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第三話 狂乱女王(カオスクイーン)は聖女を守ることにしました。

第三話です。


ご感想などお待ちしております。

シスター・オーリンに連れられ、タムリンはノクティス西方教会に案内された。


そこでシスター・オーリンからある秘密を告白された。


「わたくし、実は聖女の候補でして・・・」


シスター・オーリンの告白。


それはなかなかに面白い内容であった。


「聖女ってあの聖女?」


「はい」


もちろんタムリンは理解している。


聖女と言う存在を。


聖女は各地で発生する魔物たちと戦う騎士団や冒険者たちを治癒したり、魔物が街に入らなようにその周囲の結界を張る役割を果たす大切な役割を担っている。


このバレー・トラスト王国にとっては聖女の存在は大きいものであった。


「そのあなたがどうして狙われているのかしら?」


「他の方で聖女になりたい方がいますので・・・」


聖女は確かに名誉ある役職である。


なりたい者たちが多いのは事実である。


「それで他の候補は誰なの?」


「わたくし以外ですと、エオス谷支部長のハガン司祭様の長子、ラクロア様が候補者になります」


「ふ~ん、あの男たちはハガン司祭に雇われているって言ったところかしら?」


「はっきりとは言えませんがおそらくは。何せ私が聖女候補になってからハガン司祭様より候補から降りるよう言われておりましたが、今回のようなことは初めてです」


「脅せばあなたが降りると思ったのね」


今日の件もハガン司祭がシスター・オーリンの圧力をかけるために乱暴者たちを雇った。


そこにタムリンが偶然通りかかり彼女を救った。


この結果はこのままハガン司祭の耳に入るだろう。


「候補者はあなた一人だけじゃないでしょ?」


「いえ、他の方々は辞退しています」


その話を聞くと、タムリンは納得する。


誰も脅迫を受けて命の危険を感じれば候補になるのを恐れる。


シスター・オーリンの時のように乱暴者に脅されれば尚更である。


・・・そこまで自分の娘を聖女にしたいのね。


それが親心なのか、己の栄達が理由なのかはわからない。


「どう優しく見てあげても、ハガン司祭が今回の犯人って訳だ」


「・・・はい」


シスター・オーリンは口を濁す。


まだ何か言いたいようである。


「もしかして、他に何かあるの?」


「実は・・・」



その後、シスター・オーリンから聞かされた話はタムリンが耳を疑うものであった。


そもそもシスター・オーリンは聖女になるつもりはなかった。


自分には聖女が持つと言う<()()()()>を持っていない。


この力がないと魔物を倒したり、周囲に結界を張ったり、傷ついた騎士たちを治癒することができない。


ハガン司祭の長子、ラクロアは<()()()()>を持っている。


だからこそ、シスター・オーリンは候補者から辞退したいと教会に願い出た。


それなのに自分が辞退することを教会側は許さず、その届け出を無視していると言う。


「つまり、別の誰かが裏で手を引いていると?」


「それしか考えられません」


シスター・オーリンはため息をつく。


状況はタムリンの考えているより大きいもののようであった。



シスター・オーリンとの話が終わり、その夜は彼女の好意でノクティス西方教会に泊まることになったタムリンの元にイクスが密かに現れる。


「遅かったわね」


イクスが来るのを待ち侘びていたタムリンである。


「はい。僕の給与の件で王と交渉していたもので」


「給与は上がったの?」


「はい」


イクスは笑顔で勝利宣言の如く、右手の人差し指と中指で上げる


「父上もまだまだ甘いわね」


「むしろ王様を人徳者と褒めて頂けると助かります」


「はいはい」


その後、タムリンはシスター・オーリンの話をイクスに伝える。


「怪しいのはハガン司祭として、他に暗躍している者を探せば良いですね」


「そうね。誰がどうして彼女にこだわるのか知りたいわ」


どうも聖女候補が理由ではないとタムリンが推測している。


「ねえ、聖女の選定はいつ行われるのかしら?」


「二ヶ月後と聞いております」


さすがイクスである。


初めて出す情報でもすぐに答えてくれる。


それほど彼の情報網は広い。


王家としても高い給与を払うだけはある。


一方でタムリンの元にはそのような情報は入っていない。


日々、お忍びで王都を探索する自分の耳に入らないのは何故か?


「不思議ね。そんな話があるならこのノクティスにも噂が入ると思うけど」


「事情はわかりません。ただ、今回は教会全体で色々な動きはあるようです」


「それって教会内の権力争いの影響じゃない」


「ご察しの通りかと」


予想以上に今回の件は事が大きいようだ。


これだと父であるジュリアス王も知らない可能性がある。


その話を聞くだけで、タムリンの体中が()()()()する。


「姫様、興奮しないで下さい。まだわからないことが多いんですから」


長年、タムリンの側にいるイクスは彼女の様子を見てどのような状態か知ることができた。


「さて、どうしましょうか」


イクスの意見を軽く流しながらタムリンは考える。


今、自分に漂う()()()()()を持続させたい。


その方法は今のところ一つだけだ。


「まずは悪徳冒険者ギルドからね」


さて、どうしてやろうか。


クスクスとタムリンは笑う。


「イクス」


「すでに調べてますよ」


イクスは諦めの境地に入っている。


「ギルド名はイエローストーン。ギルドマスターの名前はエンハンサ。なかなかの悪人です」


ここ数年で急速に成長した新進気鋭の冒険者ギルド。


と言いながらその裏では誘拐、強盗、殺人などあらゆる分野の犯罪に手を染めている。


「いいわね~」


タムリンにとっては美味しい料理コースである。


今日は見事なまでに王都を夜の帳が包んでいる。


絶好の時間である。


「では、行きましょうか」


タムリンはイクスを連れて王都の夜に飛び出た。

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