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47話 ウェンのお仕事

 龍姫ことウェンがメイン回です。しかし、そんな彼女に思わねお相手との遭遇が。

「まったく、派手にやりましたね」


 そう言って骸龍が暴れた土地の中心にてウェンは地面に片手をつき生命の息吹を吹き込む。すると、周囲を暖かな気配が包む。それでも、


「まだまだ時間はかかりそうですね」


 未だに死の気配を感じる。今回でこの作業は2回目だが完璧に消し去る事が出来ていない。


「流石は冥府の王の最高傑作ですね」


 と苦い顔をする。一応は人が近寄っても発狂したりするほどのものではなくなった。それでも具合が悪くなったり精神の弱いものだと気絶するレベルなのだが。


「このペースなら後5〜8回程訪れれば死の気配()消えるでしょうね」


 あくまでも死の気配はだ。この土地は龍皇、龍帝、骸龍の攻撃により更地となっているからだ。流石にこれは、


(わたくしの力でも無理ですね。生命の促進は出来ますが無から有は生み出せない)


 そうなのである。ウェンの力は生命の促進である。そのため地面の微生物や植物の根、菌類などがいれば土地の回復が出来たのだがこればっかりは無理だ。


(人間による開拓に任せるしかありませんね。もしくは・・森龍(しんりゅう)による森の発生ですが彼女は自分の住処から出る気はありませんからね)


 色々と土地の回復について考えるがこれ以上は無駄なのでギルドへと帰った。


 ウォン!


 帰って来たウェンをハクが元気よく迎える。


「良い子ですね」


 そう言って絹のように手触りの良い毛を優しく撫でる。


「ハク〜? どうしたの〜?」


 ウェンの鳴き声を聞いてマイがギルドから出てくる。


「わたくしが帰って来たからですよ」

「あぁ〜、そう言う事か。おかえり。ウェン」

「えぇ、ただいま帰りました」


 そうして2人はギルドに入っていく。ギルドは休止中のため、今いるのは、マイ、ヒカリ、ウェン、ハクの2人と1体と1匹だ。一応、錬金小屋にアズサもいる。


「う〜ん? やる事なくて暇だ〜」

「暇〜」


 マイの椅子に腰掛けてバタバタするのをヒカリも真似する。


「そんなに暇なら鍛錬でもしたらどうてすか?」

「そう言ってもな〜。わたしに訓練つけれる魔法使いなんて学園長かお父様くらいなんだよ?」


 龍であるウェンには預かり知らぬ事だがマイはそれだけ魔法使いとして優秀だ。その彼女に指導出来る魔法使いなどその2人しかいない。


「なら、その2人に会いに行けば良いのでは?」

「簡単に言うな〜、ウェンは。学園長は魔法学院のトップでありながらギルド総本部や錬金術師の学園、果てには王族や貴族にも顔がきく偉い人で忙しいんだよ! 無理無理!」


 と否定する。


「なら、あなたのお父様なら良いのでは? ご家族でしょう?」

「いや〜、前に婚約問題でバタバタして会いに行くのは正直心の問題が・・そもそも遠いし」

「そうでしたか。なら無理にとは言いませんがそれではどうするのです? 依頼にでも行きますか?」


 その言葉に、う〜んと唸りながら悩むも、


「いや、今日はいいや! ヒカリ! お出かけしよ! ついでにハクの散歩も!」

「うん!」


 そう言って2人は街へ行ったのを見届ける。


「ギルドの休止を認めたものの内心納得出来ずに気持ちが宙ぶらりん状態ですね、あれは」


 そう判断して、ウェンは、


「まぁ、時間が解決するでしょう」


 そう言って、ウェンは依頼を探しに総本部へと足を運ぶ。



 ガヤガヤ!! ザワザワ!! ガヤガヤ!! ヤイヤイ!!


