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経験値稼ぎ


 イチゴジャムとクリームの菓子パンを平らげ、袋を丸めてをゴミ箱へ投げる。

 縁で跳ねたがそれでもきちんと収まり、ちょっとした達成感を味わいながら荷物を持つ。

 リビングを後にして新調したばかりの靴を履き、玄関扉に手を掛けると朝の冷たい空気に触れる。


「いってきまーす」

「いってらっしゃーい」


 玄関先に出て鍵を閉め、門扉を開けて道路へ。


「あら、おはよう」

「おはようございます」


 庭いじりをしていた真向かいの三木みきさんに挨拶をして高校へと向かう。


「学校休みにならないかなぁ」


 放課後は一直線に帰ってパラロスにログインしよう。

 そんなことを考えながら通学路を歩いた。


§


 現代技術では実現不可能とされるスペックを持つVRマシン、アップル。

 囓られた林檎の意匠が施されたゴーグル型で、VRMMOパラダイスロスト専用機。

 同梱版の価格は日本円にして十八万。

 それでも世界中で飛ぶように売れ、パラダイスロストはゲーム業界の覇権を取った。

 その性能足るやプレイヤーの誰もが口を揃えて、まるで本当に異世界に召喚されたかのようだったと語るほど。

 風が頬を撫で、日差しの暖かさを感じ、食べ物には味があり、満腹感すら持てる。

 この最高のゲームが発売されてから五年、トッププレイヤーたちはついにラスボスであるアブディエルを追い詰めていた。


「今頃、ラスボス戦やってんだろうなぁ」


 草原を駆け抜ける風に飲み込まれて髪が靡く。

 ちくちくと痛みを感じつつ抜き身の刀を鞘へと納めた。


「参加したかったの? ライト」


 ライトは、この世界における俺のプレイヤーネーム。


「そりゃ出来るもんならしたいだろ? ゲイルだって」


 ゲイルは剣を杖代わりにしてラスボスのいる楽園のある方角を向く。

 まぁ、ここからじゃ山脈に沮まれて見えないけれど。


「まぁね。でも、無理でしょ。トップ勢はゲームと人生を天秤に掛けてゲームを取った人達なんだよ。とてもじゃないけど太刀打ちできないよ」

「たしかにそりゃそうだ。そのうち攻略情報が出回るだろうから、それ待ちだな」

「それまでしっかりレベル上げしとかないとね。ほら、この狩り場だってあと三十分しか使えないんだ。ぼさっとしてないでやろう」

「オッケ」


 納刀した刀に手を掛け、見渡した草原にモンスターがポップする。

 水銀のような色合いをしたスライムがずるりずるりと動き出した。


「出たぞ、出た出た」

「逃がさないでよ、ライト」


 見かけによらずスライムの足は速い。

 プレイヤーを視認するとその姿を変え、馬となって一目散に逃げいてく。

 ゆえに狩るにはすこしコツがいる。


「ゲイル」

「了解」


 吹き抜ける風が向きを変え、スライムへ魔法が放たれる。


太刀風エアスラッシュ


 鋭い鎌鼬が草原を刈りながら舞い、スライムを急襲。

 風のような不可視属性の攻撃で不意を打つと、モンスターは一定時間混乱状態に陥る。

 現にスライムは形状が不安定になり、次々にその姿を変えていく。

 これでもう逃げられない。


「よし、上手く行った。あとは任せたよ、ライト」

「任された」


 抜いた刀に稲妻が這う。


「紫電一閃」


 スキルの発動と同時に地面を蹴った次の瞬間、この体は予め決められた動きをトレースするかのように動く。

 稲光を引いて高速で繰り出す一閃は、暴れ狂うスライムを両断して過ぎる。


「オッケ! 倒した!」

「ナイス!」


 この紫電一閃でも混乱状態じゃないスライムだと躱されることが多々だ。

 二発目を打つ頃には追い付けない距離まで逃げられているし、初撃は大事。


「よーし! またスライムが湧くまでザコ狩りだ! 時間がないよ」

「わかってるって」


 ゲイルに急かされながらもレベル上げに専念。

 お陰でレベルが上がり、互いに60レベルに。

 とりあえずの目標としていたレベル六十台には乗せられた。


「ふぃー、終わった終わった。伏魔殿ふくまでんに戻ろう、ライト」

「あぁ、ちょうど次が来たみたいだしな」


 次に狩り場を使うプレイヤーが現れ、二言三言言葉を交わして場所を明け渡す。

 背後で戦闘が繰り広げられる中、俺たちはマップを開いてファストトラベル。

 プレイヤー拠点である伏魔殿へと瞬間移動した。

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