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56話 フェンリルvsリヴァイアサン

 モンスター同士の戦いです。

「「「「「ただいま」」」」」


 龍同士の戦いの見届けを終えたリュウガとウェンは帰りの途中でルイ、ヒビキ、レイを拾って懐かしのギルドへと帰る。


「「おかえり〜!!」」


 マイとヒカリが抱きついてきた。何せギルドの休止から半年とちょっと経っているのだから当然っちゃ当然だ。


「皆無事で良かったよ〜・・・・ってリュウは右目どうしたの!? レイは右腕がないし!?」


 全員生きて帰って嬉しかったがよくよく見ればリュウガとレイの体に違和感を感じてみれば2人共欠損があることにマイは気づいた。


「確かというか絶対必要になるだろうからってエリクサーを持たせたよね?」


 そうなのである。マイは皆の事を心配してエリクサーを持たせていたのだ。それなのに2人も欠損しているのは驚きでしかないだろう。


「これは戒めなので直す気が私になかっただけです。お構いなく」


 淡々と語るレイ。続いてリュウガは、


「俺は治したかったが相手が特別な力持ってたせいでエリクサーどころかウェンでも治せないんだよ。本当は治したいんだよ。後々龍帝と戦うんだからよ」


 そう言ってガシガシと頭を掻くリュウガ。色々言いたい事はあったがみんな生きて帰って来たのだからそれだけでもいいかとマイは無理矢理納得した。


「あっ! そうだそうだ。私とで遠隔通話装置を開発したんだよ。国内だけでなく国外とも通話が出来ます」


 リュウガたちが修行に行ってる間の出来事を話す。それに対してルイは、


「凄いじゃない! それって世紀の大発明じゃない!」


 ルイは驚きながらもぴょんぴょんと飛び跳ねて嬉しそうだ。ヒビキとレイも驚いている。


(あ〜前の世界だと携帯電話が当たり前だけどこっちじゃ凄い事なんだよな)


 と前の世界では遠隔通話など当たり前であったリュウガは冷めた表情であった。リュウガと同様に冷めた表情をするのはウェンである。ウェン・・・・というか名持ちの龍たちは念話があるので遠隔装置などという装置など必要ないからだ。


「そんなに凄い代物となると国のお偉方に献上して俺たちは使えないだろ?」


 ふと疑問に思ったことをリュウガは聞くとマイは、


「もちろん国には献上したけど私たちが開発者だよ? そこは問題ないに決まってるじゃん!」


 そう言ってギルドの受付カウンターから遠隔装置を取り出して見せた。


「へ〜意外とコンパクトになってるわね。国外まで通話出来るからもっとデカいのかと思ってたわ」


 思ったよりも小さい装置が出て意外そうな声を上げるルイ。そんなルイたちに、


「本当はもっと小さくしたかったんだけどそれはまだ開発中。だからアズサは今ギルドにある工房じゃなくて国の開発室にいるんだよ」

「ん? まさか国に任されたプロジェクトか?」

「本当はうちだけでやるつもりだったんだけ国内ならともかく国外まで通話するとなると国同士の問題があるから結局色んな国からも人材やら金やら投資してのプロジェクトになったんだよね」


 思ったよりも大規模なプロジェクトでリュウガも流石に驚いた。そんなプロジェクトにギルドから2人も出ているのは凄い事だ。こうしてギルドでの出来事や修行の旅についての話を夜通しした。そうした中で、


「それじゃあ運命の宿木は再始動だよ!!」

「「「「「おー!!」」」」」


 運命の宿木が再始動したというのは国でも話題になった。Sランク冒険者が最多所属しているのだから当然といえば当然だ。そんな訳でギルドには沢山の依頼が舞い込む中で、


「大変です。リヴァイアサンが暴れました」

「またかよ」


 総本部の人間が汗だくになりながらギルドに飛び込んで来て喋ったのはテンプレにかりつつある伝説のモンスターの襲来であった。


「どうする?」


 どうする? とは誰が行くのかという事だ。今までならリュウガかウェンが行くのだが今はルイ、ヒビキ、レイも伝説のモンスターを確実に討伐出来る実力を持っているので選択肢が多いのだ。そういう訳でのリュウガの問いかけだ。特にルイ、ヒビキ、レイは試したくてしょうがないといった感じで瞳をギラつかせていた。そんな中から誰にするか悩んでいると、


 ウォンウォン!!


