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慟哭の雷、焦土を成す

眼前で炸裂した漆黒の稲妻が視界を覆うのとほぼ同時に、雨音含めて周囲のプレイヤーの声や音が聞こえなくなった。最初はVR機器の不具合かと思ったのだがそうではなく、しばらくして左右の耳が音を再び拾い始める。


トネルオラージュが全身から黒い雷を周囲へ爆散させた結果、眼の前に広がるは死屍累々。トネルオラージュを討伐するのに接近していた大勢のプレイヤーは黒い雷光に飲み込まれ、体力をすべて削り取られて地に伏している。接近出来ていたら今頃自分もあの仲間入りを果たしていたと思うと、接近出来なかったのが逆に功を奏したか。



「GIYAAAOOOOOOO!!」



大量の屍に囲まれたトネルオラージュが天に向かって吼える。その咆哮は数多の敵を葬り去った興奮による鬨の声か、それとも斃れた同族へ手向ける嘆きの慟哭か。纏っていた黒い雷は先程の大火力攻撃の反動か鳴りを潜めていた。




「お仲間倒すとブギギレて全周囲に超火力攻撃とかエグすぎるだろ」


「周囲にいた奴ら全滅じゃん。うわっ、武器と防具ほぼ破損状態になってる」


「こりゃ先に黒い方を倒すのが正解だったっぽい?まあもう倒したあとだからどうにもなんないけど」


「無理ゲーですわこれ、撤退しよ」


「レベル差かなりありそうな上に勝ち筋見えないのはなぁ、装備含めてボロボロにされる未来ならはっきり見えるんだが」


「もうどうすんだよこれ……」


「無理無理、勝てないって。やるだけ無駄でしょ」




凄惨な光景を叩きつけられた周囲のプレイヤーから次々と消極的な発言が飛び出し連鎖し、雪だるま式に膨らんでいく。戦闘を放棄して撤退するプレイヤーの姿も見て取れる。まあこんなの見せられたらそりゃ戦意喪失も起こるか。



だがそんな鬱屈とした状況の中で、トネルオラージュへと近づいていくプレイヤーの姿があった。



「――ハッ!どいつもこいつも玉無しの腑抜けで見てらんねェな!やる前から諦めてちゃ何も出来ねぇだろうがよ!!攻撃が怖ェんだったらオレ様の後ろに隠れてな!!」



それは先程トネルオラージュの黒い雷を直撃するも、斃れる事なく耐えてみせたプレイヤーだった。

そして立ちはだかる巨大な雷鳥に立ち向かうのは、一人だけではなかった。



「随分と勇ましいのね、貴女」


「……あン?なんだよ喧嘩売ってんのか?」


「待て待て!お前その誰彼構わず喧嘩腰になるのやめねぇかナギ!」


「あー?うっせぇよアラシ!黙ってろ!!」



連れるようにミサさんと、耐久型ビルドのプレイヤーと共にいたプレイヤーが後に続く。粗暴な言動をアラシに諌められたナギと呼ばれたプレイヤーは、腕を組みながらミサさんに対して威圧するように睨みを効かせる。



「喧嘩なら買うぜ?いくらだ?」


「それを貴女が望むのであれば販売してあげてもいいのだけれど、今は眼前の敵に集中するのが優先事項でなくて?」


「……、……チッ、そりゃそうだ。そんじゃあこの戦いが終わった後で買わせてもらうからな!ちゃんと覚えとけよ!?」


「ええ、愉しみにしているわ」

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