90話 聖槍vs聖盾
聖盾の使い手であるゴーレンに負けたレイの敵討ちとばかりにルイは騎士団の駐屯所に向かうのであった。
レイが負けて帰って来た。これにはギルドメンバーを驚かせるには充分な出来事であった。何せレイは近接戦闘において龍であるスイに善戦出来、ウェン相手でも瞬殺されないほどの実力者であるからだ。
「相手は誰なの!?」
ルイは自分と同じレベルでありライバルとして高め合ってる身としては相手が誰なのか気になってしょうがないのだ。
「騎士団所属の現・副団長であるゴーレンという聖盾使いです」
「聖盾使いか」
ふ〜んと何やら考えるルイ。そんなルイを無視して暗闇の一等星にいた頃からレイの強さを知っており更に強くなったレイも知っているルークは聞く。
「そんなに強かったのですか? 正直信じられないんだが」
「そうですね。Sランク冒険者の上位層よりも強いには強いんですがそれでも私やルイよりは実力で劣っていると思います。ですが私とは相性が悪かった」
「相性か。確かに相性によってはある程度の実力差は埋まる事もあるか」
そんな事を話ていたら考え事をしていたルイが、
「よし! あたし、そいつに挑んで来る!」
「騎士団だし。仕事があるのでは?」
「うっ! 確かにそうだね」
ゴウに指摘されてルイは言葉に詰まる。そんなルイに、
「それなら大丈夫だと思いますよ。彼は仕事をせずにひたすら鍛錬していて強さを磨いているそうですから」
「よしっ! 明日早速行って来るわ!」
張り切るルイ。そんなルイにレイは、
「それでは頑張ってください。私は地元に帰って基礎からやり直して来ます」
そう言って地元に帰る準備をするレイ。
「えっ!? 急過ぎない?」
「今のままだと駄目なのが分かりましたから一度原点に立ち返ろうと思いましたので。それでは決戦の時にお会いしましょう」
そう言ってレイは地元であるワ国へと向かうのであった。そうした事が起こったのが昨日の事であり、ルイは今騎士団の駐屯所に来ていた。そこで見張りをしている騎士に、
「ゴーレンって奴いる? いたら手合わせしてボッコボコにしたいんだけど」
「物騒な事言いますね。そんな人を通すと思いますか?」
「知ったこっちゃないわよ。それにそいつ女を下に見てるようだし意地でもギャフンと言わせたいのよ」
「確かにあの人は性格に難がありますが実力は本物ですからね。貴女も負ける前に帰った方がいいのでは?」
「はぁ〜! あたしが負けるの思ってんの! ふざけんな! 分かったわ! この扉ごとあんたを吹っ飛ばしてやる!」
そう言ってルイが聖槍を構えて騎士ごと扉を吹っ飛ばそうとすると扉が開く。
「騒がしいから来てみれば貴女でしたか」
「久しぶりね。団長に就任したんでしょ? おめでとう」
「ありがとうございます」
ルイとキュウイは知り合いだ。貴族であるルイは騎士団とも交流がありキュウイとはとある式典で知り合ったのだ。
「昨日のレイさんの代わりに貴女がゴーレンを倒してくれるんですか?」
「そうよ。ゴーレンはいるの?」
「いますよ。昨日のレイさんとの手合わせでは満足出来ていないので騎士団員をひたすらボコボコにしていて困ってるんですよ」
「舐め腐ってるわね。安心しなさい。あたしがボッコボコにしてやるわ」
キュウイの案内で訓練場に案内されるとそこには、
「どいつもこいつもだらしねぇな!」
騎士団員を倒して人の山を築いたゴーレンが仁王立ちしていた。そんなゴーレンにキュウイは、
「おい! ゴーレン! お前に挑戦者だ!」
「あ〜ん、何だよまた女かよ! 女じゃ俺には勝てねぇよ!」
「お前の聖盾と同レベルの聖槍の使い手のルイだ。流石にお前も知ってるだろ」
