顔見知り以上、友人未満
「なぁアラシ、闘技場ってどこにあんだっけ?」
「そこからかよ。4番街な、今1番街だからそこそこ距離あるぞ」
「マジか、ファストトラベルねぇから移動面倒なんだよな。スパムだと思われねぇように文面変えて要望出してもテンプレ返答しかよこさねぇ運営がよォ……!」
「変なとこマメだよなお前」
「ミサ様どこか行っちゃったし、戦闘も終わったみたいだから私達もそろそろ行こっか?武器屋でいいよね?マーサル君の武器直さないと!」
「……、さっきも言ったけど払わなくていいからな?」
「ダーメ!絶対払うからね!」
ミサさんが立ち去った事で一段落がついた空気感が流れたのか、それぞれ次の予定の打ち合わせを始めた。
俺もミサさんの後を追うように立ち去りたい所だったが、偶然居合わせたとはいえ共に戦った人達に何も告げずに立ち去るのも印象に悪いと思い、サラッと一言別れの挨拶を告げようとした直後の事だった。
「えーっと、ちょっといいか?」
ランゼルに話しかけられた。なんだ?俺なんかしたっけ?
彼とは完全に初対面であり、知り合いでも『ランゼル』のプレイヤーネームは心当たりがない。
まあそもそもこのゲーム始めてまだ2日目なので、プレイヤーの知り合い自体が少ないのだが。なんならNPCの知り合いの方が多いんじゃないか?
とりあえず思い当たる節がないので会話のキャッチボールを投げ返してみる。
「はい、なんでしょうか?」
「さっき【拳鬼婦人】……あー、ミサ氏と親しげに話してたけど知り合いか?」
ミサシ?……あ、ミサ『氏』か。親しいか親しくないかでいえば、そもそも昨日会話したのが始めてなので、特段親しい間柄ではないだろう。顔見知り以上、友人未満といったところか。
「知り合い、といえば知り合いですね。昨日、クエスト中に危ない所を助けてもらいまして」
「なるほどな。フレンド登録とかしてるのか?」
「いや、そこまでは。本当にクエスト中に偶然出会って、それから一定時間一緒に行動しただけなので」
「…………ふーん?」
返事を聞いたランゼルは生返事をしたあと、顎に手を当ててしばらく考え込む。
なんやかんやあってリペアドランの素材をもらったとかは黙っておいた方がいいだろう。下手に根掘り葉掘り聞かれても面倒だし。
「悪い、変なコト聞いたな。そういや戦闘中ずっと気になってたんだが、その初期装備の防具と初期スキルしか使わなかったのはなんか縛りプレイ中か?」
「それは縛りプレイでもなんでもなく、俺のレベルが低いだけですね……」
「あー、そうだったのか。ちなみに何レベ?低いわりには動けてた方だと思うが」
「ちょっと待って下さいね。いま確認します」
このゲーム、レベルアップの告知が行われずいつの間にかステータスが上昇してるからな。どのタイミングでレベルアップしてるのかがさっぱりわからない。
とりあえず戦闘をそこそこ熟したからレベルは上がってるとは思うが、このレイド戦が始まる前は12とかだったか?昨日ログアウトする前に確認したのに記憶がおぼろげだ。まあ確認すればわかる事か。
俺はステートウォッチを操作してステータス画面を開いた。




