友人からの誘い
『いま暇?もし暇ならランク上げ手伝ってくれ!』
モリーから届いたメッセージはランク上げの誘いだった。勿論、断る理由は特にないのですぐに返事を出す。用件も済んで暇になりかけていたところだし丁度いい。
『わかった。今2番街にいるんだが、ギルドまで行けばいいか?』
メッセージを返すと、すぐに既読になった。
『頼む!てかギルドん中、なんか知らんけどめちゃくちゃ人で溢れてるから外で待ってるわ!!』
『了解』
どうやらギルドは変わらず大混雑しているようだ。まさかとは思うが、プレイヤーが殺到しすぎて受注出来るクエストなくなってたりしないだろうな……?そんな一抹の不安を覚えつつ、俺はギルドのある1番街まで駆け出した。
敏捷の大幅上昇とパッシブスキルである『高速走行』と『瞬息俊行』のおかげで、スイスイと街中を風のように走り抜け、あっという間にギルド前まで到着する。2番街を抜けるまでの間、襲撃を受けたり他のプレイヤーが襲われているような事はなかった。まあ事件が発生してないならそれはそれで。
ギルド前は大量のプレイヤーが入口を行き交い、通勤通学で大混雑している駅の改札口のような有り様だった。運営から配られたゲーム内通貨で装備を整えたプレイヤーが、新装備を試す為に殺到しているのだろう。そこかしこから自慢げに真新しい武器を自慢するような会話が聞こえてくる。
「いやぁ運営様々だぜ。欲しかった武器買えてラッキー!しかもラスイチだった、あっぶねー!」
「武器屋の店頭在庫ほぼスッカラカンだったもんな、あんなのはじめて見たぜ」
「それな!ほぼ売り切れで店員のNPCの顔すげーことになってたのマジでウケたわ」
「道具屋に寄ったらポーションとかマナポーションの回復系アイテムが軒並み在庫切れで買えなかったのは気がかりだけど、まあその辺の雑魚モンスターで試し切りするから別に問題ないか」
話を盗み聞く限りだと、武器屋とアイテム屋の店頭在庫は殺到したプレイヤー達があらかた買い尽くしてしまったらしい。市場に甚大な混乱を招いているが大丈夫なんだろうかこれ。ポーションやマナポーションを転売するプレイヤーとかでてきたりしないか?
『ギルドに着いたけどどの辺りにいる?』
懸念を抱きつつとりあえずギルド前にいるらしいモリーを探すも、プレイヤーがこうも多いと人を探すのにも一苦労である。モリーに到着した事をメッセージで送るが、すぐに既読にならない。うーん、モリーのなんか色々と盛った金髪ロングのエルフは目立ちそうだからすぐ見つかりそうなもんだが……。