 と総本部が騒がしい。いつも冒険者以外の人間もいて騒がしいのだが今日は更に騒がしい。誰も彼もが一点を見つめて目を離さないでいる。皆の視線の先には、依頼掲示板の前で’凛’と美しく佇むウェンがいた。基本的にウェンはギルドにいる事が多くあまり存在を知られていない。そのため、見覚えのない美しい女性、それも白く美しいチャイナドレスを着こなしてスリットから覗く美しく細長い生足を見せつけて誰も彼もが目を奪われていた。


「おい、声かけてみろよ」

「無理だろ! あんな美人と吊り合いがとれねぇよ!」


 や、


「綺麗〜、薔薇の花園の新人さんかしら〜」

「やっぱり、綺麗な人が揃ってるのね〜」


 などの会話がされていた。勿論、龍であり人間とは圧倒的に違う聴覚でその会話も聞こえていたが興味のない事なので無視する。そんなウェンに、


「なぁ、俺と一緒に依頼に行かないか?」


 1人の男が近づく、


「あっ! 暗闇の一等星のサーマだ。Sランク冒険者の!」


 サーマ・ランウェイは暗闇の一等星のSランク冒険者の斧使いである。要は有名人だ。まぁ、有名なのは、


「女好きって噂本当なのね」

「あいつに女を寝取られたんだよ!」

「4股してるって話よ」

「他のギルドの受付嬢に手を出したとか」


 と悪評なのだが。それでもSランク冒険者であるので実力は折り紙つきである。そんな彼の誘いを、


「結構です。()()()()()の助けは不要です」


 ピシャリ! と振られてしまう。その言葉に、ピシッ! と音がする程の様子で固まる。それには、


「ダッセェ〜! 振られてやがる!」

「調子乗ってるからだよ! バ〜カ!!」

「いいぞ〜!! 姉ちゃん!!」

「素敵よ〜」


 と、歓声が飛び交う。彼の嫌われ具合が良く分かる。そんな歓声を受け、ハッ! となり、


「うるせぇぞ! 外野共!! それにアンタもアンタだ! この俺!! No. 1ギルド暗闇の一等星所属にしてSランク冒険者の俺をふるとはどういうつまりだ!!」


 そういって襲いかかる。その様子を見ていた者は悲鳴をあげる者、なんとか止めようとする者がいて、その中には、


(あいつ!! 殺す!!!!)


 明確な殺意を持って愛用の鞭を振ろうとしている者がいた。薔薇の花園のエースのレオナであった。総本部に用事がありたまたまいたのだがそこにいたウェンに彼女も目を奪われていた。そんな中、ナンパをする・ワンアウト、女に手をあげる・・ダブルプレーのスリーアウトを犯したサーマ。そんなサーマに怒り心頭のレオナはAランクではあるがそれは男性嫌いが邪魔しているだけで実力だけならSランクの上位ともタメをはる。そんな彼女の一撃が入る前に、


 ぐるん?? とサーマの視界が回転して、ドサッと背中が地面にぶつけられて肺から空気が漏れる。


(何をされた?)


 まったくわからないでいた。Sランクの自分が相手の動きを負えないなんて! と動揺する。そんなサーマに、


「正当防衛なので文句は受け付けません。それでは」


 そう言って依頼書を手に取り総本部から出ていく。そんな彼女を見てレオナはトイレへと駆け込む。


(はぁはぁ♡・・凄いの見ちゃった♡あんなに強い(ひと)初めて♡♡)


 と個室で悶えていた。声も荒くなる。


(今までワタシで責めで生きてきたけど・・・・あの(ひと)になら♡♡・・・・ワタシ受けになっちゃうううう♡♡♡♡)


 と身悶えていた。そうしてスッキリした後に、


「あの(ひと)とお近づきにならなきゃ!」


 そう言って総本部の受付嬢からウェンの依頼を聞き出してウェンの後を追うレオナであった。

 ウェンが受けた依頼は東の森で大繁殖したモンスタービッグホーンディアのオスの討伐だ。名前の通り大きな角をもつシカのモンスターだ。大繁殖してしまいこのままでは緑が食べ尽くされてしまうとの事だ。なのにオスだけが討伐の理由はこのシカはオス1頭に複数のメスでハーレムを形成するのだが中心となるオスがいなくなればメスは散り散りになるのでオスだけ討伐すれば良い。そんな依頼を受けたウェンだったが、


