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32話 ソウの苦悩

 メンバーの1人であるソウに焦点を当ててみました。

「自分を鍛えて下さい」


 そう言ってウェンに頭を下げているのはソウだ。ソウはずっと前から悩んでいたのだ。後から来るメンバーが凄すぎると、何せSランクやAランク冒険者しまいには龍だの鬼人だのまで入って来るのだからたまったものではない。唯一ランは普通ではあるのだが補助魔法使いは普通の冒険者とは違う方法でのランク上げなのだ。補助魔法使いはモンスター討伐が出来ないのでランク上げ方法は特殊でそのランク毎の魔法を使えるかというものだ。例えば、


 攻撃力上昇‘弱’ ならFランク

 攻撃力上昇  ならEランク

 攻撃力上昇‘中’ ならDランク

 といった具合になっている。ちなみにランは今Cランクに昇るための勉強をギルドマスターであるマイとしている。


 そんな訳で正直今の自分はこのギルドに必要ないんじゃないのか? などと悩みに悩んだ結果、龍であるウェンに鍛えて貰おうという事で冒頭のセリフになるのだが、


「お断りします」


 ばっさりと断られてしまった。


「何でですか?」

「わたくし自身のランク上げ、それに加えて主様との鍛錬があります。何よりあなたではわたくしの鍛錬についていけず死にます」


 ウェンの言う通りだ。伝説のモンスターすら瞬殺してしまう男ですら毎回死にかけるウェンとの鍛錬はソウには荷が重いとかのレベルじゃない。


「ですが、強くなりたいというその向上心は素晴らしい。まずはSランクになりなさい。そうしたらわたくしが指導してあげましょう」

「分かりました」


 なんて返事をしたもののまずはがSランクというのがキツすぎる。Sランクの時点でこの国ではトップの実力者として名を挙げられるのだから。とりあえずはランクを地道にランクを上げるしかないのかと依頼掲示板へと足を進めた。


その夜、広間でギルド住み込み組が昼間のソウについて話し合っている。


「悩んでいるよね」

「そりゃそうだろ」

「当然の悩みですよね」

「悩みというのは成長に必要なものです」

「悩みなんて飯食って寝ればなくなるだろ」


 皆が真面目に考えている中1人だけ単純思考な男が混ざっていたのでリュウガはヒビキを気絶させた。


「ちょっと! 何やってんの!」


 怒るマイに、


「いや、こいつがいても話が進まないから思わず手が出ちまった」


 すまんと、頭を下げる。


「まぁ手を出すのは良くありませんがこれで話が進みますね」


 さらっと酷い事を言って話を進めるゴウ。


「とは言っても本人にやる気はありますし別段気にしなくても良いのでは?」


 ウェンの言う通りだ。ソウは元々真面目でランクだってCランクと周りが異常なだけで充分頑張っているのだ。


「とりあえずはソウが無茶してたら周りのわたし達がブレーキになる方向で」


「「「了解」」」


 と簡単に方針を固めてそのまま酒盛りを始めた。



「この依頼行ってきます」


 そう言ってソウは1()()で依頼をこなすに行く事が多くなっている。別に1人で依頼をこなすのは悪い事ではないのだが、


「何か焦ってるよね〜」


 冒険者ではないアズサから見ても分かる位には無茶をしているのが分かる。


「で、誰が話かける?」

「やっぱりギルマスでしょ」

「いやいや、あたし魔法使いだからソウの悩みに役立てないよ、サブマスでしょ」

「無理、努力も勿論したがほぼ才能で強くなったし、ゴウ頼む」

「主様何故わたくしではないのですか」


ハブられて拗ねるウェンだが、


「龍と人間じゃ価値観が絶対違うからお前には頼れねぇよ」


 だから頼んだぞと、ゴウの肩を叩くリュウガであった。



「ソウちょっといいか?」


 依頼から帰って来たソウをゴウが呼び止める。


「何ですか?」

「ちょっと話があるんだ」


そう言って2階にあるゴウの部屋で話に移る。


「最近1人で依頼をこなして頑張っているが無茶しすぎだ。治ってない怪我もあるだろう」


 そうなのである。毎回依頼をこなして怪我を負って帰ってくるがその怪我が治りきらずにまた依頼に行くというのをソウは繰り返している。


「こうでもしないとSランクにいけませんから」


ハハッと笑って誤魔化すソウ。


「あのな、龍であるウェンの言葉を鵜呑みにしすぎだ。Sランクなんてのは簡単になれるもんじゃない。ここにいると感覚が麻痺するがサブマスとウェンは別格だ。比べるな、お前はお前だ」


 その言葉に、


「自分は強くなれないって言いたいんですか!」


 ソウが泣きながら言葉を続ける。


「1番初めにギルドに入った自分よりも後から入った人達は皆格上ばかり! こんなのあんまりじゃないですか!」


 フーフーと息を荒げる。それを黙って聞くゴウ。


「いつかSランクに上がるとは言ったけどこのままじゃ上がらないから頑張ってるのに何で分かってくれないんですか!」


 ゴウは息を吐いてから、


「あのなソウ、何もお前が強くなれないなんて誰も思ってない。だけど身体を壊したら強くなるどころか弱くなる。だから今は耐えろ」


 優しく語りかける。それでも、


「でもそんなんじゃ、いつまで経っても強くなれないじゃないですか!」

「気持ちが先走っても身体が追いつかなきゃ駄目だ、今はとにかく耐えろ」

「耐えても、強くなれなかったらどうするんですか!」


 ゴウは言葉に詰まる。頼られたとは言え自分もSランクとして上の存在で下の気持ちに慣れてないのだ。そこへ、


「そこは感度の差だろ」


 リュウガが入って来る。


「耐えて耐えてそこで強くなれなかったと諦めるのか諦めずに強くなろうという気持ちを切らないで耐えれるのかだ」

「そんな感情論が聞きたい訳じゃないんですよ! 自分は強くなれるんですか!」


 結局のところそこをソウは知りたいのだ。それに対して、


「知るかよ。そもそも俺だって龍に勝てる程強くなれるか知らないのに他の奴が強くなれるかなんて結局はそいつの頑張り次第なんだよ」


 分かったら、寝ろと言ってソウの首に手刀を落とす。肩に抱えるリュウガに、


「強引すぎませんか?」

「かもな。だが昨日気絶させたがヒビキが言った事も一理ある。こんだけ泣いて怒鳴って寝て、起きて飯食えばちっとは落ち着くだろう」

「そうですかね」

「元々真面目なんだ、むしろ起きてから怒鳴った事に対して罪悪感が出るかもしれないからそこだけフォローしとけばいいんだよ」


 そう言ってソウを部屋に寝かせに行くリュウガの背をゴウは見送った。


「この依頼に行ってきます」


 そう言ってソウはランと()()依頼をこなしに行った。あの後はソウが怒鳴って事に対してリュウガの予想通り罪悪感から謝って来たがリュウガもゴウも気にしておらず強さを求めるのは冒険者なら仕方ないとフォローを入れつつ、


「お前はお前のペースでやればいい。それに言ってたろ、何年かかってもSランクになるって、それなら何年かけてもいいからゆっくりなればいい」


 との言葉を貰い、今はゆっくり、しかし確かにランク上げを頑張るソウの姿があった。



 今回はソウに焦点を当てましたが他のキャラにもいずれは当てます。


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