24時間、戦えます
「それに素材も生半可なモンじゃダメだぜ。Aランクのクエストで討伐するレベルのモンスターのモンじゃないと、素材が武器に負けちまうからな。まあその辺りの混み合った話は、ヴィレさんとこの付き人が詳しいから聞いてみるといい」
付き人、フィーさんの事だろうか。めちゃくちゃ早口で捲し立てて説明してきそうだ。フィーさんは1聞いたら10返す勢いで話すからな。
「待ってな、いま紹介状書いてやるから。ヴィレさんの店は基本的に一見さんは入れねぇからな、なんらかの伝手がないとおっかない用心棒に叩き出されちまうんだ」
どうも、そのおっかない用心棒に色々と行動に釘を差されまくっている男です。
「あ、それなら大丈夫です。昨日すでに来店してるので」
「おおう!?なんだいお前さん、もう伝手があんのかい!?なのになんだってウチにわざわざブロンズメイルの修理を持ち込んでやがんだい!?いやまあそりゃウチとしちゃあ贔屓にしてくれるのは有り難い話だが……」
「あー、その、急ぎで修理したかったので。ヴィレジャスさんの店、昨日午後は閉まってましたし」
「はぁ、なるほどなぁ!まあ個人でやってる店で営業時間が不定期だからなヴィレさんの店は。職人としての腕に関しちゃこの辺り一帯どころかこの世で上から数えた方が早いレベルだが、1人で出来る作業にも限界があらぁなぁ」
腕を組みながらウンウンと唸る店員。ヴィレジャスさんの店、昨日見た限りだとスタッフはフィーさんと用心棒のエクレトゥールさんと本人合わせて3人しかいなかったしな。修理対応や装備製造をおそらくヴィレジャスさん1人でやるってなると、24時間営業なんてしようものなら身体がぶっ壊れてしまう。
「その点、ウチは人数なら揃ってるから年中無休でやらせてもらってるぜ!それに最近は睡醒者の中でも鍛冶に興味があるモンが手伝ってくれてるからな!修理なら何時でも受け付けてるぜ!」
爽やかな笑顔とともにグッと親指を突き立てる店員。しかしその表情はすぐに困り顔へと変化し、苦笑混じりに小さな溜息を零す。
「……まあ昨日からキャパオーバーしちまってるがな。睡醒者の羽振りが良すぎて総動員しても対応が間に合わねぇんだ。ここまで繁盛するのは二ヶ月前に睡醒者の集団覚醒があった日以来さ。まあその時でさえ、在庫がスッカラカンになるこたぁなかったんだがなぁ……」
ガシガシと後ろ髪を掻きながら男はボヤく。集団覚醒、というのはおそらくサービス開始直後のプレイヤーが殺到した事を指しているのだろう。まあサービス開始直後に武器屋に立ち寄ることはあっても、ゲーム開始直後から大金を握り締めていきなり武器を買い漁るなんてことはしないだろうからな。
今回に関してはプレイヤー全員にそこそこの大金をばら撒いた事で起きた突発的な事故みたいなモノである。
ただなぁ、これ1000万人突破で配ったってことは将来また同じような記念で配ったり『詫び石』ならぬ『詫び金』で混乱起こるのが目に見えてるんだよなぁと……。
「色々と大変で――」
――店員のボヤきに同情しようとした直後の事だった。
建物の外で再び爆発音が炸裂すると同時に、入口の扉を突き破って何かが店内に転がり込んできた。




