回収カウンターへ1日で寄せられた最大苦情件数、83件
それからおっかなびっくり要素のある回収カウンターで討伐証を受け取り、クエストを受注するカウンターに並んだ俺達を、さっきよりやつれた感じの様子のランナさんが出迎える。
「……つ、次の方――……って、モリー様、もう戻られたんですか!?」
「おう!……って言ってもオレの手柄じゃなくてシキが一撃で倒したからだけどな!オレ見てただけ!!」
「ああ、成程、お連れのシキ様のご活用あっての事だったんですね」
「強すぎてオレの出番全くなかった!あ、あとこれ討伐証!」
「あ、受け取って来られたんですね、ハイ、確かにお受け取りします」
「ってかそれよりランナちゃんあの回収カウンター何アレ!?超あぶねぇんだけど!?」
「回収カウンター、ですか?……あ、あー…………ええと、ハイ、そう、ですね……。回収カウンターの粗雑な対応は他の冒険者様からも度々苦情が寄せられてはいるんですが、私達に人事権はないのでどうしようもないんですよね……」
あ、やっぱり苦情は殺到してるんですね。そりゃそうか。警報が鳴るでもなく、地面が光ったと思ったら一瞬で飛び出してくるわけだもんな。突然クラクション鳴らされて車に突撃されかけるようなものだ。
いくら一瞬の猶予があったとしても、その僅かな時間で全員が咄嗟に回避出来るとは限らないわけで。せめて再出現位置に白線とか引いてたら良さそうなものだけど、出来ないものなのか?
「ギルド職員の配置に関してはゴルドノア様直轄の部下であるギルド長のシルハム様の采配に委ねられているので、私みたいな末端の職員ではどうにも……」
「にしたってさぁ!?オレあやうく飛び出してきたモノリス……?だっけ?に突き飛ばされそうになったんだぜ!?」
「受付のハーコイさん含めて回収業務に携わる職員はその、なんといいますかだいぶゆるい所があるので、その、申し訳ありませんモリー様……!代わって非礼をお詫びします……!」
「いやランナちゃんに謝って欲しいわけじゃないんだけど!?」
「そ、そうおっしゃられましても……私に出来る事は謝罪することくらいしか……!」
涙目になりながらプルプルと小動物のように小刻みに震えるランナさん。なんか不憫に思えてきたので助け舟を出すとするか。
「落ち着けってモリー。とりあえずどうしようもないんだから、言われた通り俺達の方で気を付けるしかないだろ。モノリスの戻ってくる位置は決まってるんだからすぐ離れたらいいだけだ。何回かやれば慣れるだろ多分、知らんけど」
「うーん、そういうもんかぁ?まあシキがそういうならそういうもんか……」
渋々といった感じで腕組みして小首を傾げながら引き下がるモリー。話が早くて助かる。
「それよりランナさん。クエストを受ける際に加工用の素材として受領するか換金してクエスト報酬に上乗せするかって話、詳しく聞かせてもらっていいですか?」
「は、ハイ……!えっと、討伐証に記載されていた解体詳細によりますとブルーボアの『毛皮』『生肉』『剛角』『蹄』がそれぞれ受領出来るのですが……、冒険者様はこれらの素材を受領するか、不要であればギルドの定める相場の価格で買取を行い、その金額をクエスト報酬に上乗せする事が出来るんです」
「なるほど。それぞれの買取価格ってどれくらいですか?」
「今回受諾された『ブルーボアの討伐』の報酬が8000Gでして、『毛皮』は2000G『生肉』が2500G『剛角』は4000G『蹄』が8000Gでの買取となっております。ですので、もしすべての素材を買取する場合、お渡しする金額は24500Gになります。ただ、受諾されたクエストに対してお二人にお支払いするので受取金額は折半になってしまいますが……」
クエスト報酬は複数人で受諾すると受領金額がその人数分下がるのか。あくまで1つのクエストに対しての支払いだから頭数が増えるとその分取り分が少なくなる、と。寄生プレイの対策だったりするんだろうか?
 