「そういえば見覚えがあるな。昨日の女よりは楽しめそうだな」
ゴーレンは楽しそうにしているが自分が負ける訳ないと思っている様子にルイは、
「その余裕そう顔がいつまで続くかしらね」
そして2人は向き合うとルイは瞬時に間合いを詰める。
(速い! だがそれは昨日の女もそうだった。何の問題もない)
鋭い突きであったが自動防御機能を持つ聖盾によってあっさりと防ぐゴーレン。そのままルイの事を弾き飛ばす。
(これが聖盾か。聞いていた通りの性能ね)
あらかじめ聖盾についてレイから聞いていたからルイは自分の攻撃が防がれた事に対して特に驚きはしなかった。
(確かに聖盾の性能は凄いけどそれだけだ。本人の実力はあたしやレイよりは格下だ)
そう判断する。お互いに普通の武器を使うもしくはステゴロなら自分もレイも絶対に勝てるとルイは思う。それだけ素の実力差があっても聖盾という武器の性能があまりにも優秀過ぎるためにレイは敗北しているのだ。
(それでもあたしの聖槍と性能は同等のはず。だから・・・・)
魔力を貯めて聖槍の力を解放する。それを見たゴーレンはニヤリと笑う。
「お前もそれを使えるのか」
そう言うとゴーレンも魔力を貯めると聖盾の力を解放する。
「カゲトラの奴が使えていたからな。その時にはまだ俺はこれを使えなかったから負けたが今は使える。さぁ、本番と行こうか」
そう言って猛スピードで突っ込んで来る。
(速いほうではあるけど余裕でさばける)
そう思って盾を弾こうとするが、
「舐めんな!」
逆に聖槍を弾かれて無防備となったところを殴られて後退するも、
「盾に魔力を集中させすぎたわね。大して痛くないわね」
「俺に1発も入れられない奴が何言っても響かねぇよ」
その言葉の通りでありまだルイはどうやって聖盾を攻略する方法が思いついていない。
(うざいわね。でもやりようはいくらでもある。それに武器の解放は出来るようだけど粗い。武器の性能の引き出し方はあたしのが上。やっぱり勝てる)
自分の勝ちを信じて疑わないままに果敢に攻め立てる。それでもやはり自動防御は突破出来ない。
『カウンターバニッシュ』
魔力をこめた聖盾でのカウンターを腹に叩き込まれる。
(決まったな)
ゴーレンはそう思ったがルイはピンピンしていた。魔力を腹にためていたのでダメージを最小限に止めた。
「まだまだね。あたしの方が魔力操作は上手いわ」
「チッ! ウゼェな! いい加減にぶっ倒れろ!」
魔力を貯めての盾突撃でルイを仕留めようとする。
(迎え打つ!)
そうしてルイは聖槍の先端のみに全魔力を集中させて渾身の突きを放った。
「イッケェーーーー!!」
「うぉぉぉ!!」
聖槍と聖盾の何度目かの激突は今までは聖盾が勝っていたがとうとうルイは聖盾ごとゴーレンは大きく吹っ飛ばされて壁に激突する。
「ガハッ!」
血反吐を吐いて気絶するゴーレン。
「ふぅ〜。上手く決まった。女だからって甘く見てたあんたの負けよ!」
「かっこよく言ってる所悪いがゴーレンの奴は気絶してるぞ」
「いいのよ。言いたい言いたかっただけだから」
そう言って駐屯所を後にするルイ。
(カッコつけたけど勝てて良かった〜。聖盾の性能ズル過ぎない? 結局あたしの攻略方だって聖盾に込められている魔力を超えるっていうゴリ押し戦法だし)
ルイは聖盾に込められた魔力が全体に満遍なく行き渡っているのを感じていた。それを超えるために聖槍の先端にだけ魔力を込めて突破したのだ。
(もっとスマートに勝ちたかったけど勝ちは勝ち! こっから更に魔力操作に磨きをかけて神共をぶっ倒してやるわ!)
気合いを新たにギルドに帰るルイなのであった。
次回は久しぶりに幕間の物語です。お楽しみに〜。
ブックマークと下記の評価して貰えると嬉しいです。