42話 龍皇再び!
鬼の討伐にマイ、ルイ、ヒビキ、レイを見送った後、
「それでは、主様はいい加減にその発火現象を治しましょうか」
見送った直後、発火したリュウガに対してウェンが提案するが、
「いや、治せるんならもっと早く治してくれても良くね?」
リュウガの言い分ももっともだ。何せ頻度は減ったといっても最低でも1日に1回は発火してその度にエリクサーで消化するのだ。そのため、
「いい加減治さないとエリクサーの錬金が間に合わないよ〜」
と言う、アズサからの泣き言が止まない。エリクサーの錬金素材は妖精を殺したため、リュウガなら簡単に集められるのだが錬金自体が恐ろしく集中力を使うためにエリクサーの錬金をしていたら他の錬金術の研究に時間を使えないのだ。そんな事情もあり早く治して欲しいというのが発火するリュウガとエリクサーを錬金するアズサの主張だ。
「魔法が効かない主様の体質のため、わたくしの回復魔法でも治せないのでここはその怪我を負わせた本人に治させましょう」
「おい、本人ってことは」
「えぇ、龍皇です」
マジかよ、と嫌そうな顔をするリュウガなのであった。
そんな事があったのが数分前であり、現在リュウガはウェンの背中に乗って龍皇の棲家に向かっている。
「そもそも治してもらえるのか?」
「おそらく治しますよ。また主様と戦う時に本調子でない人間を殺しても納得しないでしょうから」
龍皇は武人気質のために基本は正々堂々が当たり前で不意打ちなんてのはもってのほかであり怪我人とは決して戦う事はない事をウェンは知っている。
「龍同士の繋がりってのもあって良く知ってるんだな」
「何も龍全員と仲が良いという訳ではありませんよ。わたくしが良く知ってるのは龍皇、龍帝、覇龍と他数体位ですよ」
だったらよ、とリュウガは、
「これから戦う可能性のある龍について色々教えてくれよ」
「そうですね。教えるのは構いませんがもうすぐで着くので龍皇も交えて話しましょうか」
そう言って、高度を低くしていった。
「着きました」
「ありがとう」
龍皇が住んでいるのはとある海域の人が寄りつかない無人島であった。
「龍皇は炎を司るってのに火山地帯に住んでないんだな」
「そうですね。ですがそれを言ったらわたくしはどこに住むんだ? となるでしょう? 住む所なんてどこでも良いんですよ」
(あぁ、確かに生命を司るウェンはどこに住んでそうかイメージつかねぇもんな。そもそも人型になれる龍にとっちゃ棲家なんてどこでも良いのか)
なんて話をしていると、
「久しぶり、、、、って程でもねぇか。歓迎してやるよ。お2人さん」
そう言いながら龍皇が出迎えてくれた。出迎えに来た龍皇に連れてこられたのは、島の中央近くにある洞窟であった。
「この洞窟を色々開拓して住んでるんだが何も人が来る事は想定してねぇから椅子とかがある訳じゃねえからな」
「別に構いませんよ」
ウェンはそう言った後にブツブツと何か呟くと、
地面から温かい光が出たと思ったら、植物が生えてきた。
「地面を活性化させて植物を生やしました。これをクッションにしましょう、主様」
そう言って、ウェンが座るのを見てそれに倣い、リュウガも座る。
(意外に座り心地良いな)
などと考えていると、
「それで何の用事があって来たんだ? 普通なら自分を殺しかけた相手に会いに行くなんて発想は湧かないだろ?」
「その通りではあるんだがあんたのせいで俺は困った事に体が発火する現象に悩まされてるんだよ」
と、簡単に説明する。
「ほ〜、面白い現象だな。本来なら俺の炎を消すには相当の力を持つ奴の回復魔法もしくは特別な水、まぁエリクサーとかで消せるがお前の場合は傷そのものに俺の炎がこびりついているようだな」
珍しい、と呟く。
「だが、残り火とはいえ俺の炎を喰らっても生きてるならそれでもいいだろ」
「いい訳があるかよ。お前や他の龍を相手してる時に発火しようもんなら確実に死ぬ」
だから、
「敵対したとはいえ、一旦決着が着いたんだ。治して欲しい」
そう言って土下座する。それに対して、
「おいおい、未来の龍神様が簡単に頭を地に付けて良いのか〜?」
と、煽られるが、
「別に構わねぇよ。まだ人間なんだ。未来なんて知らねぇ。そもそも格式だのに囚われて死んでたら話になんないだろ」
ふむ、と龍皇は頷くと、
「その通りではあるな。それにそんな状態のお前と戦ってもつまんねぇしな」
そう言ってリュウガに近づくと、龍皇はリュウガの胸に手を当てると、
「俺の元に帰れ、炎よ」
すると、リュウガが発火したのだがその炎は全て龍皇の体に吸い込まれていった。
「結構な量だったな。最短でも1年は燃え続けたかもな」
そう言って笑いながら手を離す。
「いや、笑えねぇから」
