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54話 リュウガの修行

 久しぶりの主人公回。お相手は・・・

「死ぬかもな」


 部屋に入ってのリュウガの第一声は死亡宣言だった。何せ出てきたのがよりにもよって、


「あんたが出るのかよ・・2代目」


 まさかの練家の2代目当主の練龍鬼であった。並大抵の強者ではリュウガの修行にならないのだから当然相応の相手が出るのは覚悟していたリュウガではあったが、


「せいぜい名無しの龍だと思ったんだがラスボスどころか裏ボスじゃねぇかよ(そもそもこの2代目はいつの2代目だ? 神殺し成功前と後じゃ天と地ほど差があるだろう)」


 出方を伺いながら2代目の状態を考えるが向こうからは一切の反応がない。


「2代目! あんたはいつの」


 まどろっこしいので聞こうとしたところで2代目が視界から消える。


「不意打ちとからしくねぇな!」


 背後に移動した2代目の攻撃を瞬時に刀を抜いて防ぐ。そこから2代目の刀を弾いて反撃するが刀の側面を蹴られて斬撃が逸れる。しかも、そこから2代目は容赦なく追撃する。それは防げなかったリュウガは腕を斬られる。それでも戦闘に支障をきたすレベルは回避していた。


(それにしても集中してんのか? まったく喋んねぇんだけど。普段もそんな口数が多い訳じゃねぇがもう少し喋るぞ)


 リュウガの疑問に思うのも仕方ない。本来なら現れた対戦相手の実力だけじゃなく人格もしっかりと形成されて喋るはずなのだが生前の頃には神殺しを成し遂げている例外中の例外である練龍鬼をこの修行部屋は再現しようとしたのだがやはりそれは完璧にとはいかずに人格は再現出来ずに殺戮人形となった2代目当主の練龍鬼が完成したのであった。唯一の救いは神として神界の龍鬼を再現出来ずに神殺しを成し遂げてちょっとしてからの龍鬼であるという点だ。


(不味いな。今までの経験のおかげで反応は一応出来る。それでもゴリ押しされたら死ぬ)


 と思った瞬間には『神挿(かんざし)』を放ってくる龍鬼。それを、


『神流し』


 で突きを完璧に受け流す。龍鬼の攻撃速度はリュウガの速度を余裕で超えている。それでもリュウガが凌げるのは技は同じ練式剣術である事と精神世界で何度も手合わせをしている事がある。これがなかったらリュウガは最初の一撃でこの世からさよならしていた。そんなリュウガの実力を把握したのか龍鬼はギアを上げる。繰り出される剣撃は一撃一撃が並の龍の鱗であっても斬り裂く事が出来る斬撃である。それを、


『虚無』


 集中状態と脱力によって使える攻防一体の技でリュウガは迎撃する。しかし、あまりの斬撃速度に攻撃には転じる事が出来ずに防御のみに徹する事になっている。


(やばいなんてもんじゃねぇ! 攻撃する暇がねぇ! まばたきも出来ねぇ! このままじゃ斬り刻まれて死ぬ!)


 現状のままじゃ自分には死ぬ未来しか見えずに反撃の糸口を探すが徐々に斬り傷が増えていくリュウガ。そんなリュウガを更に攻め立てる龍鬼。そんな龍鬼の攻撃を凌ぐために、


「どっ・・らぁ!」


 リュウガは弾き飛ばしたかに見えたが、


(自分から後方に飛びやがったな・・だが隙は出来た! 攻める!!)


 後方に飛んだ龍鬼はまだ着地していない。そこをリュウガは狙って、


『神挿』


 を放つ。避けられるタイミングではなかった・・はずだった。


「は?」


 戸惑うのも無理はない。龍鬼の体は地に足をつけていなかったのにも関わらずに方向転換したのだ。しかも、


(最悪だ! 技の撃ち終わりで隙だらけだ)


 自分の失敗を後悔するがそれすらもノイズだった。龍鬼に背中を斬られる。


(クッソ! 何とか前に転がって致命傷は避けたがそれでもさっきよりもがっつり入った。この状態で()り合うとなると本気で死ぬ覚悟を決めるしかねぇな)


 ふーと息は吐き出し刀を構える。


「来い」


 先ほどよりも集中力が増したリュウガに警戒をする龍鬼。人格は形成されてないがその肉体は今までの経験を覚えている。リュウガは龍鬼を殺せる可能性がある事を。龍鬼はフルスロットで行く。


(神凪からの鞘での追撃。相手に体勢を整えさせる前に神挿。そして神鳴。技の連撃が綺麗だ。これが歴代最強の剣士か)


 死ぬ気でリュウガは見る。龍鬼の実力を自分のものにするために。そして、確実に殺す機会を待つ。


(ここだ!)


