33話 メンバー8
リュウガはまた、総本部に呼ばれていた。しかし、今回はリュウガ以外にも呼ばれていた人物がいた。レイ・カグラザカ、暗闇の一等星のエースにしてSランク冒険者の彼女もグランドマスターに呼び出しを受けていた。
「Sランク2人も呼び出す要件って何ですか? また伝説のモンスター関連?」
総本部の依頼とは抜きにしてもリュウガは既に海、陸、空の覇者と呼ばれるモンスター達を討伐もしくは撃退してしまっているが、
「それよりも難題だ。ユニコーンの捕獲だ」
「馬鹿だろ」
「アホなんですか?」
2人の口からそんな言葉が出るのは仕方ないだろう。ユニコーンはSランクモンスターそれを捕獲しろというのは中々に難題だ。
「発見例も少ない上に強い。それ以外で分かってる事は処女には優しい位か? そんなモンスターを捕獲しろって依頼は研究機関の連中は現場仕事舐めすぎだろ」
リュウガは捕獲依頼はモンスター研究機関からのものだと決めつけていたが、
「違う。この依頼はこの国の姫からの依頼だ」
「「はぁ?」」
2人の声が重なる。それだけ衝撃の発言だったのだ。
「どうやらこの国でユニコーンが目撃されたんだがその情報が姫に渡り、『ユニコーンに馬車を引かせたい』 という事で今回の依頼を2人に頼んだ訳だ」
グランドマスターも呆れる2人の心中を察して苦笑いを浮かべている。
「まぁ、今までの依頼に比べたら楽勝か」
「頼もしいセリフだな、傷はないだけ報酬は上乗せするらしい。最低でも1億は出すそうだ」
流石は王族の依頼だけあって報酬は高額。問題は、
「2人がかりで行くか? それともどちらかが受けるか? 俺としては2人がかりで万全を期してもらいたいんだが」
「俺はどっちでもいいな、合わせるぜ。レイ・カグラザカさん」
2人からの問いにレイは、
「それでは一緒に来てもらいましょうか、リュウガ・レンさん」
◇
鬱蒼とした森の中をリュウガとレイは歩いている。この森はユニコーンが目撃された場所だ。移動してなければまだいるだろういなくても何か手がかりはあるはずだという事で2人の意見は一致していたので今森を歩く。
(強い。歩き方だけでそこらの冒険者とは違う)
レイは自分の前を歩く、リュウガの強さを感じている。以前会った時は戦闘している所を見る事は出来なかったが立ち姿だけでも強い事が分かった。そして今歩き姿や重心からリュウガの強さを再認識している。
(自分1人でも構わなかったが折角の機会だ。ちゃんと実力を見極めよう)
それがレイの狙いである。ギルドとしては1億もの報酬がかかった依頼を他のギルドの人間と分け合うなど損でしかないのだが個人の意志を尊重したのだ。そんな思考を、
(大方、俺の実力が見たいんだろうな)
リュウガは読んでいた。さっきから視線が刺さりまくっているのだから当然なのだが。
「どうする? ユニコーンを見つけたら、あんたが全部やるか? 必要ならフォローするが」
リュウガからの問いに、
「あなたにお任せします。私がフォローにまわります」
(彼の戦いを見るならこれがベストの選択)
そんな彼女の思惑を知ってか知らずか、
「いや、フォローはいらねぇ。速攻で終わらせるから」
断言してみせた。
森を歩く事1時間半お目当てのユニコーンを発見した。白く美しい体に金に輝くたてがみ。そして立派で美しいツノ。体長は3mくらいだろう。
「どうします?」
警戒されないように木に隠れながらレイはリュウガに聞く、それに対して、
「まぁ見てろ」
堂々と姿をさらす。現れた敵に警戒し反転して逃げようとするユニコーンに、
『逃げるな』
静かに語りかける。ただ一点尋常じゃない程の殺気を放ちながらではあるのだが。その殺気により森から一斉にモンスターが逃げ出す。森が騒がしいがユニコーンは自分に語りかけた言葉だと理解して逃げる事が出来ない。脚がガクガクと震えて立つのもやっとの程だ。そんなユニコーンに、
「いい子だ」
ゆっくりと近づいて頭を撫でる。ただしそこに友好の意志はなく、殺気を放ち続けて、『逃げたら、殺す』 と暗に示していた。それを理解してユニコーンは黙って撫でられる事しか出来なかった。
「終わったぞ」
刀を抜いて臨戦態勢のレイに語りかける。話しかけられたレイは汗でびっしょりになっていた。
(強いなんてレベルじゃない、住んでいる領域が違う!)
レイの強さは剣聖と比べても遜色ないのだが相手はそれを凌駕するバケモノだと理解した。
◇
「まさか、無傷で捕獲するとはな。とはいえ流石に疲れたろ?」
「いや、思ったより楽勝で拍子抜けした。報酬は全額暗闇の一等星にやるよ」
そう言ってギルドに帰るリュウガ。残されたレイにガンは、
「どうする? 貰っていくか?」
「そうですね。貰える物は貰っておきましょう」
貰える1億をどうするか決めてある決意をした。
◇
「レイ・カグラザカ。職業は剣士。ランクはS。昨日暗闇の一等星を辞めて来ました。このギルドに入らせてください」
ユニコーン捕獲の翌日の出来事に、
「「「「えぇぇぇぇ〜〜〜〜」」」」
ギルドに驚きの声が響く。当然だろう。No. 1ギルドのしかもエースが所属ギルドを変えるのだから。勿論ギルドを辞めるのは個人の自由ではあるのだがそれはフリーの冒険者になる場合だ。他のギルドに行く場合は違約金として金をいくらか払わなければいけないのだが彼女は昨日の1億でそれを払ってギルドを辞めたのだ。
「歓迎するけど、理由は?」
マイからの疑問に、
「サブマスターである、リュウガ・レン様に憧れました。それにあのギルドは口だけのガラが悪い奴が多くて辟易していたのでちょうど良かったんですよ」
そういう事で、
「私が来た以上このギルドがNo. 1になるのもそう遠くないですね」
晴れやかな顔で宣言した。
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