逃走ではなく闘争を
数度連続して放つ雷撃はすべて撃ち落とされてしまい、遠距離からの攻撃では埒が明かないと判断したのか、トネルオラージュは方向転換を行いミサさんの元へと接近していく。
大地を揺らしながら迫るトネルオラージュに対して、ミサさんは迎え撃つ姿勢を取った。身構えたミサさんにトネルオラージュはその巨体を存分に活かした面での体当たりを仕掛ける。
「GIYAOOO!」
痛烈なタックルをみせたトネルオラージュが吼える。直撃したかに見えた渾身の突撃だが、こんな直線的な攻撃をミサさんが食らうとは考えにくかった。被弾はしていないだろうと即座に判断すると、トネルオラージュの両脚の隙間を何かが高速で駆け抜ける姿を捉える。
「足元がお留守よ」
「GIYA!?」
巨体の足元を掻い潜ってミサさんが現れた直後、トネルオラージュは痛みに耐えかねて鳴き、そのままバランスを崩して倒れる。交錯した一瞬の間に的確にダメージを与えたのだろう。あの痛がり具合からおそらく弱点部位である脛か足の小指のどちらかを回避行動と同時に行っている、抜け目が無い。
ミサさんは再び転倒したトネルオラージュへ追撃を仕掛ける事はなく、何らかのスキルを発動したのか一瞬にして姿を消して
「ごきげんよう」
「うわっ!?」
――気がつけば俺の隣に立っていた。あまりにも急に現れるものだからかなり素っ頓狂な声が出てしまった。握っていたブロンズソードを思わず落としてしまう程の動揺を見せてしまう。
「……、随分なご挨拶ね」
地面に落としてしまったブロンズソード慌てて拾い上げようとすると、それよりも先にミサさんの手が伸びて武器を掴み取った。
「あっいえ、その、すいません。突然横に来られたので思わず声が。……えっと、ありがとうございます」
「……それもそうね、ごめんあそばせ」
何を話していいものやら。とりあえず落とした武器を拾ってもらった事に感謝を述べて、ミサさんが拾ってこちらへ差し出すブロンズソードを掴み取る。
「昨日に続いて格上相手でも逃走ではなく抗う意志を示す貴方の選択、非常に好印象でしてよ。けれどその武器ではまともなダメージを与えるのは不可能かしら。これを使いなさい」
ミサさんはステートウォッチを操作すると、銀色の鞘に収められた剣を取り出して俺へと差し出す。
「度が過ぎた者達が落とした装備の整理がしたかった所なの。協力して貰えるかしら?」