 一閃! 鋭い一撃が龍鬼の頬を掠める。


「よし!(イケる!)」


 そうリュウガは判断してしまった。別に油断した訳ではない。龍鬼についていけてる自分に自信が出てきたのだ。しかし、龍鬼は血を流した事により危機本能が働き再現不可能だった龍鬼の力が目覚めてしまう。


「ぐっ・・がぁぁぁぁ!!」速ぇなんてもんじゃねぇ、龍帝と変わねぇだろ!)」


 斬られた左目を押さえる。今の龍鬼の斬撃速度はリュウガでは防げるレベルではなかった。しかも、


「これは不味いのう」


 部屋の外にいる翁は異変に誰よりも早く気づいて龍皇と翠龍にルイ、ヒビキ、レイを避難するように指示を出した瞬間に、


 ドカーン!!!!


 部屋が壊れてリュウガと龍鬼が出てくる。


「ほれほれ! 巻き込まれたら死んでしまうぞ!」


 そう言ってリュウガと龍鬼以外は遺跡どころか森の外まで脱出する。


「翁、あれが龍神か?」

「そうじゃ、あれが龍神が一柱の練龍鬼様じゃ」


 龍皇の問いに翁は答える。それにへぇと笑う龍皇。そんな龍皇を無視して翠龍も翁に尋ねる。


「あの部屋はあらゆる攻撃を受けても自動修復するはずでは?」

「あの方は死という概念を視る事が出来るんじゃが神殺しをして以降は相手に死そのものを与える事が出来るようになったんじゃ。冥界の実力者たちと同じような力じゃな」

「それでは龍神の末裔に勝ち目は?」

「ほぼないじゃろうな。というか部屋が壊れた今末裔殿が死んだ後に龍神様が止まる保証がないからのう」


 とんでもない事を言った翁に、


「仮にサブマスターが死んでしまっても貴方方なら止められるのでは?」


 レイの疑問に、


「無理だな。()()は狂ってる。俺たち龍でも勝てるのは龍帝と覇龍ぐらいだ。悔しいが俺も無理だ」


 龍皇が疑問には答えてくれた。


「あなたでも無理なの? さっきは嬉しそうだったのに」

「あれは人間の最高峰どころか人間かどうかも怪しくて思わず笑ったんだよ。それだけ龍神ってのは凄えんだよ」


 翠龍と龍皇はそのまま会話を弾ませる。そんな2体の龍を無視して、


(こんな所で負けたら許さないわよサブマス!!)


 ルイたちは次々と破壊される遺跡群を心配そうに眺めるのであった。


(あ〜やべぇ。左目の視力が完全に殺された)


 リュウガは龍鬼から死に纏わる力があるのを聞いてはいたので自身の左目から光を失っても混乱せずにいた。


(それにしてもまさか特殊能力まで再現されるとはな。部屋が壊れたにも関わらず動くしバグなんじゃねぇか?)


 疑問には思いながらも焦ってはいない。死を司る力を持った状態のフルスロットの龍鬼が相手なのにも関わらずだ。


(死が近いからこそ頭も体も冴えに冴えてる。心地いい)


 恐るべき斬撃速度も捌く。何だったら反撃もする。もちろん防がれてしまうがこれは普通ではない。速度も威力もそこらの龍を殺して余りある程なのにリュウガはそれを捌き反撃もしているのだ。


「ほっほっほ、死が近くなるほどキレが増しているの。これはまだまだ結果が分からんぞ〜」


 嬉しそうに翁は笑いながら語る。リュウガは自分の実力が上がっているのが分かっているが、


「つっても体が持たねぇからこれで終わりにするぞ」


 そう言って距離を取る。そこから刀を地面に滑らせるような構えを取る。それを見て龍鬼も同じ構えを取る。


「これで終わりだな。さぁどっちが勝つか」


 龍皇がわくわくしながら喋る。そして、


        『死 閃』


 リュウガと龍鬼のみが使う最強にして最速の技『死閃』この速度は雷速で放たれる人間が放てるはずはない速度のこの技は両者ともに速度も威力も互角であった。それでも決着はついた。


