幕間3 練家の始まり
久しぶりの幕間です。よろしくお願いします。練家の始まりです。何故練家が出来たのかの話です。
「親父、何で練家を立ち上げたんだ?」
2代目当主龍鬼が初代当主であり父である龍覇に聞く。
「何で急にそんな事を聞く?」
「今までは当たり前過ぎて疑問に思わなかったが普通に考えていきなり家を立ち上げるっておかしいだろ」
「長くなるかもしれんが良いか?」
「勿論」
「始まりは、
〜数十年前〜
練龍覇が生まれた時父は死んでいて母は病気で弱っていた。そのため世話をしてくれたのは8歳上の姉だった。姉は幼い龍覇と病気の母のため毎日頑張っていた。まだ自分も世話を必要とする年齢だというのにも関わらず泣き言言わず汗水流して働いた。そんな姉の頑張り虚しく母は病気で死んだ。この時龍覇はわんわん泣いた。当たり前だ親が死んで悲しくないはずがないのだから。それでも姉は泣かずに毅然としていた。自分も悲しいだろうに、
「これからは2人で頑張ろうね」
そう言って泣いてる龍覇を抱きしめた。この時龍覇は男の自分が泣いてばかりいて女なのにそこらへんの男よりもカッコいい姉に憧れた。カッコよくなりたい、カッコ良くなって姉に誇らしい弟だと思って貰いたい。そう思い近所の剣術道場をこっそり覗いてはその練習を真似していた。金がないので道場に通えず木刀も買えないがそこらへんの木の枝で練習していた。覗いているのがバレてボコボコにされそうになった事もあったが返り討ちにした。元々才能があり道場の練習を真似していたのが身を結んでいたのだ。
「お前には才能がある。金はいらんから覗き見は辞めて道場に通え」
ある日、門下生から練習を覗き見しているガキがいるとチクラレたが師範はそのガキである龍覇を見てその才能を瞬時に見抜き門下生として迎え入れた。龍覇はメキメキと腕を上げ13歳で師範から一本とるまでに至った。
「お前に教える事はない」
師範から認められ免許皆伝として道場の次期師範として活動する事になった。そんな龍覇に姉は多いに喜んだ。母が死んだ時にすら泣かなかったあの姉が泣きながら喜んだ。そうして時が過ぎていったある日、姉にからある言葉が飛び出した、
「結婚する事になったの。あたし」
衝撃的発言ではあるが当然と言えば当然である。姉は21歳むしろ遅いまである。何でも相手は姉が働いてる酒屋の息子であり一緒に働くうちに恋愛関係に発展したらしい。驚きはあったがめでたい事だと龍覇は喜んだ。姉は酒屋に嫁ぐため家は龍覇1人になったが寂しくはなかった。
しかし、悲劇は突然現れた。
酒屋が強盗団に襲われていると道場の門下生が知らせて来た。龍覇は駆けた。足が折れたと錯覚する程痛む足で駆けた。しかし、駆けつけた時には遅く強盗は逃げた後であり店には殺されている義兄と姉がいた。目の前が真っ暗になった。気がついて起きると家にいた。隣には師範がいた。
「師範、俺姉と義兄の仇をとりたいです」
「復讐をあの2人が望むと思うか?」
「関係ありません。殺さないと俺の気がすまない」
殺気を放つ龍覇の顔は今までにない修羅の顔をしていた。邪魔するなら殺す、そんな感情が目に見えていた師範は、
「分かった、お前を破門とする。2度と道場に顔を見せるな」
苦渋の決断だった。類稀な才能を持った剣士が道を踏み外そうとしているのを止められないというのは師範にとって生涯後悔する事になるが致し方ない。
家から出る龍覇は背中越しに、
「師範、俺に剣術を教えて頂きありがとうございました。さよなら」
そう言って闇の中へと消えていく、龍覇を涙を流して見送る事しか師範には出来なかった。
夜になり山に潜んでいる強盗団を探す必要はなかった。なぜならまた別の村を襲撃しようとしているところを見つけたのだから。
「皆殺しにしてやる、クズ共が」
そう言って刀を持った1人の男に強盗団は大笑いする。
「ギャハハ! たった1人で馬鹿なんじゃねえの?」
そう言うのも無理はない、強盗団は56人全員武装していて相手は1人で武器も刀1本しかない。圧倒的に優位な状況で死ぬ訳がないと思って1歩踏み込んだ1人の首が刎ねられた。
「言ったよな、皆殺しにするって」
そこからは一瞬だった。戦いにもならない。残った55人の首を綺麗に刎ねていった。龍覇は見事仇討ちを果たした訳だがその顔には笑顔がある訳でも怒りに染まった訳でもないただ無があるだけだった。
仇討ちを終えたら家に戻ろうとは思わなかった。帰る理由もない。師範にも別れを済ませているのだから村を出て旅をする事にした。
旅の道中、山賊や武士崩れと出会っては殺した。その内、旅の剣士がひたすらに人を殺しているその者を殺した者には金貨をやるといったお触れ書きが全国に出回る程有名になった。
(旅はここまでだな)
そう決めるや否や山に住む事を決め、人との交流を断つことにした。
彼、練龍覇が運命の出会いをするまで後3ヶ月。
◇
