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慣れない事はするもんじゃない

「なん――いっ!?痛ッ!?」


転がり込んできた何かが店内で装備を物色していた女のプレイヤーのふくらはぎに直撃し、手に持っていた装備が床に落下するのと同時に悶絶の声があがった。物凄い勢いで直撃したそれはくの字に折れ曲がった棒のような形をしていた。


……いや、違う。よく見ると棒じゃないぞ。これは――



「な、なんなん……う、腕ぇ!?」



そう、棒かと思われていた物体は人間とほぼ同サイズの腕であった。突然の猟奇的光景に、直撃をくらった女のプレイヤーは素っ頓狂な声を上げて恐れ慄く。握りコブの出来る上腕二頭筋の中間あたりから切断された腕が床にゴロンと転がっている。


転がる腕に血の跡はなく、細い繊維のようなケーブルが飛び出している。切断面からはバチバチと火花が散っていた。人と同じ形を模している腕でがあるが、生身の人間の腕ではなく機械で出来た腕だ。


機械の腕となると、このゲームでは人の形を模した機械は機人族か従機士のどちらかになるのだが、これだけではどちらの腕なのかは皆目検討もつかない。


パッと見た感じの印象は細腕である。巨人族のような丸太の如く大きく、アスリートの異常発達した太腿くらいあるようなデカい腕でもなく、ごく標準的な人間の腕。少なくとも、先程店の外へと出ていったクレイが連れていた巨人の従機士であるゴーニュの腕ではなさそうだ。


切断面は荒れており、切れ味鋭い武器で叩き切ったというよりは、無理矢理引きちぎったような印象を受ける。槍で刺し貫いて強引に千切ったか、亀裂目掛けて鈍器で叩き折ったか、そんな印象だ。勢いよく扉を突き破って来たということなら、相応の速度で離したんだろうけども。



「おうおうなんだってんだ一体!?大丈夫かいお嬢さん!?」


「え、ええ。少しダメージは受けたけど平気です」



男の店員が慌ててカウンターから飛び出して直撃を受けたプレイヤーの元へと駆け寄る。女のプレイヤーは直撃の衝撃で落とした商品を拾い直しながら、そっと木箱の中へと戻す。それからポーションを取り出して回復を図った。



「人の腕が飛び込んでくるたぁ随分と物騒だな!?お客サン方!また飛んでくるかもしれねぇから気をつけてくれよな!?」



と、その直後、またもや建物の外で爆発音が炸裂する。建物の外から響く金切り声とそれを掻き消す爆発音が連続し、建物全体が衝撃で揺れ動く。少し騒動が激しくなったか?なんかそのうち火の手でも回り始めるんじゃないだろうかこれ。


そうなると後手に回るのはよくないな。気がついたら入口が炎上して出られず、屋内で蒸し焼きになろうものなら目も当てられない。よし、外の様子を確認しに行くか。


即決即断。装備は……1日経過して『魔力中毒状態』が解除されて魔法が使えるようになってるから『ランスロッド』を試してみるか。俺はステートウォッチを操作して、『ランスロッド』を取り出して掴み取り、入口へと歩き始める。



「ん?オイ!どうしたってんだいお前サン!まさか外に出ようってんじゃないだろうな?危ねぇぞ!?」



外に出向こうとすると、店員から呼び止められた。いきなり外から千切れた腕が飛び込んできた所、目の前で危険な場所に赴こうとする人がいたらそりゃ呼び止めるか。


うーん、善意で忠告してくれてるのに無言で立ち去るのも印象悪そうだし、それっぽい返答しておくか。



「冒険者なので危険には慣れてます。大丈夫です」



若干の気恥ずかしさを感じながら店員に言葉を返し、俺は破れた扉を開いて騒動の渦中へと歩を進めた。

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