3.朱崎 真弌
最後の主人公です。この物語は彼の世界が主な舞台となります。
「トマリナサイ、トマリナサイ。」
「ウルセェ!止まれと言われて止まるバカがいるかってっんだ!」
「ハッポウノキョカ、ショウニン。マヒダン、ヲシャシュツシマス。」
ズガガガガッと警備用アンドロイドがマシンガンをぶっ放す。だが、ここは入り組んだ路地裏。それに加えて物も散乱している。非貫通型の弾丸をバカ真面目に撃ったところでおれには当たらない。狭い路地の壁を蹴りながら昇ってゆく。
「タイショウ、ビルジョウブニ、トウソウ。サイテキルートノセンシュツ、カクニン。アルファ2、ビルB-13-5ノオクジョウニテ、タイショウヲマテ。アルファ3、ビルB-13-6ノオクジョウニテ、タイショウヲマテ。」
「「リョウカイ。」」
ちっ、さすが追跡用にいろんな対処法とフロートデータがインプットされてやがる。そのまま屋上には上がらず、この路地の先の廃棄処分場まで走るか!
「タイショウ、ルートノヘンコウ。ダイ616ショブンジョウへトウソウ。サイテキルート、サイケイサン、カクニン。アルファ2、アルファ3ソノママ616ショブンジョウへ。」
「「リョウカイ。」」
合わせてくるか・・・。でもな、ガキの頃から処分場はおれの遊び場、なんならお前らよりも詳しい自信がある。
路地の行き止まりにある塀を飛び越えるとそこには大量の機械の廃棄パーツが山を作っていた。
第616廃棄処分場、あらゆる研究者の夢の残骸、果たされなかった物たちの流れ着く終着点、なんて呼ばれてる。ようは失敗作のゴミ捨て場。本当は立ち入り禁止なんだが、管理はユルユルだから、結構な人間が出入りしている。資金のない研究者やガキがジャンクパーツ目当てで漁ったり、失敗作を勝手に捨てたりしている。だからか4階建ビル並みのゴミ山が並んでる。
と、ここでこの青年について語ることとする。
彼の名は
朱崎 真弌
機械都市フロートの住人にして、このフロートを牛耳る独裁政権へと反乱する革命軍の一兵卒。
彼がなぜ追跡されることになったのか、それはほんの2時間前に遡る。
〜〜〜
「と、言うわけで君にはこの616処分場に潜伏している我々革命軍の技術部門統括管理者にこの荷物を届けてもらいたい。」
おいおいおいおいおいおい、何でったんで俺なんかに、革命軍総帥が勅命なんてするんだよ⁉︎
「聞いているのか、朱崎一等兵。」
「は、はい!総帥閣下の目の前にあるその小包を第616処分場に潜伏している、技術部門統括管理者の『斉葉和樹』氏に輸送する、で相違ありませんか?」
「ああ、ちゃんと聴いておる。そうカッカするな、白崎。」
「はっ、」
「さてと、朱崎君。コレを任されてもらうぞ?」
「りょ、了解致しました!」
〜〜〜
是非も言わせず、彼はこの大任を受けてしまった。しかし、所詮彼は一兵卒。潜入任務や隠密行動を得意とはしていない。だから、当然のように見つかった。そして今彼は
「ヤベェ・・・いつのまにかここもゴミ山がアホみたいに増えてやがる・・・。」
袋小路に自分から追い込まれてしまっていた。