67話 神との決裂
襲撃者はまさかの!? あの男!!
リュウガと龍帝の死闘はギリギリもいいところだがリュウガの勝利に終わった。そんな死闘を終えた龍帝と見届け人であるウェンを謎の人物が襲撃した。その人物の拳は龍である2人を殺すのに充分な威力を有していた。
「ありがとうございます」
「お前が治療してくれなかったら2人仲良く死んでたな」
そんな強襲から龍帝はウェンと共に回避していた。襲撃者は龍の中でもトップクラスの実力を持つ2人を殺せる実力があるようだ。
「しかも、この気配は」
「あぁ、神だな」
煙の中から感じる気配は神に近い何かではなく神そのものの気配が漂っている。
(以前に主様に龍神様が憑依した時とも違う)
以前にリュウガに2代目当主の練龍鬼が憑依してウェンの前に現れた事があったがその時とは違うとウェンは判断する。龍帝は龍帝で、
(前に神界からちょっかいかけてきた連中とは明らかにレベルが違う)
相手の実力が高いと判断する。
(全力全開なら勝てるが今の俺じゃ勝てねぇ)
相手の実力が今の自分よりもあると判断してどのように切り抜けるか思考を巡らせる。そして煙が晴れて現れたのは、
「どういう事ですか? その姿は」
ウェンは驚く。何せ現れたのは剣聖、カゲトラ・オウガだからだ。しかし、その気配は人間のものではない。神の気配だ。
「オレが全能神、ゼーリオだ。貴様らにはこの体の試運転がてら死んでもらう」
その言葉と共に姿が見えなくなる。そしてウェンの首を斬り落とそうとするゼーリオ。
「速いな。雷の龍よ」
ウェンはまた龍帝に助けられる。
「何でこいつばかり狙う?」
最初といい今といいゼーリオはウェンばかり狙っている。それについて、
「弱いのから狙うのは多対一の鉄則だろう?」
「そうかも・・・・なぁ!!」
龍帝は雷撃を放つが、
「この世のモノはオレの力だ」
聖剣に雷撃を吸収してそのまま、
「返すぞ」
雷撃が2人を襲う。
「舐めんな!」
同じ威力の雷撃で迎え撃つ。巨大な爆発により煙が上がってゼーリオを見失うも神の気配は特徴的であるために居場所は丸わかりであるが、
(ウェンもいるし一旦離脱だな)
瞬時に煙から離脱するが、
「速いがオレには届かんな」
「は?」
雷速で動ける龍帝は驚く。今まで自分が背後を取られたのは空間転移を持つ覇龍のみであり。速度で負けた事がなかった。そんな龍帝の後ろをゼーリオはあっさりと取ったのだ。
(空間転移か? いや、違う!! 空間転移なら魔力の起こりがある。今のは純粋に速度で負けた!!)
速度で負けた事に動揺したのが良くなかった。既にゼーリオは聖剣に魔力を集中させていた。ウェンと龍帝どころか龍脈谷を吹き飛ばして有り余る魔力による一撃。
『神の裁き』
辺り一体を光が包む。死を与える力を持つリュウガ、万全の状態の龍帝ならば防げるがリュウガは気絶しているうえに瀕死の重症であり龍帝も万全の状態ではない。そんな最強の一撃は、
「邪魔をするな。異世界の龍神」
リュウガの体を借りた龍鬼がゼーリオの一撃を殺してみせた。おかげで龍脈谷は消し飛ぶこともなく、ウェンも龍帝も無傷だ。
「あのままだと17代目が吹っ飛んでたからな」
そう言って頭をボリボリと掻く。そんな龍鬼に、
「異世界の神が好き勝手にするもんじゃないぞ」
「それはお前もだろ。俺みたいに借りるんじゃなくね完全に自我を殺しての乗っ取り。俺の世界でやったらその神は討伐対象だぞ」
「ここの世界の頂点はオレだから問題ない」
「傲慢だな」
「神とは傲慢なものだ」
両者睨み合いが続く。
「今日は帰ろう」
睨み合いの末にゼーリオは帰る事を選んだ。
「まだその体に馴染んでないな。そもそも万全の状態の17代目にも龍帝にも勝てないだろ?」
「正解だ。しかし、それも時間の問題だ。いずれはこの体を完璧なものとしてオレは、いや、オレたち神々はこの世界を滅ぼし新たに創り直す」
その言葉に2人の龍は驚嘆する。
「へ〜、ご苦労な事だな。やってみろよ」
「出来ないとでも?」
「17代目がいる限り不可能だな」
自信を持って龍鬼は答える。
「お前が体を借りなければ龍帝如きの攻撃で動けないザコがか」
