火力は正義
それから部屋に戻った俺はスマホを手に取りベッドに腰掛ける。再ログインする前にひとまず情報収集だ。先程のトネルオラージュとの戦闘で大幅レベルアップしたことで獲得した大量のステータスポイントをどの配分で割り振ればよいか、先人の知恵を借りる為に攻略サイトを開いた。
『LDDでのいま流行りの構成はコレ!』と銘打たれた記事をタップして開く。
【超スピード×超パワー=圧倒的破壊力!やられる前に倒す先手必殺!!火力特化ビルド!】
【超絶テクニックと並外れた幸運で致命の連撃を叩き込め!テクニカルラック!】
【不撓不屈で粘り勝つ!倒れないのは強者の証!防御特化で返り討ちだ!!】
記事の上部にはオススメとされている三種類の構成が並んでいたので、それぞれの記事を時間の許す限り目を通してみた。
とりあえず通して読んでみたが、それぞれ要約すると一番上は読んで字の如く、敏捷と筋力を上げて手数と火力でゴリ押しするスタイル。
ニ番目は『器用』と『幸運』が共にステータスで装備込みでも構わないので200を超えると、クリティカル発動時のダメージがなんと4倍になるスタイル。
最後は耐久と体力を上げて被ダメージをとにかく抑えて、カウンターでジワジワと相手を削り取っていくスタイルのようだ。
この3つの中で選ぶのであれば一番上だろうか?兎にも角にも敵にダメージを与えられない事にはどうにもならないというのを先のトネルオラージュ戦で痛感した身としては、火力こそが正義だ。
そうなると筋力と敏捷を優先にすべきか。……うん?つまり今まで通りか。知らずの内に流行りに乗っかっていたようだ。ただ『瑞氷』が魔力を消費する武器だからその辺りも考慮しておかないとな。
持ち主の魔力を吸収して片刃の切れ味が増すとヴィレジャスさんは言っていたが、魔法の威力に関わる『知力』が上昇すると切れ味も上がるとかであれば、『知力』のステータスも上げておかなければならないし。まあ基本は筋力と敏捷を上げる方向性で問題ないか。
情報のインプットが完了したのでブラウザページを閉じ、VRヘッドセットを装着してベッドに寝転がり、再び仮想空間へとログインするのだった。
【超スピード×超パワー=圧倒的破壊力!やられる前に倒す先手必殺!!火力特化ビルド!】
『サービス開始から2ヶ月が経過したLDDでの流行ビルドの筆頭は、【拳鬼婦人】の異名を持つプレイヤーを参考とした『筋力』と『敏捷』を2極化させた火力特化の構成が一歩リードしている。先々月に闘技場で開催されたアリエス杯で魅せた彼女の一騎当千の活躍、その後の【十二至星】アリエスとの激闘で脳を焼かれたプレイヤーも多いだろう。ライターである私もその一人である』
『彼女と同等の超火力を再現する事は彼女が保有するユニーク装備の関係で不可能だが、それでも彼女の圧倒的なまでの強者としての立ち振る舞いに憧れを抱く者は後を絶たず、今や流行の最先端を行くビルドとなった。』
~~中略~~
『このビルドでの戦闘方法は至ってシンプル。身体強化系のスキルを習得し、火力を上げて物理で殴るだけである。しかし強力すぎる矛がゆえに、耐久にステータスポイントを割り振る余裕がないため防御がおざなりになりがちだ。』
『防御手段は基本的に俊敏に任せた回避か、それでも避けられない場合はパリィとなるのだが、パリィが苦手なプレイヤーは無理に2極化せず、ある程度『耐久』に割り振るのが無難か。他にも物理特化の構成の為、物理攻撃が通じる対人戦では問題ないが、クエスト等で物理無効のアンデット系モンスターに遭遇した際、何も手が出せなくなるので注意が必要となる』




