街の裏道は蛇の道
「補足事項ですが、いかなる理由にも関わらず『会員章』を紛失した場合は階級に関わらず【ブロンズ】の『会員章』をお渡しする決まりとなっておりますのでご留意ください」
「ああ、そうだ。紛失繋がりでワタシからも伝えておこう。ここ最近、近隣で詐欺行為や『会員章』を含む装備品や所持品を狙った襲撃事件が多発している。犯人は『地下街』の荒くれ者だの、目醒めた力に溺れた睡醒者だの様々な憶測が飛び交ってはいるが実態は不明だ。十分気をつけたまえ」
「はい、わかりました」
詐欺行為はNPCがプレイヤー相手に仕掛けて修羅場になってるのをここへ途中に遭遇したが、装備品狙いの襲撃って事はPK行為も確認されてるのか。もしかしてだいぶ物騒なのかこの2番街?
『地下街』の荒くれ者、そういえばこの街は『地下街』があるらしい。この街の至る所に巧妙に隠された地下へと繋がる出入り口があって、そこから行けるエリアとwikiに書かれていたっけ。
だが『地下街』まで確実に行けるいわゆる『攻略法』というものが確立されていないらしく、再現性が著しく低いらしい。
そもそもこのゲーム、NPCの行動パターンが割と自由奔放というか、眼前にいるフェルパさんがいい例だがやたら我が強いNPCが多い気がする。いやまあ俺がそういうキャラの個性を引いているだけの可能性もあるが。出会ったプレイヤーもなかなかに個性的な方々が多いのもあるし。
「まあヴィレさんのお眼鏡に叶うシキ少年には要らぬ忠告だったかな?なにはともあれ、今後とも当店を贔屓にしてくれたまえよ」
そう言うとフェルパさんは杖を虚空へと消し、壁に寄せていた机と椅子を元の位置へと戻し始める。
自分で動かした机と椅子、自らの手で元の位置まで直すのか。こう思ってはなんだがものすごく意外だ。てっきりそのままにするのかと。
ていうかさっき見せた杖を振って『会員章』を移動させたみたいな事をすればすぐ終わりそうではあるけど、何かしらの制限でもあったりするのか?まあいいか、とりあえず手伝うかな。
「手伝います」
「おやシキ少年。――ふぅん、殊勝な心掛けだ」
「あの!復旧作業なら私がやりますので店長とお客様はそのままで!?」
結局それから3人で部屋の隅に避けた椅子と机を元の配置へと戻した。1人より2人、2人より3人で作業をすればあっという間だった、流石は人海戦術。
【小話】
地下街【ジオフロンティア】へと向かう条件
・隠しステータスであるカルマ値が一定数以上の時に高確率で発生する(あくまで高確率なので発生しない場合もある)とあるNPCの襲撃を撃退することでイベント開始フラグが成立。カルマ値が低い状態でも稀に発生する事がある。
そこから治安維持部隊経由か経由しない単独√を進める事で、地下街へと行けるようになる。
カルマ値はNPCや他プレイヤーへの攻撃や略奪、建築物の破損、ショップアイテムの窃盗、店内での迷惑行為、カジノでの一定時間以上のプレイなどで上昇します。
PKを行えばどんな理由であれ1回でカルマ値が大幅に上昇し、確実にレッドネームになります。
カジノでのカルマ値上昇は微々たる量ですが、PKをしていなくてもプレイ時間によっては内部的にレッドネーム一歩手前まで上昇します。