(何故こんな事になったのでしょう)


 珍しく困惑していた。龍・・それも名持ちでもあるウェンを困らせてるのは、


「んふふっ♡」


 と腕を組んで上機嫌にしているレオナだった。レオナは東の森へと向かうウェンに追いついて、同行を願い出た。それを、


「良いですよ。アナタのことはギルドの方々から聞いていますから」


 と受け入れたのだ。そう・・受け入れてしまったのだ。こんな事になるとは思ってもいなかったから仕方ないといえば仕方ない。


(こんな事なら先程ころがした男の方がマシだったか?)


 なんて思ってしまう。そんなウェンに、


(はぁ〜ん♡困り顔も美しい♡だけどワタシが見たいのはさっきの冷たい目なの♡)


 サーマをころばして去り際に放った冷たい目を思い出し身震いしそうになるが()()依頼で来ているのだ。()()()ではない! と自分に言い聞かせる。そして、


「いましたね」

「えぇ」


 2人は木陰から標的のモンスターを観察する。確かに大規模な群れだ。ざっと見ただけでも100以上はいる。そんな中からオスを探すのは面倒だと、思うと同時に、レオナは、


(やった! これならた〜くさんこの(ひと)といれる♡)


 と嬉しそうにしていたが、


「あれですね」

「へっ?」


 あっさりとオスを見極めたウェンは居合いによってオスの首を斬り飛ばす。 ドサッ! と頭が落ち ブッシャー!!と首から血を流すオスの体に驚き、キィーー!! という鳴き声をあげてメス達は散り散りに逃げていった。あまりの早技、何よりその流れるような所作に、


「綺麗」


 ポ〜♡と惚けてしまう。そんなレオナに、


「帰りましょうか」


 優しく語りかけるウェンなのであった。帰りの道中に、


「何でわざわざ解体したんですか?」


 と疑問を投げかける。普通討伐されたモンスターは討伐報告後に依頼者がその死体を見てから報酬が送られるのだがウェンは解体して討伐の証としてオスのアタマを提出して報酬金を受け取ったのだ。そんな手間をかけた理由は、


「ギルドで飼ってる犬の餌ですよ」

「へ〜ギルドで犬を飼ってるんですね」


 そうなのである。表向きは犬として飼ってるフェンリルのハクのエサとして今回は依頼を受けたのだ。


(狩り尽くしても良かったのですが運ぶのが面倒ですからね)


 と思う彼女に、


「犬もいいですね。ワタシは()()を飼ってるんですけどね」

「そうでしたか猫も可愛いですね」

「えぇ! とっても可愛いネコちゃんなんですよ♡」


 ネコの顔を思い浮かべ頬を赤く染める。そんな彼女に、


「それよりも良かったのですか? わたくしと一緒にいるだけで時間を無駄にしたのでは?」


 と言うウェンに、


「そんな事ありませんよ。アナタのような強く美しい女性といれて良かったです♡」

 

 嬉しそうにレオナはするので、


「ならよろしいのですが」


 疑問に思うもウェンはレオナと途中で別れてギルドへと帰るのであった。

 その夜、


「レオナ様〜♡♡」

「ただいま、ワタシの可愛いこねこちゃん♪♡♡」


 そう言ってレオナを出迎えてくれたのは最近、薔薇の花園の受付嬢を辞めた少女だ。まだ若いのに辞めたのはレオナと一緒になるためだ。辞めなくてもレオナは少女を大切にするだろうがそれだけでは少女は満足出来ないために受付嬢を辞めたのだ。そこまで尽くす少女にレオナも嬉しくなり家に住まわせている。


(子猫ちゃんをワタシが愛して、そんなワタシをあの(ひと)が可愛いがる)


 完璧な計画ね、と考えて下腹部が自然と熱くなりその熱をぶつけるために少女をエスコートするレオナなのであった。



 

 ウェンとレオナの絡みでした。ウェンの事を知らないが故に龍に恋したレオナの明日はどっちだ?!


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