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57話 ダンジョン

 総本部とかいう舞台装置作って良かった話が作りやすい。過去の俺ナイス。

 龍牙の精神世界内で龍牙と龍鬼は刀を地面に走らせるような独特な抜刀術の構えをとる。いつもなら技なしの戦闘なのだが今回は、


「あんなのは刀の差で勝っただけのクソザコ技じゃ龍帝には勝てねぇよ。格の違いを見せてやる」


 龍鬼はそう言って構えたのだ。


(過去とはいえ自分が負けた腹いせじゃねぇだろうな)


 と龍牙は考えてしまうが強くなった自分を褒めも認めもしない先代に一泡吹かせてやりたいのもあり勝負に乗った。そして、


        『死 閃』


 2人の斬撃はぶつかるまでもなく龍鬼の方が速く龍牙はそのまま両断されてしまい、


「クソが」


 ギルドのベッドで目を覚ますのであった。


「何かサブマスイラついてない?」

「ですよね」


 とメンバーたちが貧乏ゆすりしているサブマスターのリュウガを見てひそひそと会話する。


「ギルドのNo.2なんだからあんな態度でいるのはやめてほしいよ」


 マイもその会話に混ざる。


「そもそも原因は?」

「起きてからずっとだから多分精神世界で何かあったんだと思うよ」

「精神世界ってあれよね? あいつのご先祖様との修行とかいうやつ」

「そうだね。それで負けたからじゃないかな」

「でも失礼になりますけど毎回負けてるのでは?」

「よっぽど酷い負け方したのかな」


 などと会話をする。そんな会話もリュウガの耳には入らない。


(一瞬でも勝てるとか思った自分に腹が立つ。同じ土俵に立ったと思ったがアレは追いつけれるかどうか分かんねぇレベルだ)


 イラつきの原因は負けた事ではあるが自分の未熟さだった。先代は修行により強くなった自分よりも強かった。一応リュウガの修行の相手として力をセーブしていてもだ。そんな先代に認められるにはやはり龍帝を倒すしかないがビジョンがわかない。

 『死閃』今のリュウガが使える最強にして最速の技ではあるが龍帝の速度の前では構えを取る前に殺される。素の身体能力でアレに対応しなければならないのがキツすぎる。おまけに、


(左目は完全に光を失ったしな)


 左目の前に手を持ってくるも見えない。先代の幻影と戦った際に死を視る事が出来かつ死を与える能力によりリュウガの左目はエリクサーも生命を司るウェンであっても治せないほどのキズを負った。


(そこらの奴ならともかく。龍帝相手に死角が増えるのは致命的すぎる)


 ただでさえ実力差があるのにこのハンデは痛いとかでは済まない。当分は龍帝に戦う予定がないとはウェンと龍皇談ではあるが気が変わって戦闘になったら一か八かでの『死閃』でいくしかないだろう。しかし、


(先代が『死閃』をクソザコ技って言ったのが何か引っかかるんだよな)


 疑問もある。先代もしくは彼の親父である初代が作った技をクソザコなどと言うのだろうか? そんな疑問がある。う〜ん? と唸っていると、


「失礼します! ギルドマスター、マイ・クルルガ様! 総本部への招集命令が出ました。準備してください」


 総本部からの遣いが来たが今回はリュウガではなくマイが呼ばれるのであった。


(あまりにも呼ばれる事が多いからまた俺かと思った。前にジジイが意味深な事呟いていたしな)


 と最後にグランドマスターに会った時の事を思い出す。


「あぁ、言い忘れていたが日にちは決まっていないが今度暗闇の一等星と薔薇の花園の合同作戦があるのだがそこにお前さんらも参加して貰うからメンバーを決めておいてくれ」


 おそらく今回の呼び出しはそれに関する事なのだろう。そんな事情を知らないままにマイは急いで準備を済ませると総本部へと向かうのであった。


「こちらです」


 遣いの者に案内された部屋に入るとそこには、


(グランドマスターに、暗闇の一等星のマスター、薔薇の花園のマスター。どこかの国でも滅ぼすのかな?)


