60話 リュウガvsウェン
ダンジョン攻略は達成! したが死者を出したうえにリュウガの雰囲気が変わった事による変化を邪魔に思う者がいた。
フルールドリリスは彼女を守護する天使と他の神々と共に龍神、練龍鬼と対峙していた。
「一体何のつもりですか? 他所の世界の神域に殴り込みとは正気とは思えないのですが?」
冷静に問われた龍鬼は、
「とぼけんなよ。気づかれないとでも思ってんのか?」
「何がです?」
「17代目の事だよ。あんなすぐに精神が成長する訳ねぇだろ」
淡々と語っているがその言葉の端々には殺気が込められていた。
(バレないように細心の注意を払っていたんですがね。流石にそんな簡単な相手ではないでしたか)
下手に誤魔化そうとするのはやめて、
「隠した事は申し訳ありません。ですが、それの何か問題が? 肉体に精神が追いついて今では龍をも殺せる力を得たのですよ? 子孫の成長を喜ぶべきなのでは?」
そんな疑問に対して、
「精神操作なんかで強くなっても意味ねぇんだよ。その程度じゃ龍帝には届かねぇ」
だからと続ける。
「とっと精神操作を解除しろ」
命令する龍鬼であるが、
「申し訳ありませんがそれは出来ません。精神操作自体が難しいというのもありますが下界の人間に手を加えた事を大神に叱られてるので精神体であっても下界に行くのを当面の間禁止されてるのですよ」
その発言に対して、ふ〜と息を吐いてから、
「だったらしょうがねぇ。1回目だし見逃してやる。またちょっかいをかけたら殺す。いいな2度目はないからな」
龍鬼の言葉に、
「そんな事が許される訳ないだろ。神の座から消えるぞ」
周りにいる他の神の一体が重罪である事を指摘するが、
「そんな事は知ってる。そいつには言ってるが神の座なんて俺には執着するものじゃねぇんだよ。だから次はない。あいつの邪魔をするならここの神々を殺す。俺が消えるまでに7割は殺せる」
「そんな事出来るはずないだろ」
「テメェら如き下っ端が俺の実力を測れる訳ねぇだろ。これ以上は用事もないから帰る」
そう言って龍鬼は消えるのであった。
「安心しました。彼がもっと短期なら私たちは全員死んでましたね」
冷や汗をかきながら全員の無事に安堵する。
(流石は向かうの神々の実力No.2ですね。今後のためにもっと念入りに策を練らなければ)
フルールドリリスは神々と新たな策を練るのあった。
◇
リュウガはヒビキを連れて外に出るとマイたちが待機しており、
「ヒビキは?!」
安否を確認してくるも、
「間に合わなかった」
そう言ってヒビキを地面に寝かせる。マイは膝から崩れ落ちてボロボロと泣く。ルイとレイは自分たちの実力不足に悔しそうにする。そんなメンバーたちのところに、
「ゴウとグランドマスターの治療終わりましたよ」
ウェンがやってきた。
「苦労をかけたな。で、どうなんだ?」
「2人共生きてます。話を聞く感じ骸龍らしいですが幸いにも死を纏う力が弱いのか私の力でも治せる程度でした。しかし、グランドマスターは現場仕事は無理ですね。介護がなければ生活するのも難しいです」
死を纏う力を使わなかったとはいえ内蔵を幾つか破壊されてそこそこ時間が経過しておりかつ死の気配により臓器の修復は不可能で生命維持をするのでやっとだったらしい。
「そうか。それでも命があるだけマシってもんだろ」
そう言うリュウガも残念そうな顔を隠しきれずにいた。こっちに来てからダンには面倒ではあったものの沢山の仕事を貰っていただけに残念なのだ。そんな顔をするリュウガに、
「ところで、主様? 骸龍は強かったですか?」
「いや、雑魚だった。数が多かったから量産型で強さは前の再現出来なかったんじゃねぇの?」
軽く言うリュウガに、
「そうでしたか」
優しく微笑むウェンであったが、
「最後にお聞きします。あなたは誰です?」
鋭い目つきを主様と呼び慕うリュウガに向けるウェンに、
「何言ってんだ。リュウガだよ。運命の宿木、サブマスターの」
「そうですね、外見は。精神が違いすぎる」
そう言って刀を抜刀して首を狙う。
