ネコと和解せよ
「ほら、ここからどうにかしないとまた落とし物が増える事になるよ?」
「舐め……るな――!『反抗蹶起』!!」
忍者の身体全身から赤い蒸気のようなものが噴き出すと、レオレクスの両腕による拘束をこじ開けて振り解き、忍者は体勢を建て直す。
「……ああクソ!油断した!!」
忍者は背後に刺さった槍を引き抜き、苛立ち混じりにレオレクスへと高速で投げ返す。レオレクスは飛んできた槍を左手で難なく掴み取りながらニヒルな笑みを浮かべた。
槍が刺さったのにも関わらず何も問題なさそうに戦闘続行可能なあたり、耐久型ビルドだろうか。忍者、というか軽戦士系なら敏捷特化で紙耐久だったりすることもあるが、そうではないらしい。
「んー、なんか飽きてきたな。キミも混ざって2人で攻めてきなよ。そしたらまだ楽しめるかも」
手元で遊ばせている槍の矛先をこちらへと向け、レオレクスからのご指名を受ける。
「ああ、それとオレが指名した2人以外は邪魔しないでね。邪魔するなら串刺しにするから」
周囲で様子を伺っていたプレイヤーに緊張が走る。まあ逃げられそうにないなら反抗する他ないのだが、それでも乱入を許可するような発言は忍者の人からすれば火に油を注ぐ行為なのではなかろうか。
「誰だキサ――……その統一性のない歪な装備、貴様もこいつの被害者か!?」
「え?あ、いやこれは」
「無関係の者なら断るつもりだったが同じ被害者なら話は別だ!協力してこの外道を倒すぞ!!」
どうも俺の初期防具に『瑞氷』や『恢白』を付けた統一性のないチグハグな姿を見て、自らと同じくレオレクスに装備を奪われた被害者と思ってしまったようだ。訂正しようにも即座に遮られてしまい、共に結託して倒す流れに飲まれてしまう。困った、人の話を聞かないタイプだこの忍者さん。
その盛大な勘違いに気づいたであろうレオレクスは、あえて指摘することなくニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「私はニャスパリーグ!貴様の名は!?」
アーサー王伝説だか物語だかに登場する化猫がキャスパリーグだったか、そこからもじって名付けたプレイヤーネームだろう。黒猫の仮面といい、おそらく猫好きだと思われる。
「シキです」
「よろしいシキ!では共に取り返すぞ我々の装備を!覚悟しろ卑劣漢!!」
レオレクスとは初対面である俺が取り返す装備はそもそも存在しないのだが、指摘しても話が拗れそうな気がしたので黙っておく。
「ハハハ!面白いよキミ達!――ならオレも少し本気を出すから、ちゃんとついてきてよ?」




