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幕間5 舞姫

 久しぶりの幕間です。

 練龍岩(れんりゅうがん)は練家の11代目として生を受けた。この時の練家は2代目が龍神としてとある神社に祀られておりそこを代々守る一族となっていて彼の母である10代目当主練龍姫(れんりゅうき)は巫女として活動していた。


「母上、今年も祭りが始まります」

「そうですね、今年も終わりですか」


 毎年年末にやっている龍神感謝祭というのがあり、当主にして巫女である10代目である龍姫が舞を一日中するというものでありその舞はあまりの美しさから他の地域からも観光に来る人が大勢がいる程の祭りだ。


 祭り当日、深夜零時からの遅い時間だが神社には大勢の人が見に来てる。


「この舞を龍神に捧げます」


 そう言って舞が始まる。その舞は美しく誰もが見惚れる者が大勢だ。


(この舞がいずれは見れなくなるのか)


 龍岩には母とは違い才能がなく舞自体は覚えているし出来るが一日中というのは無理で半日が限界だ。


(それでも途絶えさる訳にはいかない)


 その意思を強くして舞を見つめる。祭りが終わり、母に水を差し出す。


「お疲れさまでした」

「大丈夫ですよ。貴方も最後まで見届けてくれてありがとうね」

「当たり前です。自分には舞を一日中舞うことが出来ないのだから」


 悔しそうに言う息子に龍姫は、


「構わないですよ。そもそも受け継がなくともいいんですから」


 まさかの発言に、


「そんな歴史ある舞なのではないんですか!」

「言ってませんでしたがこの舞はわたしくしが当主になってから始まったものなんですよ」


 フフと笑いながら自分が当主となった時の事を話してくれた。


「本当になるのか? 別に無理に継がなくてもいいんだぞ」


 練家9代目当主練龍庵れんりゅうあんは娘にそう言うが、


「初の女性当主というの肩書きは中々面白いでしょう? それに才能があるのに受け継がないなんてありえないでしょう」

「確かにお前の才能は俺を凌駕しているが普通の暮らしをしても良いんだぞ?」

「寧ろ普通ではない事をしたいですね、せっかく龍神を祀っているのだから舞なんかもしたいですね」


 既にやりたい事も決めている娘に根負けして、


「分かったよ、それなら今日からお前が練家当主だ! 頑張れよ」


 そう言って龍庵は応援するしかなかった。


「そんな始まりなので別に終わるならそれで構いません。そもそも練家はそこのところが緩いですよ? 必ずしも才能ある者が産まれるとは限らないのだからその子に合わせるというのが基本的な決まりです」

「そんな緩いのか」


 ガッカリした。何せ昔、権力者に母は求婚を受けていたが、


「私の元でその舞を一生見せてくれ! 金も食も思いのままだぞ」

「亡き夫に操を捧げているのでお断りします。そしてこの舞はそんな安いものではありません」


 バッサリと断ったのだ。だからてっきり歴史ある舞だと思っていたのだ。


「それにしてもあの時は凄かったな」


 思い起こすは権力者の求婚を断った報復として神社に軍勢が襲って来たのだ。その数、5000人。


「は、母上」

「大丈夫ですよ、あなたには指一本たりとも触れさせませんから」


 怯える息子に優しく微笑んで刀を手に取り軍勢と対面する。そして、


「巫女なので殺生はしたくありませんが守るべき子がいるので致し方ありません。死にたくない方は今すぐお引き取りください」


 ぺこりと頭を下げる。それを皮切りに一斉に怒声と共に襲い掛かる。


『龍神神楽』


 祭りで使われる舞。年末にしか見られない美しい舞が今は軍勢の首を次々に刎ねていってる。その姿は、


「美しい」


 後ろで見ていた龍岩は勿論首を刎ねられる側の者達ですらその感情を持って死んでいった。その姿は天界の神々にも見られており、


「龍神として受け入れよう」

「いいな年末の芸に加えよう」


 どんちゃん騒ぎしており龍神の1柱として受け入れる事になっていたが、


「本人に許可とれよ。もし無理矢理なら殺すからな」


 騒ぎを聞きつけて龍神となった練龍鬼が現れて釘を刺した。神になってそこそこ経ったのもあるし何より神を殺した実績もあり龍神としての地位は2番目であり神全体としても力だけなら3番目となっているほどであった。そんな龍鬼の忠告もあって、


「わ、分かったよ」


 本当は問答無用で神にされようとしていたがそれは回避された。


「終わりましたね。片付けが大変ですね」


 全てが終わって巫女服が返り血で真っ赤に染まっているがそれすらも、


(美しい)


 その後、彼女の成した偉業は伝わり、『舞姫』 『美しき死神』 などと呼ばれるようになった。

 そして、


「これが最後の舞ですね」

「母上」

「お婆様」


 悲しそうにする龍岩と孫の龍泡(りゅうほう)。練龍姫は75歳となった今日まで一度たりとも舞をしなかった年はないまま最後の年になった。


「龍神様、これがわたくしの最後の舞です」


 そう言って舞が始まった。その舞は若かった頃と変わらず見る者全てを魅了した。本当にこれが最後になるとは誰も信じられない。舞が終わる。いつも通り水を差し出しに行くと、


「今までお疲れ様でした」


 立ったままその生涯を終えた。そうして練龍姫は新たな龍神の1柱として迎えられた。


 練龍姫れんりゅうき 

練家10代目当主。唯一の女性当主。死後龍神になった1人。

舞姫、美しき死神など様々な呼ばれ方をしている。


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