「はぁ、はぁ、おえっ!」


 血反吐を吐いてリュウガは倒れる。それでも顔を上げた視線の先にいる刀を振り上げている龍鬼を見据える。龍鬼の刀は砕けていて龍鬼の体には大きな斬り傷が出来ており心臓にまで達していた。勝敗の理由は武器の差だ。リュウガの持つ刀は初代当主である練龍覇からずっと受け継がれた刀でありその刀で龍鬼は神殺しをしており刀には神殺しを成し遂げたという実績がありそれは神具へと昇華されていたのに対して龍鬼の持つ刀は見た目こそ再現されただけのただの刀なのだ。龍鬼の放った『死閃』にも耐えきれずにヒビが入りトドメとしてリュウガの『死閃』により完璧に砕かれたのだ。そうして龍鬼はもろに攻撃を受けるしかなかったのだ。


「また、ギリギリの勝ちだな」


 そう言って『死閃』の反動により気絶するのであった。


「いや〜4人とも良く生きてかえってこれたの〜。たいしたもんじゃよ、まったく」


 ホッホッホと愉快そうに笑う翁に、


「悪いな、部屋壊しちまって」


 リュウガが謝罪する。


「構わんよ。滅多に使う者のいない部屋なんてあってもなくても変わらんからな」


 変わらず愉快そうにする翁。すると、


「あ〜あ、修行に最高の部屋だからまた使おうと思ったのにな〜、サブマスのせいでもう使えないのか〜」


 嫌味ったらしく話すルイであったが、


「残念だけどあの部屋は生涯で一回しか使えないよ」


 翠龍からの言葉にルイは膝から崩れ落ちた。


「マジかよ。勿体ねぇな」


 ヒビキも残念そうにする。


「まぁ、今回来て正解だったろ? こいつについて来なかったらこの部屋を使う機会が永遠に失われていたんだ。前向きにかんがえておけよ」

「それもそうですね」


 龍皇の言葉にレイは深く頷く。


「それじゃあ帰るか」

「「「はい」」」


 ギルドへと長い道を帰ろうとするリュウガたち。そんなリュウガを、


「お前はこっちだ」

「はぁ!?」


 リュウガを抱えて龍皇は北へと飛んで行った。


「えぇぇぇぇ!!!!」

「ぶわははー!!!! だせぇ! 連れてかれていやがんの〜」

「笑ってる場合じゃないですよ! 追わないと」


 三者三様の反応を見せる人間組に、


「安心しなさい。何もとって食おうという訳ではないからの。お主らは帰りなさい。もしあれだったらスイに送らせるが?」


 翁の提案に、


「不安ではありますがサブマスターに命の危機がないなら私たちは帰ります。帰りは自力で帰りますよ。帰るのも修行ですからね」


 そう言って後ろにいたルイ、ヒビキにレイは笑いかけると2人も笑顔で頷く。そんな3人に、


「そうかそうか。頑張りなさい。部屋はなくなったがスイの話相手としてたまには来てくれると嬉しいのう」

「分かりました。それではお世話になりました」


 そうして3人はギルドへと帰るのであった。


「さて、見ておったんじゃろう? ()()()()?」


 その言葉と共にピシャーン!! と雷が鳴り響いて龍帝カンムルが現れた。そうして現れた龍帝に、


「どうじゃ末裔殿は?」

「最後の技は俺にも通用するが自爆して最後にぶっ倒れてるからやっぱりまだ駄目だな。待っても良いがそろそろ覇龍が目覚めるからあいつを殺したら次は末裔だな」


 そうして物騒な話の中心となっているリュウガはというと、


「何のつもりだ?」

「今のお前なら立ち会い人に相応しいからな。俺と氷魔龍との死合のな」


 そうしてリュウガと龍皇アブソリュートはブリザード大陸よりも更に北の極北へと向かうのであった。

 

 次回は龍皇vs氷魔龍です。

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