魔人形
「脱ッ!?」
出会って間もなく脱衣を要求されるのはあまりにも想定外すぎて、思わず変な奇声でリアクションをとってしまった。いきなり何を言い出すんだこの人は。
「そう、その極彩色に輝く手甲をだね。市場では見たことのない手甲だ、おそらくヴィレさんが作ったものだろう。そしてその中に、消えたサラーブの気配を感じる」
あ、そっちか。「外す」ではなく「脱ぐ」のワードを使うものだから勘違いしてしまった。まあ冷静に考えればいきなり『服』を脱げとは言わないか。
変人……じゃなかった、フェルパさんの語る『気配』というのは個人的にまったく感じ取れないので、フィーさんと同じように何かを感じ取れるのだろう。第六感とか恐らくそんな感じ。そして消えたメイドのサラーブさんが、『恢白』の中に在ると。
「わかりました。今、外します」
極彩色に色づいている『恢白』を両手から外して机へ置くと、フェルパさんは右目の眼帯をずらして『恢白』をじっと覗き込む。眼帯に隠されていた右眼は、金色の左眼とは異なり無色透明という異様な見た目をしていた。何かしらの影響を受けた本物の眼なのか、それとも特殊な義眼なのか不明だが、とにかく異質であるのは確かだった。
「……ふーむ。ワタシの推測だが、この手甲にはリペアドランの素材が使われているね?そして魔法を吸収する機能が備わっていると見た。吸収上限はあるようだが、それでも『魔人形』1体は容易に飲み込める許容量か。実に興味深い」
「『魔人形』?」
「おや、ご存知ないかい?『魔人形』というのはだね、読んで字の如く、魔法で生み出した人形のことさ。このワタシが生み出した数ある魔法の内の1つであり、この世界で唯一ワタシだけが使える魔法でね。一度召喚してしまえば、あとは定期的にワタシ自ら魔力供給を行うか、マナポーションを摂取するように命じれば、半永久的に現界可能な完全自律行動可能な魔法生命体、それが『魔人形』さ」