 なんて思ってしまう。国内で最高峰のギルドのマスターがいるのだから当然だ。それぞれのギルドの精鋭を集めれば余裕で他国を滅ぼせる。まぁ、リュウガとウェンは単独でも滅ぼせるのだが。


「すまんな。急な呼び出しで」

「いえいえお構いなく」


 ダンからの謝罪を受けながら空いた席に座る。


「新参者が一番遅いのはどうなんだぁ」


 と突っかかるのは暗闇の一等星のマスター、ログ・ボルス。元Sランク冒険者であり現役時代は国内最強だった男だが今は歳をとり昔の栄光を傘にきたスパルタ指導をする老害とはレイからの評価だ。


「急な呼び出しなんだからしょうがないでしょ。いちいち突っかかるなんて器の小さい男ね。マイさん、こんな男の言う事気にしなくて良いわよ」


 優しくフォローしてくれるのは薔薇の花園マスター、テンラン・コトミネ。こちらも元Sランク冒険者だ。そんな彼女は50歳になったらしいがそうは思えない美貌とスタイルをしていた。


「それじゃあ揃ったから本題に入る・・・・ダンジョンが出現した」


 ダンからの発言に全員が真剣な表情をする。“ダンジョン”とは世界で稀に出現するもので洞窟としてだったり建物だったりと様々である。しかし、共通点はある。Aランク以上のモンスターしか存在せず最奥には聖剣に匹敵するような武器と一生遊んで暮らせるだけの財宝があるのだ。


「そんなダンジョンが今回はサンダーマウンテンの麓に出現した。うちの冒険者に探索を任せたら初っ端からSランクのモンスターがいたらしく急いで逃げて魔法使いによる結界で出入り口を封鎖したらしい。それで今回は合同でのダンジョン攻略をお主ら3つのギルドに任せる」


 その言葉に、


「おいおい! そんなもんは俺たち暗闇の一等星で充分だろ!」


 ログは突っかかるが、


「あら? 抜け駆けは駄目よ。ねぇ、マイさん?」

「私は別にどうでもいいですけどグランドマスターが私たち3つに任せている以上は3つのギルド協力するべきかと」


 三対一の状況にログは嫌々ながらも、


「わ〜ったよ! 協力すりゃいいんだろ!」


 と引き下がるが内心は、


(美味しいところはうちが頂くぜ。特に運命の宿木! お前らはうちのエースを奪ったんだ覚悟しとけ!)


 良からぬ事を考えるのであった。


「どれくらいの規模になるか分からんからな。それぞれ精鋭を集めておけ。こちらからも人員と物資は用意はする。それでは解散だ」


 そうして解散する際に、


「うちのレオナがあなたのギルドにお気に入りの娘がいるみたいだからそれとなくアシストしてあげて。それだけであの娘のやる気が段違いだからね」

「あ〜それは構いませんが誰の事でしょう?」

「あの娘は男嫌いだから女子メンバーの誰かよ。本当は名前を教えたいのだけれど秘密らしいのよね」

「そうですか。検討はしておきます」

「お願いね〜」


 頼まれてしまったが大丈夫だろう。レオナレベルの冒険者となるとルイ、レイのどちらかだろう。ウェンは滅多に街には行かないから関わりないだろうし自分とランはまだ有名ではないから違うだろう。そんな感じで考えながらギルドへ帰るのであった。


「・・・・そんな訳でダンジョン攻略が今回にクエストだよ! 最低でもAランク冒険者じゃないとダメだからうちだと、私、サブマス、ルイ、ゴウさん、ヒビキ、レイさん、ウェンだね。他はもっと多いかもしれないけどうちは規模が小さいからこれで行こう!」


 と張り切るが、


「俺はパス」

「私もです」


 リュウガとウェンは辞退した。


「何で?」


 当然理由を聞く。万全を期すのならリュウガとウェンの力は必要だからだ。


「左目失ってからの戦闘で狭い場所があるかもしれないダンジョンでしかも大人数だろ? 下手したら味方を斬る可能性があるからな。単独だったら行ってたよ」


 とリュウガが、ウェンは、


「ダンジョンには龍が入れないんです」


 とまさかの発言をする。


「大きさの問題じゃねぇだろ? 人型になれるんだし」

「えぇ。これは予想でしかありませんがダンジョンは神が気まぐれに作りだしたモノでありそこへは人しか入れないように設計したのでしょうね。神は人間が好きですから」

「ふ〜ん。まぁ、そんな訳だから今回俺とウェンは参加不可だ。それに充分過ぎる戦力だろ? Sランク4人に天才魔法使い1人がいれば」


 という、リュウガの言葉通りである。これだけの戦力他のギルドでは用意出来ない。


「はぁ〜本当なら来て欲しかったけどしょうがないか(まぁ、ルイとレイさんそれに私がレオナさんのお気に入りである可能性は3/5だし大丈夫でしょ)」


 とマイは思ったが残念ながらレオナの最近のお気に入りはウェンであった。これによりレオナのやる気が若干下がる事が確定した。若干なのはマイ、ルイ、それにレイという美少女と美女がいるからだ。そのせいでゴウとヒビキは邪魔者扱いを受ける事となる。そうしてあっという間にダンジョン攻略に挑む日になった。

