抵抗は無駄ですよ。妨害魔法を嗜んでいるので
「リタ、大剣の修理費やっぱ払わなくていい。150万G貰えるなら自分で出す」
「だーめ、約束は約束!ちゃんと私が払うよ!!」
「……チッ、んだよオレ様が問い合わせする前にもう詫び出してきやがった、これじゃあ凸れねぇじゃねぇか」
「別に追加で凸ってもいいんじゃねぇか?」
「いいや、詫びの誠意を見せたのに追撃するのはオレ様のポリシーに反する」
「結局、こいつが収納出来ない説明がないな。そもそもレイド戦の説明が開始時のメッセージだけか……」
それぞれがメッセージを見て頂いた感想をこぼしていると、こちらへと歩み寄る足音が聞こえた。
「終わったようね。貴方達の戦い、しかと見届けさせてもらったわ」
雨が止み、曇天の隙間から差し込む陽光を浴びながらミサさんが合流する。
「見物してるの退屈だっただろ?んじゃそろそろ買わせてもらおうじゃねぇか!」
「……戦意の衰えなし、上々ね。いいでしょう」
そういえば二人は戦闘終了後に喧嘩の売買を約束していたなと思い出す。激戦後なのにも関わらず変わらぬテンションを維持出来るナギの精神的バイタリティに感心する。
一時の休息も束の間、一触即発の雰囲気が漂う、そんな空気が流れ始めた直後だった。
「――――お取り込み中失礼しまーす♪」
「あン?」
一体どこから姿を現したのか、軽薄な声と共にいつの間にかそこに立っていたのは5人の集団。全員同じ白い軍服のような装束と軍帽を身に纏い、左上腕部にはエンブレム型の腕章を装着している。どこかしらのクランかと思ったが違うな、5人の頭上にはプレイヤーネームの表示がない、つまりNPCだ。
「トネルオラージュの回収に参りましたー、抵抗は無駄なので大人しくしていてくださいねー?んじゃアツメちゃん、やっちゃってー」
「御意」
中央に立つリーダーらしき金髪の女性が部下に指示を出すと、アツメと呼ばれた黒髪の女が自身の背後に手を回し、取り出したのはなんと銃であった。近未来的なデザインだが、弾倉と思わしき部分は透明なケース装着されているだけで弾が装填されていないように見える。
「おい待ちやがれ、なーに勝手してやがんだオマエ。そいつはオレ様達が倒したヤツだぞ?横取りすんのか?」
「んー、話聞いてましたかー?抵抗は無駄って私言ったんですけどねー?カイシュくーん」
「『ウル・バインド』」
「ガッ!?」
間に割って入ろうとするナギだったが、青髪のカイシュと呼ばれた男が放った魔法で動きを完全に封じられてしまう。