「あっぶねぇな。殺す気かよ」
しかし、リュウガも刀を抜きそれを防ぐ。
「あなたの身体能力なら防ぐとは思いますがやはりおかしい。私を敵として認識した瞬間の普段とのオンオフが前よりはっきりしすぎている」
「そんな理由で斬りかかるか普通?」
「明らかに今のあなたが普通ではないので」
そう言って瞬時に距離を詰めてがしっ! とリュウガの頭を掴んでウェンはその場から移動した。周りにいた面々は色々な事が起こり呆然とするのであった。
「ここでなら派手に暴れてもいいでしょう」
「俺にはお前と戦う理由はないんだが」
あまり積極的ではないリュウガであるがそんな事はお構いなしにリュウガに攻めかかる。
「こうでもしないといけないんですよ」
そう言って激しい猛攻を仕掛ける。それをリュウガは捌く。ウェンが攻める理由はリュウガを倒して精神魔法をかけてリュウガが変わった原因を確かめるためだ。
(事情を説明しても良いのですが何か直感が駄目だと思ってる)
そんな直感は正しかった。仮に事情を説明しようものならセーフティが発動してリュウガはウェンを殺しにくるからだ。これによりウェンはボコボコにする事を決めたのだが、
「折角、大神にお叱りを受けてまでやった事なのに元に戻されるのは困りますね」
神界にいるフルルードリスはリュウガにかけたセーフティを解除した。その瞬間に、
「やりますね」
つーと頬から血を流すウェン。リュウガがウェンを敵として認識を強くして殺気を迸らせる。
『神喰
上段斬りによる威力の高い技であるが故にウェンはそれをあっさりと避けて背後をとり背中を斬ろうとしたが、
『神流』
簡単に攻撃を受け流されてしまう。今のリュウガはウェン相手であってもある程度戦えるようになった。それでもまだウェンに勝てる程ではないがそれでも殺す可能性は前よりも高くなっていた。
(私にはまだ及びませんがそれでも名無しの龍なら殺せるレベルにはなってますね)
斬撃を防ぎながら思考を巡らせるウェン。そんなウェンに、
『神挿』
高速の突きが襲う。それを手のひらで受け止めてそのままリュウガの左手を捕まえてそのまま抱きしめる。
「これだけ密着していればボコボコにする必要はないですね」
そう言ってウェンはリュウガに対して精神操作の魔法を使う。普通、リュウガに対して魔法は効かないがあくまでもリュウガにかけられている魔法に対してだから今回は例外となり解除を試みる。それを神界のフルルードリスは良しとしなかった。
「それではお願いします」
配下の天使によるウェンへの精神操作を指示する。ウェンにも精神操作を施せば邪魔がなくなるからだ。そうしてウェンへの精神操作を天使は行おうとしたが、バチン!! という音と共に精神操作が弾かれた。
「あれ? 何で?」
天使が疑問を感じると同時にバリバリ!! と雷が天使を襲いそのまま消し炭となって死んだ。天使の1人が死んだ事に他の天使たちが動揺するがフルールドリスだけは落ち着いた様子で、
「恐ろしいまでの才能ですね。龍帝というのは」
今のが龍帝の仕業であるのを把握していた。精神操作は電気信号に働きかけるものであるために雷を司る龍帝にとっては防ぐのも余裕であり何だったら逆探知も可能であった。問題は、
「神界に攻撃を届けるとは・・・・それにしても、何故龍帝は龍姫を守ったのでしょうか?」
そんな疑問をフルルードリリスは感じるのであった。
「恐ろしいまでに複雑な精神操作ですね。これほどとなると相手は神クラスですね。それでも主様は元々魔力による攻撃が効きづらいのもあって解除は比較的容易でしたね」
そう言ってリュウガから離れるウェン。肝心のリュウガは精神を弄られた事により眠ってしまった。
「まったく大変でしたよ。後で褒美を要求するとしますか」
そう言って刀を引き抜き治療を開始するウェンであった。
神界からの神からのちょっかいでした。龍帝はほぼほぼ神になりかけなので神界まで攻撃は出来ます。
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