魔本使いは魔力が切れたら魔本で殴る。一般常識です
「お待たせしましたー!」
しばらくして、フィーさんは両手に装備を抱えて戻ってきた。
「数多くても困ると思ったので、厳選に厳選を重ねて3種類ご用意しました!まずは『治癒の首飾り』!これは回復魔法『ハイ・キュア』の【魔導刻印】が刻まれた首飾りで、首飾りのこの宝石部分に触れると『ハイ・キュア』が発動する仕組みになってまして、お値段は120万Gになります!わたし個人的としてはイチオシです!」
エメラルドグリーンの宝石に解読不能な白い呪文が彫刻されたネックレス。回復魔法が使えるようになるのは便利だな。魔力の消費量がどれくらいかはわからないが、『恢白』と合わせて使えば回復アイテムが枯渇しても戦闘の継続が可能になる。
「お次は魔本の『リカバリーブック』です!回復魔法の『キュア』広範囲回復魔法の『ワイド・キュア』状態異常回復魔法の『ナージ』が刻まれてます!!魔本は複数の【魔導刻印】を刻めて、魔力切れを起こしてもこの硬い背表紙が鈍器になるので、近接戦闘職の冒険者さんが万が一の備えとしてよく購入されてます!お値段135万Gです!!」
魔力切れに陥った際、魔本を鈍器として使うの一般的なの!?トネルオラージュ戦で血迷ったのかと思ったプレイヤーいたけどあれが正解だったのマジか……。
「最後は回復魔法の【魔導刻印】以外で『ランスロッド』!これは槍としての機能と魔杖としての機能を融合させた複合武器ですね!槍の穂先部分に【魔導刻印】が刻まれているので、魔法も使えちゃいます!これは火属性魔法の『フレイム』と雷属性魔法の『ライトニング』が刻まれてます!お値段は予算ギリギリ145万Gです!」
全体的に暗めの紺色で塗られた槍の穂先部分には赤と黄の文字色で呪文が刻まれている。刻印の色は魔法の種類を意味してるのだろうか?
運営から貰った150万Gをほぼ費やす事にはなってしまうが物理戦闘しながら魔法を使えるのは魅力的だな、戦闘の幅が広がりそうだ。
「どれもオススメです!お兄さんの戦闘傾向次第にはなるんですが、汎用性でいえば『治癒の首飾り』で、仲間の支援をしつつ立ち回るのなら「リカバリーブック』、一人で活路を切り開いていくのであれば『ランスロッド』ですかね」
フィーさんの言う通り、無難なのは『治癒の首飾り』だろう。『恢白』による魔力ストックや吸収を利用すれば実質回復アイテムが不要になる。正直お金に余裕があれば全部買ってしまいたいところだけれど、生憎手持ちで購入出来るのはいずれか1つのみ。悩ましいな……。