鼻で笑うゼーリオに、
「こいつはいずれ俺を超える男だ、もしこいつが負けるようなら練家出身の龍神は神の座から消えてやるよ」
「大した自信だ。その自信を粉々に砕いて貴様の苦痛に歪む表情を拝んでやろう」
そう言って光に包まれてゼーリオはその場から消える。
「ありがとうございます。助かりました」
礼を言うウェンであったがそれに対して反応しないで龍鬼は空を見上げて、
「よっぽど俺が邪魔らしいな」
何の事か分からずウェンが質問のために口を開こうとするが答えは直ぐに出てきた。
「な、何故!? 帰ったのでは!?」
「帰ってはいる。帰って神界から攻撃してるんだよ。だから嘘はついてない」
上空に光の魔法陣が現れる。しかもかなりデカい。龍脈谷をすっぽりと覆うほどの大きさだ。
「ははっ。よっぽど俺の事が怖いらしいな。邪魔はしないって言ったのにこんな馬鹿みたいな魔法陣を用意しやがって」
余裕そうにする龍鬼。当然だ。どんなに強大な力であろうと彼の前では全てが死に至るのだから。魔法陣から極太のレーザーが放たれるが、
『神凪』
雷速の抜刀術によりレーザーは斬られる。しかもそれだけではない。斬られたレーザーは攻撃力を完全に殺されており真っ二つになったレーザーはどこも破壊する事なく地面に落ちるとそのまま消えるのであった。
(あの技でなくとも雷速の斬撃を放ち死の気配の破壊も正確。末裔とは圧倒的に格が違う。これが龍神か)
龍神の力を目の当たりにして自分の龍神を殺すという考えが甘かった事を痛感する龍帝であったが、
(目標は高いのに越した事はねぇ!!)
嬉しそうに笑う。そんな龍帝に、
「楽しみにしているようだが俺とお前が戦う事は当分先だぞ」
「オレ様の実力が足りないってか?」
「違う。実力なら充分にある。俺と喧嘩する分には充分だが俺はこの世界を出禁になるからな」
まさかの言葉に、
「何故ですか! 手を出したのは向こうじゃないですか!」
ウェンが訴えるも、
「先に手を出したのは向こうでも俺はこの世界の神じゃないからな力を使った時点で駄目なんだよ。まぁ、そういう訳だから俺は元の世界の神界から見守ってるから頑張れよ。それと龍帝は俺と戦いたいなら神になってこっちに遊びにくれば相手してやる」
そう言って龍鬼はリュウガの体から綺麗さっぱり出て行くのであった。龍鬼が出て行ったためにリュウガは倒れそうになるがウェンが受け止める。そして、
「どうしますか?」
「何がだ?」
「この先どうするんです? 神がいずれ攻めて来ますが協力しませんか?」
ウェンからの誘い。神という圧倒的な存在に対して協力するというのは当然であるが、
「断る。協力なんざ意味がねぇ。必要なのは圧倒的な個の力だ」
龍帝は協力するよりも個の力を優先する考えのようだ。
「戦力になりそうなのはオレ様とそいつだけだ」
そう言ってリュウガを指差すが、
「ちゃんと面倒見てやれよ。潜在能力は高いし今回は一手の差で負けたが総合力はオレ様のが高いからな」
そう言って雷となり龍帝は消えるのであった。その姿を見届けてから、
「皆さんに何と説明しましょうか」
この異常事態をどう説明するか悩むウェンであった。
一方神界では、
「ゼーリオ様、大丈夫ですか?」
生命神フルールドリスがゼーリオの身を案じていた。何故なら、
「問題ない。どうせこの体を完全に手にするために5年はかかる予定だ。この程度の傷では5年後の殲滅戦に支障はない」
ゼーリオの体は両断されていたからだ。龍鬼の攻撃はゼーリオの攻撃を破壊するだけでなく神界の最奥にいたゼーリオにも攻撃を届かせるのであった。流石に神界にいるため死の気配の破壊による死を与える力までは届かなかったが充分な傷であった。
「お前たちもしっかりと器となる肉体を探して5年後のための準備を急げよ」
「「「「「はいっ!!」」」」」
そう言ったゼーリオの前には100人の神がいるのであった。
人と神の戦争まで後5年。
またギルドでの日常を書いたらいよいよ最終章となる戦いが始まります。
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