表記はない、となるとNPCのようだ。
容姿は成人男性と同等の人型、身長は俺よりやや低い程度。指先と足先には鋭く伸びた爪のようなモノが見える。全身は燃えていた影響で衣服等を身に纏っていないが、全身がメタリック仕様というかスキンを剥いでフレームが丸見えになった人型アンドロイドのような状態だ。炎の影響で焼け落ちたのだろうか。
「アーア、折角ノ一張羅ガ台無シジャネーカヨォ。マタ奪ワネェトナ。……ン?ナンダァテメェ?サッキノ男ノ仲間カ?」




