40話 妖精再び
「龍帝は雷を司るので風の妖精で肩慣らししておきましょうか」
雷の魔法は風属性の派生となっており使える者は風属性の魔法使いに限られている。
「俺はもう2度と妖精と関わりたくないんだが」
「雷を使うモンスターは希少ですし、Sランククラスでないと訓練になりませんから諦めて挑戦して下さい」
雷を使うモンスターはサンダーマウンテンには大量に生息しているがSランクですら瞬殺するリュウガでは訓練にならないので伝説のモンスターもしくは妖精位しか相手がいないのだ。
「だけど、妖精の目撃情報なんて聞かないんだけど?」
マイの一言に対してウェンは、
「問題ありません。ここに来る前に偶然風の妖精を見つけたのでそれを主様には狩って貰います」
そんな訳でリュウガはウェンと共に風の妖精がいる地へと向かっていった。
「風が心地いいな」
「喜んで貰えて何よりです」
結構遠いのでウェンが龍の姿になりその背中に乗っての空の旅だ。
「本当はSランク冒険者連中も連れて行きたかったんだがな」
「仕方ありませんよ。妖精は女嫌い。だからといってヒビキのみを連れて行くのは他の方に不公平でしょう」
そういう事情があったのだ。本当はヒビキを連れて行こうと思ったのだがルイとレイが不公平だと怒り喧嘩になりそうだったので3人には留守番させる事になったのだ。
「妖精の女嫌いとイケメン好きは面倒な事この上ないな」
げんなりした顔をしているリュウガとは裏腹に風の妖精がいる場所へと着いてしまった。
「空気が美味いな」
「当然ですね。風の妖精がいる土地は常に新鮮な空気が流れておりますからね」
「成程な」
そんな会話をしている2人に、
「あ〜最悪! せっかく強そうなイケメンがいると思えば女連れとか、舐めてんの?」
絶世の美女が口悪く現れた。そして、風魔法を使い襲ってきた。
「それじゃ、頑張ってください」
全然攻撃を感じさせない様子でリュウガと妖精から距離をとった。
「なんなの? わたしの事舐めすぎじゃない? 妖精よ」
「いや、舐めてねぇよ。俺は」
ウェンにとってはとるに足らない相手ではあるがリュウガにとってはドラゴンや伝説のモンスターに比べたら圧倒的にしんどい相手である。
「ならあの女は舐めてるんでしょ! あんたを殺したらあいつも殺してやる!」
そう言って風の刃を放つ。それを捌きつつも、
『神凪』
妖精の首を刎ねる。ここまでは簡単なのは以前水の妖精と戦っているリュウガは知っている。
「無駄よ! あんたじゃわたしには勝てないわよ!」
「首を刎ねられておいて何言ってんだよ、雑魚」
リュウガは妖精を煽る。怒らせて本気を出させるためだ。そうでもしないと仕留めれないし、訓練のためにも雷魔法も使わせたいからだ。しかし、
「わたしの本体を出させようとしてけど無駄よ。絶対出さないから。このままあんたを消耗させた所を嬲り殺しにしてあげるわ!」
(前の妖精よりも冷静だな。うぜぇ)
流石に困る。負ける事はないが勝てないのはマジで面倒臭い。そんなリュウガの様子を見て、
「妖精よ、姿は現さなくてもいいので本気を出して貰えませんか? 訓練にならないので、なにより本気でいかないと主様を殺せませんよ」
ウェンが口を挟む。それすらも、
「うっさいわね! 女が喋んな!」
とりつく島もない状況に、
「妖精如きが粋がるな。本気を出さずに主様を殺そうなどと言うなら代償としてわたくしが消しますよ」
「女がわたしの前で喋んな!」
ウェンの発言に言い返したがそれを最後に妖精はその姿を消した。消えた理由は簡単だ。ウェンは無属性を操る龍だ。無属性は回復や補助魔法といった魔法だけでなく重力魔法などの攻撃魔法もある。ウェンは妖精の本体を千里眼で見つけて遠隔で重力魔法を使い圧殺したのだ。それに対して、リュウガは、
「いいのか? 俺の訓練は?」
「あの様子では話になりませんし、主様とわたくしを舐めていたので当然の報いですね、訓練は普段の通りでいきましょう」
結局、対龍帝を想定した訓練は出来ずに終わったが、
(改めて龍ってのはバケモノだな)
妖精をあっさり始末してみせたウェンにリュウガは今後戦わなければならない龍達に勝てるのか一抹の不安を感じて再びウェンの背中に乗りギルドへと帰って行った。
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