心底、疲れた様子でリュウガは言う。そんなリュウガを尻目にウェンは、
「それでは、わたくし達2人が良く知る龍、特に主様が戦う事になるであろう龍帝と覇龍について話ましょうか」
「何だよ。喋ってなかったのか?」
龍皇の疑問に、
「龍帝が雷を司る龍である事と覇龍がバハムートとの戦いで休眠中である事を話したくらいですね」
それに、
「休眠中の覇龍はともかくとして龍帝は主様が龍神になるもしくはわたくし達と同格以上にならないと殺しに来ないでしょうからね」
「あいつはそうだろうな」
2人だけで話しているので、リュウガは割り込んで聞きに行く、
「何でだよ、殺せるならそいつみたいに早くに殺しにくるもんじゃねぇのか」
と、龍皇を指差す。それに対して、
「俺は暇つぶしに行っただけだよ。何もあいつらと違って神に成り変わる気はないが雑魚に従う義理はねぇってのが俺のスタンスだ」
「暇つぶしで1国を焼け滅ぼそうとしたのかよ」
と、冷や汗をかくリュウガに対し、
「龍の力ってのはそれだけデカいんだよ。まぁ、龍ナントカやらナントカ龍みたいな名前がついてる連中だけだがな」
「そうなのか?」
と、ウェンに視線を向けると、
「えぇ、その通りですよ。そもそも数が少ない龍という種族ですがその中でもごく僅かな何体かには何かしら名前があります。その名は基本的には襲名性ではありますが自分で付けた者は龍という種族が現れてからずっとその名を後世に残すのでなく自分で背負っているため強いです」
ウェンの説明に付け足して龍皇が、
「その例としては覇龍だ。他にも名持ちを殺して襲名するというのもあるがそれを成し遂げたのが龍帝だ。はっきり言ってこの2体は別格だ」
龍について色々聞けたリュウガの内心は、
(戦いたくねぇ〜。龍皇の時は気づいたら戦いが終わって見逃して貰った感があるのにそれよりも強いとかムリゲーだろ)
絶望感に溢れていた。そんな主の様子に気づいたウェンは、
「安心してください。先ほども言いましたが覇龍は休眠中です。早くても現れるのは3年後です。何せ結構な寝坊助さんですからね」
とクスクスと手を口にあてて微笑む。
「だな。それに龍帝の奴は戦闘狂ではあるが自分より弱い奴には一切興味がねぇからな。安心しろよ」
と、龍皇に背中を叩かれたが、
「いや、お前はどっちかというと俺を殺しに来るポジションだろうが! 何を急にフレンドリーに接したんだよ!」
「気にすんなよ。暇つぶしに遊んだ結果が生きるか死ぬかの2択になってるのはお前が弱いからで。俺は殺す気はないから他2体とは違うだろ」
何て言ってるの対して、
(サラッと、弱いって言いやがって! テメェらに比べたらだいたいの生き物は弱いに決まってんだろうが!)
と、怒鳴りたいところを抑えて内心で留めた。そんな様子に気づかずに龍皇は、
「それよりも、ウェン。仮想龍帝でサンダーバードや、風の妖精とこいつを戦わせてるようだが無駄だぞ。あいつは本物の雷そのものが戦闘技術を極限まで極めた最強の龍だ。訓練するならお前がひたすら相手した方がまだマシだ」
という言葉に、
「ちょっと待て。まだマシって何だよ。どんだけ強えんだよ、龍帝は?」
その疑問に2体の龍は、
「「わたくし/俺たちを合わせても3倍の差がある」」
そう答えた。その答えはリュウガを絶望の淵に叩き落とすには充分な言葉であった。その後も龍について色々話をしていたら日が暮れて来たので、
「発火止めてくれて感謝する。それじゃあな」
「応! お前が強くなった頃にまた遊びに行くからな」
「来るな!」
なんて、会話をしてリュウガはウェンの背中に乗りギルドへ帰って行く2人を見送り、
「さて、龍帝、覇龍以外にも名持ちはいるがそいつらはどう動くかな」
意味深な事を呟き洞窟へと帰っていく龍皇だった。
「で? これからどうする?」
「どうするとは?」
「龍皇が言ってたろ、訓練するならお前を相手にしろって、これからはそうするのか?」
という、リュウガの疑問に、
「そうですね。そこらの有象無象ではハンデをつけないと訓練になりませんから。基本はわたくしと相手をして貰います」
「頼むぜ。1回自殺した身だからあんまり死ぬ事に対して恐怖がある訳じゃねぇが今はギルドのサブマスターなんて地位にいる以上は簡単には死なないないんだからよ」
と言うが、
(まぁ、場合によってはギルドをNo. 1にした後なら約束も守れたし龍共に殺されてもいいんだがな」
などとかなり後ろ向きな姿勢であるが、そんな主の気持ちには気づきはしないが、
「任せてください。主様を立派な龍神になるよう鍛えますからね」
覚悟してください、と気合を入れるのであった。
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