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28話 ウェンとの手合わせ

「オヤジ、刀はあるかい?」


 ウェンを連れてリュウガは冒険者御用達の武器屋剣山(けんざん)に来ている。


「お前さん、今度は別嬪さんを連れて罪な男だねぇ」

「茶化すなよ、であるのか?」

「あるよ、ちょっと待ってな」


 そう言って店の奥に消え事数分して2振の刀を持って店主は戻ってきた。


「刀はワ国にある剣だから使い手が少ないから制作者は俺しか居ない。そのためこの2振しかないが質も値段も他の武器とは比べ物にならんぞ」


 持って来たのは紅色の鞘に納められた刀と純白の鞘に納められた刀。そのどちらも値段は1000万するそうだ。


「持ってみてもよろしいですか?」

「勿論。ただし壊すなよ」


 ウェンは試しに純白の鞘に納められた刀を抜いてみる。綺麗な藍色の刀身が美しい刀だ。刃筋も綺麗だ。


「軽いですね。しかし、強度も充分ある」

「分かってるね、その刀は軽さと強度を両立させた俺自慢の1振だ」


 嬉しそうに語る店主。


「主様、わたくしの愛刀はこれにします」

「分かった。それじゃ、オヤジこれ貰ってくぜ」


 そう言ってポンと1000万を払い店を出る2人であった。



 店を出て街をついでに案内している途中に、


「主様が殺し合いをした場所に行きたいのですがよろしいですか?」


 ウェンが言う殺し合いをした場所とはバルトが眠る、盗賊団の砦跡地の事である。


「別に構わないが何故そこに?」


 当然の疑問だが、


「それは着いてからのお楽しみという事で」


 と,和やかな笑みでかわされて現在2人は盗賊団の砦跡地に来ている。


「ここが俺達が殺し合いを演じた場所だ」

「広さは充分ありますね」


 それでは、と刀を抜いて構えるウェン、


「折角刀を手にした訳ですから手合わせといきましょうか」


 その提案に、


「良いぜ、戦り合おうか」


 笑みを浮かべ構える。そして、


「参ります」


 その一言を発した瞬間リュウガですら反応するのがギリギリの速度で接近し刀を振るうウェン、それをリュウガは神凪(かんなぎ)で受けるも、


(龍ってのは伊達じゃねぇな)


 反応したとはいえ力負けして後ろに吹っ飛ばされる。しかし、


(流石ですね、しっかり衝撃を殺している)


 ウェンは感心しつつも追撃して殺すつもりで突きを放つ。


神流(かみながし)


 それを受け流すリュウガ。


 練式剣術 ‘神流’ 敵の攻撃を受け流す防御技。 ‘虚無’ と違う点はあちらは攻防一体であるのに対してこちらは防御のみで全身の脱力を必要としない点である。


(力負けしたのを即座に理解して受け流すとはやりますね)


 しかし、


(痛ぇな)


 完全には受け流せなかった。無理な体勢だったうえにやはりとんでもない力が襲って来たために手から血が流れる。その上、


(ヒビが入ったなこれは)


 感覚で分かる。明らかに骨にヒビが入っているが、


(やっぱり楽しいな強敵との戦いってのは)


 笑みが溢れる。どうしたってそうなってしまうのは自分の(さが)だろう。それを見てウェンも、


(主様が楽しそうで何より)


 嬉しそうにしている。それでも、


「(ですが、()()はこれでお終いですね)本気で参ります、死なないでくださいね」


 ウェンのその一言にゾッと悪寒がして即座に後ろへ跳ぶが、


(速すぎる!)


 全く目で追う事が出来ずにいた。ウェンは目の前におり刀が振り抜かれている。つまり、


(こうなるよな)


 腹が斬られている。血が出ている、筋肉で臓物が溢れないようにしているがもう駄目だろう。そのままリュウガの意識はフェードアウトしていく中最後に見たのはこちらにゆっくりと歩み寄ってくるウェンの姿だった。

 目を開けるとウェンの胸で視界が埋まっていた。どうやら膝枕されているらしい。


(膝枕なんて何年振りだ?)


 ガキの頃に綾乃にして貰った事を思い出しながら、


「どのくらい寝てた?」

「30分くらいです」

「何で生きてる?」


 そうなのだ、確実に死んだと思っていたが答えはウェンの手にあった。


「エリクサーですよ、絶命する前に飲ませました」


 握られていたのは透明な瓶。そこにエリクサーはあったらしい。流石は伝説の品、あんな絶命寸前の状態でも回復させてくれるらしい。


「主人が弱くてガッカリしたか?」


 主様と呼ぶ相手が弱かったらガッカリするだろうと思っていたが、


「いいえ、むしろ流石です。忠告していたとはいえ本気の一撃をかわしたのですから」

「いやかわしきれてないからこんな無様を晒してるんだが」


 突っ込みを入れるが、


「充分ですね。普通なら上半身と下半身がサヨナラしていますよ」


なんて微笑みながら物騒な事を言う。


「で? お前の狙いは何だ? 刀を手に入れたからってだけじゃないだろこの手合わせは」

「鋭いですね。簡単ですよ。これから主様が戦う龍たちはこれくらい強いという事を体感して貰うためです」


 リュウガがこれから戦う龍皇、龍帝、覇龍の強さを体感するための手合わせだった訳だが、


「ただし覇龍に関してはわたくしと他の2龍で挑んでようやく対等です」

「流石にそれは死ぬ未来しか見えないんだが」


 久しぶりに泣きそうになるリュウガにウェンは、


「ご安心ください。覇龍は世界最強にして世界最大の魚バハムートとの戦いで深手を負ったので暫くは動きません」

「なら安心だなとはならねぇよ。他の2龍に勝てる未来も見えないんだが」

「だからこうしてわたくしと手合わせをして龍の強さに慣れて貰おうという訳ですよ」


「まぁ、()()死ぬ訳にはいかねぇし頑張るか」


 そう言って立ち上がり、


「これからお前の主人として強くなるため鍛えてくれ」


 そう言い頭を下げるリュウガに、


「勿論。立派になっていずれは()になってくださいね。主様」


 嬉しそうに応えるウェンであった。


 主人公の完全敗北です。これでまだウェンは龍形態を残しているので後は察してください。


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