練習を1日サボると3日前の技量に戻る
「明星マーシャさん」
「ハイっす!」
「木ノ下達臣君」
「ハイ」
「土波詩織さん」
「は、はいっ!?」
名前を呼ばれたのは全員2年生の先輩だった。明星先輩はまあ順当な選出で、木ノ下先輩も調子にムラはあるが、ノッてる時は明星先輩に匹敵するくらいに強いので実力順なのだろう。
一方で土波先輩はこの2人と比較して強いというわけではないが特別弱くもなく、部内の平均よりは全然上で普通に強い。少なくとも俺は部内の対戦でほぼほぼ引き分けにしか持ち込めたことがない。というか土波先輩の戦績は異様に引き分けが多い。勝率だけでいえば樫岡先輩や幹谷先輩とかの方が上だが……。
「いま呼ばれた3人と私と副部長が基本的なスターティングメンバーになるわ。大会一週間前までは出場選手登録の変更が可能だけれど、よっぽどの事がない限り変更する予定はないわ。続いてリザーバーで2名、まず1人目が天堂舞香さん」
「はい」
天堂舞香。俺と同じ1年生だがクラスは別で確かA組の特進科。なんかすごい凛っとした感じの女子。
入部試験の時に俺と同じく部員相手に二連勝して、部長副部長と試合をして勝利するも極度の疲労によりリアルでノックアウトして保健室送りという経歴持ちだ。どうも体力があまりないらしい。人にもよるがVRゲームのプレイは普通に運動するよりも疲労を感じる場合もあり、ある程度基礎体力が備わっていないと――
「最後に白峯鏡君」
「あ、はい。…………はい?」
思考を走らせていると、不意に名前を呼ばれて生返事のあと、尋ねるようにもう一度返事をする。あれ?いま俺の名前呼ばれた?
「白峯、返事は一回でいい」
「あっ、すみません」
弧藏先輩に釘を差される。どうやら聞き間違いではなく呼ばれたようだ。ま、まさか呼ばれるとは……。
部長副部長に勝てる実力のある天堂は体力がないから控えなんだろうけど、残り1枠が俺なのか。てっきり樫岡先輩か幹谷先輩あたりが選ばれるもんかと思っていたので完全に油断していた。
「リザーバーは私達3年生が引退した後を見据えて経験を積ませる為に1年生で有望な2人を選んだわ。私が出なくても勝てると判断したら実践を積ませる為にスタメン起用するつもりだから、大会まで一日たりとも練習は怠らないように」
「はい」
「了解です」
思いがけない大抜擢に困惑を隠せないが、とりあえず選ばれたからには頑張るしかないか。
……とはいえ流石に大会まで毎日練習はしんどいので、適度にLDDに逃避しつつになりそうだが。まあLDDとコロッセオ・ファイターズは操作性が似通ってるから、無駄にはならないだろう。




