Libertas緊急会議②
「――コホンっ、話を戻しても?」
「おや、これは失礼。炎上を緩和する為に配布する補填の選定だったね。僕は無難にゲーム内通貨でいいと思うけどねぇ」
「既に1000万人突破記念で100万G配布してるのに追加でばら撒くんすか?エリクサーみたいなアイテムとかの方がいいんじゃ……」
「貨幣は万物と交換可能なアイテムだよ。それに我々で選定するよりもプレイヤーが使い道を自由に選べた方が、結果として満足度は高くなるはずさ」
「エリクサーも回復アイテムだから戦闘メインで遊んでるプレイヤーには有り難いかもしれないが、それ以外の生産系ジョブや球技場、カジノメインで遊んでる層からすりゃ文字通りの肥やしにしかならないからな。俺は冬垣サンの提案に賛成」
「否定的な書き込みじゃなくて好意的な書き込みをSNS上で調べてみたけど、カジノをメインで遊んでるプレイヤーからは100万Gの配布が好評みたいだね」
「そうなんすか?」
「うん、『運営ありがてぇ!超ハイレートですべて取り戻してみせるぜ!』とか『今日80万G負けたけどLDD運営が100万Gくれたので実質20万Gの勝ち。LDD運営には足向けて寝れねぇぜ』みたいな好意的な反応ばっかりだったよ?」
会社から支給されたスマートフォンを操作して画面をスクロールしながら、司会進行を務める陽乃木燐の実妹である陽乃木優芽は、SNS上で見つけた好意的なつぶやきに対して感情を込め、身振り手振りを交えた演技混じりに読み上げる。
ギャンブルに魅入られた者のおおよそ正常とは思えないつぶやきではあるのだが、好意的な反応であることに代わりはないので誰もそれを指摘しようとはしなかった。現在不在である社長を含め、比較的自由人の割合が多い集団なので、ままある事だったりする。
「じゃあ配布するのはゲーム内通貨だとして、額はどうするんすか?あまり配布しすぎるとゲーム内バランスにも影響出てくるんじゃ?」
「その辺りは別に問題ねーよ、今後のアプデで追加予定の上位武器の製造コストや従機士関連の強化パーツの購入費用を調整すればいくらでも回収出来る。そもそも現時点で重課金で金にモノを言わせて好き放題してるプレイヤーもいるから今更だな」
「補填配布額は多すぎず少なすぎず、今後もユーザー数が規定数を超える度に100万Gを配布するのであれば50万Gを今後の補填の基準として定めてもいいかもしれませんね」
「緊急会議は開かれないに越したことはないんですが……まあ今回はいいでしょう。採決に移ります。補填の配布をゲーム内通貨とする事に賛成の方は挙手を。――全会一致、ですね。では各位、即時補填配布に向けて動くように。社長には私から一報を入れておきます」
こうしてLibertasの緊急会議は僅か10分足らずで議決されるのだった。