 ダンジョンの出現したサンダーマウンテンの麓にやってきた運命の宿木一向はダンジョン入り口前にある総本部の人間により作られた拠点がありそこにきた。



「強者が集まってるな!」


 嬉しそうに言うヒビキと、


「そうですね。それ以外にも拠点で待機する医療従事者なんかもいますね」


 レイは拠点にいる冒険者以外の人材を見る。そんな面々の所に、


「良く来たな! だがリュウガとウェンはどうした? あの2人がいればダンジョン攻略も大分難易度が下がるんだが」


 と喋りながらダンが現れる。そんなダンにマイは、


「2人はちょっと色々な事情がありまして・・・・この面子じゃ不満ですか?」

「いや、充分だ。出発まで時間はあるからゆっくりしていてくれ」


 そう言ってダンは部隊の指揮に戻る。ダンに言われた通りゆっくりしている面々をある人物が見ていた。その人物は、


(な・な・何でウェン様ほどのお人が来ないのよ〜〜〜〜)


 がっくりと肩を落とすどころか膝から崩れ落ちる女、レオナ・ドルドがいた。彼女を慕うギルドメンバーは心配の目を向ける。そんなメンバーとは対象的にギルドマスターであるテンランは、


(残念ながらお目当ての子が来なかったのね)


 とレオナの落ち込んだ原因を当てる。そんなレオナに、


「そんな状態でやれるの? 無理なら外すわよ?」


 問いかけてみると、


「やれる!・・けどちょっと事情を聞いてくる」


 マイたちの所へとレオナは向かう。その背に、


「迷惑はかけるんじゃないわよ〜」


 と忠告するのであった。 


「あっ! レオナさん! お久しぶりです」


 気づいたのはルイであった。ルイに気づかれて頬が緩みそうになるのを堪えて、


「久しぶりね。ルイ。それからレイ」

「お久しぶりです」


 レイとも顔見知りらしく挨拶を交わして、


「あのマイさん。ウェンさんは参加しないのですか? 以前に一緒にクエストを受けた事があったのですがとてつもない実力を持っていたはずですが」


 マイにウェンの不参加の理由を聞くそこでマイは、


(えっ! レオナさんのお気に入りってウェンだったの! 知らなかったし事情があるとはいえなんか申し訳ないな)


 レオナの気になる人物が意外で驚きつつも、


「ウェンは私用で不参加の申告があったんですよ」


 ウェンが龍でありダンジョンに入らないなんて事は流石に言えないので濁して答えた。


「そうでしたか。残念ではありますが昔世話をした後輩にライバルもいるので良しとします。それでは今回はよろしくお願いします」


 ぺこりとお辞儀してレオナは自分のギルドメンバーの所へと戻っていった。


「噂通りの男嫌いだね。まったく2人の事見向きもしなかったね」


 とゴウさんとヒビキに話しかける。


「そうだな。まぁ機嫌は良いほうだろう。昔は男がいれば自分から仕事でもない限りは進んで話しかけて来ないからな」

 

とゴウは昔あったことを話す。


「アレでかよ。しかし、強さは本物だな。修行前の俺たちとどっこいってところだな」


 ヒビキはレオナの強さに感心する。そんな感じで待機していると、


「これよりダンジョン攻略を始める! 突入組は入り口集合!」


 ダンの声に全員が反応する。そうして集合場所には、運命の宿木の5名、暗闇の一等星から5名、薔薇の花園から4名、総本部から3名が集まり、その内の8名がSランク冒険者だ。そんな冒険者たちに、


「今回出現したダンジョンは過去のモノよりも攻略難易度が高いと予想される! 心してかかれ! 成果次第では国からの報酬もある!」


 ダンから発破をかけられる。そうして全17名はダンジョンに入るのであった。そこには事前に言われた通りSランク相当のモンスターがうじゃうじゃいた。


「それでは皆さんいきますよ!!」


 今回のダンジョン攻略においてリーダーを任された総本部のSランク冒険者のリーグ・スタンの掛け声で戦闘が始まった。その瞬間にマイはありとあらゆる補助魔法を攻略メンバーにかける。結果としてうじゃうじゃいたモンスターをものの数分で片付けてしまった。バフがあったとはいえ流石は各ギルドの精鋭といったところだ。


(これなら大丈夫だね! 皆んな強い!)


 そう思うマイであるがダンジョン攻略はまだ始まったばかりだ。



 


 次回はダンジョン攻略が本格化します。

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