大衆は見た目で判断する、玄人は性能で判断する
溢れた人混みの隙間を縫うように歩いて探すも、それらしいエルフ族のプレイヤーは見つからず。
うーん、下手に動くよりかは一箇所に留まってメッセージに反応があるまで待つか。しっかし、人を呼び出しておいてい姿を見せないのは何か巻き込まれたか、それとも急に腹でも壊してログアウトでもしたか?
龍斗の提案に賛同するとほぼ高確率で何らかの理由で待たされる事になるのはもう慣れたことだが、いや慣れるのもアレな話だが、良くも悪くもトラブルメーカーなのだろう。退屈しないからまあいいけど。
行き交う人々の通行の妨げにならないようにギルドの入口からやや離れた場所まで移動し、ギルド建物の外壁に背を預けながらプレイヤー達の群れを眺める。
こうして改めて見ると、プレイヤーの大半は人族が多い事に気づく。次点で初期の選べるプリセットアバターのビジュアルが美男美女揃いのエルフ族。巨人族と小人族は数こそ少ないがそこそこ見かけるな、見た目ほぼ人族と変わりないからだろう。
それ意外の種族はほぼ見ない。獣人族と機人族が稀にいるかなって具合で、魚人族や鳥人族、ドワーフ族などは未だにお目にかかれていない。ビジュアル的な問題なんだろうか?まあわりとケモケモしてるというか、好みがわかれそうな感じではあるからな。
まあモリーがそもそもビジュアルに惹かれてこのゲームを始めたくらいだから、遊ぶモチベを保つのに大事な事なのだろう。
ただ一昔前のゲームとは違い、VRゲーム全般は基本的に一人称視点でプレイするのだからそこまで自身が操作するアバターの外見に拘る必用はあるのだろうかという疑問はあるが。
そんな他愛のないことを考えていると、メッセージが届いた。
『すまん!急に腹痛くなってトイレ行ってた!!すぐ向かう!!』
腹壊してたんかーい。まあ何か事件に巻き込まれてるとかでないならよかった。
『おー』と、短文でメッセージを送り返して暫く待っていると、入口から金髪のエルフが飛び出してきた。うん、一目で分かるな。外壁から背中を話して色々と揺らしながらキョロキョロと見渡す友人に呼びかけた。
「モリー!」
「キョウ!いやーわりぃわりぃ!急に腹の中で大乱闘始まっちまってさ!」
「そりゃ災難だったな。あと名前が違うぞ」
「へ?」
「今はシキ」
「おー?……あ、そうだったスマン!」
「まあ別に名前バレしたところでって話だけど、一応気を付けてくれよな」
「うーい。てかキョ――……キ!なんか装備すごいことになってね!?なにその白い剣と白い手袋!?」
「言ったそばからだけど軌道修正したからギリギリ許す。てか手袋て、手甲な。まあ色々あった」
「へー!てかプレイヤーの数ヤバくね?なんでこんな多いんだ?」
「なんでって、お前運営からのメッセージ見てないの?」
「見てねぇ!てかオレ起きたのついさっきだしな!!昨日家帰って夜通しLDD遊んでたらいつの間にか寝落ちしてて、気づいたら昼過ぎてた!」
だいぶ不健康な生活してるなオイ。今日日曜日で明日学校だけど大丈夫かよ。




