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営業中。ただし店頭在庫ナシ

店内に入ると、空き巣や強盗に襲われたのかってくらい何もないスッカラカンな有り様だった。在庫整理として複数の樽に雑に詰め込まれた武器と、木箱に積み重なっていた防具の山までもが空っぽだ。夜逃げ直後の一室と言われたら信じてしまいそうなほどに何もない。


プレイヤーは俺以外におらず閑古鳥が鳴いていた。店の奥の方ではカンカンと金属を叩く音が聞こえてくる。修理対応をしているのだろうか。とりあえず無人となっているカウンターへと向かう。


前回来た時は額にバンドを巻いたNPCがいたが、今はその姿がない。まあ販売するものがない店内を見張ったところで盗まれるものがそもそもないからな。


呼び鈴らしきモノがカウンターに置かれていたので鳴らすと、カウンターの奥からピョコピョコと小さな狐耳を揺らしながら紫色の髪色の女の子が飛び出してくる。首元にタオルを掛け、だぼっとした作業着に革エプロンと革手袋に小槌を握り締めていた。



「ボロボロの鎧……修理依頼かっ!?」



狐耳をぴーんと立てて、目をキラキラと輝かせながら少女がカウンターから身を乗り出して尋ねてくる。従業員だろうか?それにしてはだいぶ幼いが。小学生低学年くらいの身長しかないな、小人族ってわけでもなさそうだが単に低身長なだけだろうか。



「えっと、ハイ。お願い出来ますか?」


「まかせろっ!!じゃあ外してここ置いてっ!!状態見るからっ!!」



疑問を抱きつつも言われるがままブロンズメイルを外してカウンターに置くと、狐耳の少女はそれをぐるりと両手で回転させて確認する。



「うーん、前面と背面がぽっかり貫通しちゃってるなっ!!亀裂も大きく入ってるからこれだと修理するより同じブロンズメイルを買うのとあまり値段変わらないぞっ!?」


「値段ってそれぞれいくら位なんですか?」


「ブロンズメイルの新品なら3000Gでこのレベルの損傷の修理は2000Gっ!!あっ、でもいま防具売り切れだからどっちみち修理しか無理だなっ!!いちおー明日の夕方になれば発注をかけた新品の装備と、週に一度入れ替える買い取った武器や防具が並ぶんだけど、そっち見てからにするのもアリだと思うぞっ!!」


1000G程度の差ならまあそこまで気にするほどではないが、初期装備だしそこまで思い入れがあるわけでもないので修理せずに買い替えるという手もあるな。


ただ明日新品の装備が入荷したとしても、プレイヤーに大金が配布されたという事実に代わりはないので、金を持て余したプレイヤーが殺到して買えませんでしたーでは話にならない。大人しく修理を依頼しておくか。


「わかりました。とりあえず修理でお願い出来ますか?」


「わかったっ!けどいま修理依頼が立て込んでて引き渡しは明日の夕方以降になるけど大丈夫かっ!?」



そっちも手一杯になってたのか。店員がカウンターにいないのはこれ従業員総出で修理してるとかなのだろうか。



「大丈夫です。それで」


「じゃあお預かりするぞっ!明日の今ぐらいになれば終わってると思うから、ちゃんと取りに来るんだぞっ!!」


「はい、お願いします」



狐耳の女の子はブロンズメイルを抱えてカウンターの奥へと去っていく。それから金槌が小気味良いリズムで刻む音色を聞きながら、俺は店を出た。


一段落ついたらなんかどっと疲れてきたな……、とりあえず今日はここまでにしておくかな。そのままギルドの仮眠室へと向かい、ベッドに横たわり現実世界へと帰還するのだった。

【小話】


Q.セール品の装備なくなってるけど誰が買ったの?


A.生産職のプレイヤーが買い占めました。


生産職は壊れた武器を修理することでスキルレベルが上昇するので、それ目的で万年金欠状態が大半な生産職プレイヤーが運営から配られた臨時収入で購入していきました。

修理した武器は1番街の路地裏の個人露店で販売されたりしています。中には店頭販売装備と同じ武器でも優れた効果の付随している武器もあったりします。


生産職はまず既存装備の『修理』から始まり、スキルレベルが上昇すると壊れた装備を別種類の武器や防具に作り変える『再構築』に進化し、最終的に素材から自分好みの武器を生み出せる『創造鋳造』のスキルに進化します。


ただし装備につけられるネームに制限(ゲーム内で既に設定されている装備と同じネームは不可)があったり、完全に自由に作れるというわけではありません。

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