 フェンリルのハクが吠え始めた。


「ウェン通訳頼む」

「畏まりました」


 ウェンがハクのそばに寄り2体は会話をする。それを見てリュウガは、


「昨日から薄々思ってたけどやっぱりハクデカくなったよな」

「ですよね」


 リュウガの呟きにゴウが同意する。そんな疑問に、


「ウェンがドラゴンクラスのモンスターの肉を大量に与えるからどんどん成長したんだよ」


 ヒカリが答えてくれた。そんなヒカリの頭を撫でながら、


「流れで分かるがハクがリヴァイアサンと戦う感じか?」

「正解です。主様」


 ウェンはニコッと笑い。ハクはウォーーーーン!! と一際大きく吠えるのであった。


 リヴァイアサンが現れたのは前にも来た事があるモンスター研究所だ。その研究所がリヴァイアサンによりボロボロにされており研究どころではないだろう。そんな研究所から所長が出て来て、


「本当にすみませんね。いつもいつも」

「別にいいけど何でこんな事になったんだ?」


 リュウガは今回の経緯について聞いた。今回来たのはリュウガとウェンとハクとヒビキだ。選考理由はハクがメインなので通訳にウェン、飼い主としてリュウガ、万が一ハクが負けた時の保険としてヒビキだ。残念ながらルイとレイはじゃんけんで負けたので留守番だ。


「理由が分からないんです。前にウェンさんが約束させた通りの毎月の一回の研究にリヴァイアサンが現れたと思ったら攻撃を始めたんです。これによって研究所はほぼ崩壊して研究員と警備の冒険者が数十名死亡しました」


 相当な被害が出ており疲れが溜まっている所長はげっそりとした表情で説明した。


「まぁこんだけの被害が出た以上は討伐でいいんだろ?」

「もちろんです。もう我儘が言える立場ではありませんから」


 討伐の許可もおりたので、


「ウェン頼む」

「はい」


 ウェンが海に向かって何やら話かけると大きな波紋が広がったかと思うとザバーン!! という水柱が立ち上りそこからリヴァイアサンが現れた。しかし、


「何かデカくねぇか? 前に成熟したリヴァイアサンを見たがそれよりもデカいし色もやたら濃い青になってるし」

「そうなのか?」

「原初のリヴァイアサンの特徴ですね。産まれた時は通常だったので後天的に現れたのでしょう」


 ハクに任せて二人と一体は所長を連れて海から適度に離れた。


「ハクー。好きに暴れていいぞー」


 リュウガの言葉を受けてハクは駆ける。その速度はリュウガが戦った時よりも上がっていた。しかも、


「凄え!! 海の上を駆けているぞ!! フェンリルが世界を駆けるというのは誇張表現ではないのだな!!」


 興奮したようにヒビキが喋る。その横では所長がその様子をレポート用紙にガリガリと書いている。


「ハクも強いがあのリヴァイアサンも強いな。スピードは負けてもやっぱり海というステージのアドバンテージがデカいな。海水による攻撃と自身の口からも水のブレスを放ってくるしでやっぱり前見た個体よりも強いな」

「原初のリヴァイアサンよりは()()二体とも弱いですが素質は相当ですね」


 淡々とリュウガとウェンは話す。そんな観戦者とは裏腹に伝説のモンスターの戦いは激化していく。ハクは竜巻を10個ほど作り出して海水による攻撃を吹き飛ばすだけでなくそのままリヴァイアサンを攻撃した。それでもリヴァイアサンの鱗は硬いために無傷で済まされてしまった。


