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天才、迷言と共に去りぬ

それから休憩室を出てバックヤードを抜けてホールまで戻り、まだ済ませていない会計をしようとしたタイミングだった。



「シキ少年、本日の支払い不要だ。イロイロと興味深いモノを拝見させてもらった礼だ、遠慮なく飢えだけ満たして帰りたまえ。懐を温めたまま帰路に着くといい」



と、フェルパさんは一方的に告げてバックヤードの方へと去っていった。それ言う為にわざわざ会計まで付いてきたのこの人?というか支払い不要と伝えるタイミングも去り際のセリフも独特すぎる。休憩室で話しておけばよかったのでは?掴み所がない霧みたいな人だな。


思いがけないサービスはマイナス側に下振れた玉突き事故の帳尻合わせにはなるが、ただ一方的に施しを受けるのも個人的に引っかかる所があった。なので会計を行う端末が置かれてたテーブルの上に、持ち帰り用として小分けに包装されたクッキーが並んでいたので5個ほど購入していくことにした。



「またのご来店を心よりお待ちしております」



サラーブさんからやたら達筆な店名の書かれた紙袋inクッキーを受け取り、会釈をしてから店を出た。さてと、どうするかな。


とりあえず購入したクッキーを1枚だけ残し、あとは紙袋ごとステートウォッチにかざして収納する。小分けになっているクッキーはゴム風船のような感触の薄い透明な袋で覆われているのだが、……どう開けるんだこれ?


小袋をぐるりと見回すが切り込み口もなく、綴じ口もない。無理やり引っ張る感じか?と、左手でクッキーを袋越しに固定しながら袋の端部分を引っ張ると、()きたての餅のようにみょーんと伸びてパチンっと弾けるような音と共に透明な袋は消し飛んだ。


クッキーの周りにはキラキラとした粒子が舞い、やがて消えた。なんだかよくわからんが、特別な方法で梱包されていたようだ。魔法発動時に見かけるエフェクトに近かったが、魔法関連なら『恢白』で触れたら簡単に開けれたのだろうか。


まあなにはともあれ取り出した中身であるクッキーを口へと放り込みながら、続けて『恢白』を取り出して再装備。まさか白昼堂々ないとは思うが、フェルパさんから()()()()があるなんて聞かされたものだから、少し警戒してしまう。


『恢白』を装備すると耐久と精神力が100上昇するからステータス的にも無視でない数値だ。レベル換算だと20レベル分のステータスだし、備えておくに越したことはない。


めちゃくちゃ薄味のクッキーを咀嚼しながら周囲を警戒しつつ、そこかしこから飛び交う客引きの掛け声をBGMに2番街の街中を目的もなく歩いていると、ステートウォッチから通知音が鳴り響いた。差出人は『モリー』だった。


何かあったかのだろうかと疑問を抱きつつ、宙に投影された封筒のホログラムに触れてメッセージを開いた。

【小話】


持ち帰り用のクッキーの個別包装はフェルパが生み出した『アイソレイト』と呼ばれる外部と内部を断絶させる効果がある魔法が施されている。


切断系で干渉が可能かつ耐久性はかなり低い魔法な為、一般的には小型ナイフなどで『アイソレイト』の魔法を引き裂いて中身を取り出す。シキがやったように引っ張るという物理的干渉でも開封事態は可能。


『アイソレイト』の外部と内部の断絶効果は半永久的であり、外部から切断などの干渉を受けない限り解除されることはなく、中の物質も発動時点から変化することはないという、お菓子の梱包という使い方に反して不釣り合いなレベルで高性能な魔法。

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