誤タップ一瞬、気付いた時にはもう手遅れ
「バイバイしてきたデース!」
それから程なくしてクレイが戻って来た。背後に連れているゴーニュの両脇には変わらず武器の詰め込まれた樽が担がれている。ステートウォッチに収納しないのか。それともわざわざ持たせているのは何か理由があるのか?
「じゃあ『アイアンバックラー』と『ヒマンテス』、彼に渡して」
「ガッテンショーチノスケデース!!………………Oh?……Where’d it go?」
レオレクスに促されたクレイはステートウォッチを操作して装備を取り出そうとするも、どうも雲行き怪しい。ステートウォッチを操作してなんども小首を傾げている。これ間違えて一緒に売ったとかそういうパターンなのでは?
「……まさかとは思うんだけど、装備を売った際に紛れたかもしれないとか言わないよね?」
「HAHAHAHA!そんなわけ…………ナイ、……アル、ナイ……アルデスネ!!バイバイしてマース!?リペアしてないのしか残ってないデース!?」
「クレイ、今そういうボケはいいから」
「ボケてないデース!?」
「レオレクス様。大変申し上げにくいのですが、クレイ様は先程一括売却の際に『アイアンバックラー』と『ヒマンテス』を売却されておりました」
おずおずと、その巨体に似合わぬ低姿勢でゴーニュが進言する。どうやら操作ミスかなにかをしたのだろう。
「What!?」
そしてこの場にいる誰よりも驚愕した様相のクレイがゴーニュの発言に反応をみせる。無意識の行動だったりしたらまあ間違えてしまう事もあるだろう、人間だしな。
「ボケてるじゃないか」
「Why didn't you stop me!?If only you had pointed it out, it might have been prevented!?」
「そう仰られても命令を受けておりませんので……」
「そもそもクレイの単純ミスなのに責任転嫁はおかしくないかい?」
「Don’t be so PC.!?」
どうも精神的に昂ると英語オンリーになる様子のクレイ。発音がネイティブすぎて何を言っているのかはさっぱりわからないのだが、とりあえず逆ギレしたのを2人に諌められているのはわかる。
というかしれっとNPCであるゴーニュが英語を理解して日本語で返答するという謎技術が披露されている。
LDDは全世界からアクセス可能なゲームだから、NPCに翻訳機能が搭載されていてもおかしくないんだろうけど精度が凄いな。この翻訳機能だけでも十分商売として成立するレベルなんじゃなかろうか。NPCに話しかけるとリアルタイムで通訳してくれるアプリとか普通に売れそうだ。