「防御力も高いな。これヒビキには荷が重いんじゃねぇの?」

「ふざけるな! 俺があんなウナギに負けるとでも言うのか!」


 リュウガの言葉にヒビキはキレる。


「五角といったところでしょうね。最終的には泥試合確定で日が暮れるのであなたの出番はなしです」


 バッサリとウェンに言われてしまうが、


「五角だというなら限界を超えるまでだ! ハクが負けたら俺の番だからな!」


 絶対に譲らんといった様子のヒビキに、


「まぁ、ハクが負けたらな」


 そう言って一応はヒビキの言い分を聞き入れた。


「良いのですか?」

「良いも何も元々ハクが負けたら戦わせる予定だったしそれにハクが負けるかよ。殺さないって縛りありとはいえ俺とそこそこ戦えてんだからよ」


 そう言って優しい表情でハクを見るリュウガ。そして思ったよりも早く決着が着きそうになる。


 ウォーーーーン!!!!


 ハクが一際大きく吠えると先程まで作り出した竜巻よりも大きな竜巻が出来る。それを見て、


「ウェン! 2人を頼む」

「もうやってます」


 凄まじい風により人間が耐えられるようなモノではないのでウェンにヒビキと所長の保護を任せようと声をかけたら既に結界を張っていた。


「流石・・・・それにして凄いな。俺の時よりも竜巻の大きさも風速も段違いだぞ」

「ドラゴンクラスも直撃しなくてもスダボロになりますね。もちろん直撃すれば()()リヴァイアサンでも即死しますね」

「だろうな。まぁ、黙って殺られる訳ないだろうがな」


 リヴァイアサンの後方を見るととんでもない巨大な津波が襲おうとしていた。


「さぁ、どうなる?」


 念の為に刀に手をかけるリュウガ。そして、


 竜巻と津波がぶつかる。竜巻により津波は消え失せて滝のように海水が降ってきた。同様に竜巻も消え失せるが、


「終わったな」


 リュウガの視線の先にはリヴァイアサンの首を食い千切ったハクがいた。


「大技を放ってからの動き出しが早かったですね。流石は神速を謳われるフェンリルですね」


 竜巻と津波がぶつかって消滅した瞬間にはハクは牙に風を纏わせて攻撃を仕掛けていた。リヴァイアサンが気づいた時にはもう遅くハクはリヴァイアサンの首を大きく噛み千切ってみせた。


「良くやったな。戻って来い」


 ハクを呼ぶがハクはリヴァイアサンの死体に近づいてその死体を食べ始めた。


「あぁ!? 死体でもリヴァイアサンは貴重なので食わないで欲しいのですが」


 所長がリュウガに止めさせるようお願いするが、


「報酬代わりに食わせてやれよ。それに何も完食はしないだろうからよ」

「う〜・・・・仕方ありませんね」


 そう言ってがっくりと肩を落とす所長であった。そうして一同はハクの食事を眺める。するとハクに変化が訪れる。ハクの周りに水の柱と竜巻が出来上がる。


「何・・あれ?」


 ハクを指差すリュウガ。


「リヴァイアサンを食べて水・・・・正確には海水を操る力を得たようですね」

「そんな事が起こるのですか!?」


 ウェンの解説に所長はるんるんとした表情でハクの変化を観察している。研究者として所長はガリガリと筆を動かす。


「それにしてもこんなのは初めて見ましたね」

「そうなのか?」

「長い歴史の中でもフェンリルとリヴァイアサンの戦いは小競り合いならそこそこあったと思いますが本気の殺し合いはありませんでしたからね」

「へ〜」


 とリュウガとヒビキは感心する。そんな皆の視線を受けたハクは、


 ウォンウォン!! 


 と吠えて一礼するとそのまま海を駆けるのであった。


「何となく分かるが一応翻訳頼む」

「旅に出る。強くなったら帰る。世話になった・・だそうです」

「俺はいいがヒカリが懐いてたからな〜。絶対に泣くぞ」

「まぁそこは親父として説明してやれよ」


 バシッ! とヒビキが背中を叩く。ため息を吐いてこれからの事を考えて少し気が滅入るがリュウガはギルドへと帰るのであった。そして案の定ヒカリは大泣きするのであった。


 フェンリルのハクは一時離脱です。それでもまだ出番はあります。

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