類は友を呼ぶ
「……初期装備の『ブロンズシリーズ』は全部修理したから『シルバーシリーズ』修理してスキル経験値上げたいのに全然見当たらない……!本当にあんのかよガセ情報掴まされたか……?」
「アクセサリーどこだどこだどこだ……!早く見つけないとそろそろ時間的にアイツが来る……!」
それから杖や魔本を探すも1つも見つける事が出来なかったので、目標を切り替えてブツブツ何やらつぶやいているプレイヤー達の近くで良さげな武器を探していると、突然店の扉が勢い良く開け放たれた。
「コンバンハー!!」
カタコトの日本語でイントネーションの怪しい喧しくもやたらよく通る大声に思わず振り返ると、そこにはゴーグルを首からぶら下げて黒い上下一体のつなぎを着崩した女のプレイヤーと、見上げるほどの大きな上背で、同じ黒いつなぎをきっちりと着込み、執事みたいにピンと背を伸ばした巨人族型の男従機士が立っていた。なんだ男か。女の巨人従機士だったら取り乱していた所だった。
「Wow!!!今夜は大量デース、ネ!?」
「うげ!?もう来やがった!?」
「最悪だまだ全部見れてねぇってのに!!」
突然襲来したプレイヤーと従機士に向かってボヤきはじめる周囲のプレイヤー達。なんだ?もしかして厄介者なのか?
装備を漁る手を止めて入口に立つプレイヤーへ視線を向けると、女のプレイヤーと視線が交錯した。女はコの字にした両手で視界を狭めて俺を見るや、迷いのない足取りで背後に巨人の男を従えてこちらへと向かってくる。
「Hiya!!アナタのGauntlet!ワタシ見た事ナイわ!?ちょとー、よく見せてクダサーイ!!」
「おわっ!?」
たどたどしい日本語と共に近づいてきた女のプレイヤーは、返答を待つことなく俺の腕を強引に引っ張り『恢白』をじっくりと見物する。このプレイヤー、筋力のステータスがやたら高いのか引っ張る腕力が尋常じゃなく、腕を引っ張られた瞬間体力が10減少した。
「あの、やめ――」
「――Thanks!!感謝デース!!参考になるましたデス!!」
やめてくれ、と言い終わる前に女は俺を手を放してペコペコと頭を下げてきた。これじゃあ怒るに怒れない。裏表の感じない声音で悪気はないのはわかるのだが、少々強引すぎる。
「感謝のシルシに『デュエルベルト』差し上げマース!!最近ワタシ作ったヤツ!自信作デース!!」
「……はい?」
「いいモノ見せてくれた御礼参りデース!!」
少々どころじゃないな。この人アレだ、人の話を聞かないタイプだ。女はどこからともなく取り出した黒いベルトを差し出して、満面の笑みを浮かべている。あまりにも唐突な展開に受け取るべきか逡巡していると、女と巨人の背後から近づいてくる足音が1つ。
「何か騒々しいと思ったらキミか、クレイ」
「ンー?Oh!ヒナキ!!」
「……あのさ、リアルネームで呼ばないでってオレ前も言ったよね?」
「Oops!Sorry!!ゴメンクダサーイ!」
「それ挨拶なんだよね」
どうもレオレクスのリアルでの知人らしきクレイと呼ばれた女は、背後に現われたレオレクスに何度も平謝りをする。困った、傍若無人が2人に増えたんだがもうログアウトしてもいいだろうか?




