表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/216

彷徨う友人は何処へ

「そもそもアタシに対する対応が雑なんだけど!?」

「俺個人としては雑な対応をしているつもりはないのだが」

「じゃあなんでアタシと目を合わせないワケ?」

「……」


アセリアさんに詰められて目を背けるソーマだが、幼馴染を長い事やっている俺には分かる。クールぶってるけど気恥ずかしさが勝ってしまい、彼女を直視出来ずにぶっきらぼうになってるヤツだなこれ。


かなり気合を入れてキャラメイクしたのが見て取れるアセリアさんの見た目は、ソーマが好きな作品に登場するヒロインとよく似ている。

流石に声は異なるが目の前に推しと似たキャラが存在していて、ゲーム内だが触れることが出来るとなればドギマギするのも無理はない。


が、それを指摘して口に出すのも野暮というものだ。

とりあえず生暖かい目で見守って――



『新着メッセージが届きました』



「ん?」


――突然、軽快な電子音がソーマのステートウォッチから鳴り響く。



「もしかしてモリーか?」

「メッセージを送ったのはお前以外にアイツだけだ、確認する」

「ちょっと!話まだ終わってないんだけど!?」

「火急の案件だ、すまん」

「~~っ!!」



ソーマは逃げるようにアセリアさんに背を向け、ステートウォッチを操作してメッセージウインドウを展開する。



「……………………………ハァ」



モリーから送られてきたであろう内容を読んだソーマは深い深い溜息をついた。



「なんて書いてあったんだ?」

「……、説明する気力も湧かん。見てくれ」



険しい表情を浮かべるソーマがメッセージウインドウをこちらに見せる。



『ギルドの場所わかんねぇ!!!!そもそもオレが今いる場所がわからん!!!』



まさかまだギルドに到着すらしていないとは思わんて。



「一旦ログアウトしてリアルであのアホちょっと問い詰めるか」

「……そうだな、それがいい」



頭痛を堪えるように眉間を軽く揉んだソーマは方向音痴のアホにメッセージを送信する。



『一旦ログアウトしろ。話がある』

『ログアウトってどうやんの!?』



「…………。まさかアイツ、事前に何も調べずにログインしたのか?自分から俺達と一緒に遊ぶ事を提案しておいて?正気か?」

「まあ説明書とか読まなさそうなタイプではあるよな」



龍斗は直情的で思い立ったら即行動するタイプの人間だ。後先考えない思い切りのいい性格、良く言えばだが。悪く言えば短絡的なバカである。

個人的には嫌いじゃない一緒にいて楽しいバカだが、短絡的すぎるのが玉に瑕だ。なのでだいたいバカを見る羽目になる。主に俺と蒼馬が。



「そもそもあいつ今どこにいるんだろうな。初期のスタート位置がランダムとはいえ、MAP見たらわかりそうなもんだけど」

「聞いてみるか」



『まずお前は今どこにいる?MAPで現在地は確認したのか?』



「『MAPってどこで見んの!?』って返信きたりしてな」

「……、笑えない冗談はよせ」



『MAPってどこで見んの!?』



「ぶはっ」

「目眩がしてきた……」



自分で言っておいて思わずツボに入ってしまった。龍斗の奴エルフ族が出ることくらいしか知らないまであるぞ。

逆にお前がそこまで見惚れたLDDに登場するエルフ族なんなんだ……?

同じエルフ族のリーラライフさんもかなり美形の顔立ちだったけど、ゲーム内容に思考が回らないレベルだとなるとプレイヤー間でも有名なネームドNPCか?



「念の為の確認だが、シキはログアウト方法を知っているな?」



呆れから怒りを通り越して一周回って冷静になったソーマは淡々とした声で問いかけてくる。



「…………」



そんなソーマの背後で放置されて恨めしそうにジト目でこちらを見てくるアセリアさんと目が合ったが、俺が二人の間に入る余地はないのでとりあえず苦笑いを返しておいた。

好感度ゲージとかあったら多分じわじわ減少してるヤツだなこれ。



「勿論。始めるまで時間があったからある程度は調べてある。LDDの攻略サイトとか掲示板のまとめとか暇な時に見てたから問題ない」



LDDでログアウトするには身体を寝かせられるベッドやソファ等でないと出来ない仕組みとなっている。

その為近くの宿泊施設か初回ログイン時に目覚めたベッドまで戻る必要があるのだが、訓練場から戻って来る道すがらで『仮眠施設』という簡易式のベッドが置かれた部屋を発見している。

今すぐログアウトするならその『仮眠施設』を利用するのが手っ取り早いだろう。



「ならシキは一度ログアウトしてあのアホを外から強制ログアウトしてくれ。VR機器の電源ボタンを5秒以上長押しして離せば実行される」

「わかった」

「健康上の理由で速やかにログアウトする必要がある際の手段だから、本来ならあまり推奨される方法ではないが、自分の居場所すら覚束ないヤツを探すのも手間だ、致し方あるまい」

「それもそうだな。じゃあ一旦ログアウトしてくる」

「ああ、任せた」



ソーマと別れて俺は仮眠施設へと歩き出した。


背後からアセリアさんのフラストレーションが大爆発する音が聞こえたが、俺は聞こえないフリをして歩くスピードを上げるのだった。くわばらくわばら。

LDDにおける有名ネームドNPC ~エルフ族編~


【ニール・ルナ】

地面にまで届きそうなほど長い銀髪金眼ハイエルフ(エルフの上位種族)。

ルナティス最大都市『アルフヘイム』を統治する麗姫



【フィー】

薄桃色のポニーテールの翠眼エルフ。

とある有名な刀匠の元で手伝いをしている。



【キャメラ】

黒髪ウルフカットの碧眼エルフ。

闘技場で実況と解説を勤めている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