龍覇は獣、魚、山菜といった物を食べる事で山でも難なく生活していた。そんなある日、
「血の臭いがするな」
それも獣臭くない。おそらく人だろう。と結論づける。
(暇潰しにはなるかな)
生きる分には困らず生活していたが娯楽に飢えていたので血の臭いがする方向へと向かった。
(熊に襲われるとは災難だな)
血の臭いのするところに着いて木の上から様子を見ると熊に襲われている人に遭遇した。熊は既に2人殺しており残っている1人も殺そうとしていた。
(暇潰しにもならないが見殺しする訳にはいかないな)
そう思い木から降りる。
「おい、熊公!」
後ろから声が聞こえて振り返った熊の首を居合で斬り落とす。この技は後に ‘神凪’ と名付けられた。
「おい、大丈夫か?」
声をかける。同い年位の女だった。よく見ると服はボロボロである。
「大丈夫」
声に元気がないし、目に光を感じない。
(こいつはもしかして)
何かに気づく、
「お前、忌み子か?」
女はビクッと体を震わせる。どうやら当たりらしい。白髪に碧眼である女を忌み子として山に捨てるところを熊に襲われたらしい。運が良いのか悪いのかどっちかは分からんが。そんな忌み子の女に龍覇は、
「お前、一緒に来い」
連れて行く事にした。何故そうしたのかと聞かれると困るが直感的にこの女と一緒にいたいと思った。しかし、龍覇は今は山で野宿生活している身であるので家なんてものは存在しない。ならばどうするか。造るしかない。そこからは早かった。木を斬り落とし組み立てる事半月で家を建てた。家を造る間は洞窟で暮らしていた。熊の寝床らしく襲われたが返り討ちにして食べた。
「お前の名前は舞だ。異論は認めねぇ」
忌み子の女の名前は勝手に龍覇が決めた。そんな龍覇に文句は付けずそれどころか嬉しそうだった。人として扱って貰えるのがたまらなく嬉しいのだ。
そして数年後のある日、転機が訪れる。野盗に襲われている老人を龍覇が助けるとその助けられた老人が2人の暮らす山の麓で小さな道場を営んでいるのだがもう歳も歳なので引退しようと思っていたのだが跡取りがおらず困っていたらしく龍覇に道場を貰って欲しいと頼んで来た。これを龍覇は承諾した。昔別の道場を破門になった分際で何故かと思うかもしれないがそうする理由があった。舞が身籠ったのである。家があるとはいえ山奥では不便なために道場を貰う事にした。
それで産まれたのがお前だ。」
「へ〜、だけど練家の始まりじゃなく親父の馴れ初めだろこのままだと」
「まぁ、続きを聞け、、
道場を貰いそこを家としたものの経営をするかどうか悩んでいた。自分の剣術は殺しに特化している。そんな技を教えて良いものか。そんな龍覇に舞は、
「人を殺した技はわたしを熊から助けるのに役に立ったんだったから使い方次第では守る技になるんだから。良いんじゃない」
「それはそうだが、、」
まだうじうじと悩む夫に、
「それなら道場ではあくまでも体捌きなんかの基本だけ教えてれば?」
「それぐらいなら、まぁ良いか」
と、道場経営をする事にした。体捌きを主とした護身術は意外にも人気が出て門下生が増えた。
「これがうちの道場の始まりだな」
「だから結局練家の始まりは?」
流石にイライラしてきた。
「いや、ぶっちゃっけ練って家名は直感で考えたんだよ。だから始まりも何もないんだよ」
「はぁ? こんだけ引っ張っておいてそれかよ! じゃあ練式剣術は?」
「あ〜それはな、、
「師範! 山から熊が降りて来た! 退治してくれ!」
門下生が慌てた様子で来た。龍覇は村1番の剣術使いとしても名前が知られており度々山奥から熊なんかの獣退治を任せれている。
「デカイな、コレは!」
3.5mはあろうかという程の熊だった。本州に住むツキノワグマにしてはデカイ。ヒグマ並みか下手したらそれよりデカイ。しかし、
ズバッ!!
そんな音がしたと思いきや熊の首が地面に転がっていた。どんなにデカくても獣に負ける男ではなかったのである。
その熊が余りにもデカくてな。神の遣いなんじゃ? みたいな声が上がってそれを聞いて、神を殺せる程になれば何でも殺せるんじゃねぇかと思って練式剣術を名乗り技名に神を付けてみた。奥義の ‘虚無’ は例外だがな」
「そんな単純な」
聞いて呆れてしまったが、
「だが、いつか神殺しを実現したいもんだな」
いるのかも分からない神を殺す事を想像して笑みを浮かべる。
「おーおー、やってみろ!」
親子2人冗談のつもりで言って笑っているが、2代目当主練龍鬼が20歳を迎えるころに悪神を殺してみせるのはこの時の2人はまだ知らない。
初代当主 練龍覇
リュウガ(17代目当主 練龍牙)と似ているが髪は黒髪で目つきは悪くなく温和な顔をしている。練式剣術‘神凪’を雲耀(0.00005秒)にまで達している内の1人。
2代目当主 練龍鬼
親である初代当主と違いリュウガ(17代目当主)に似ており髪は生まれつきの白髪である。隻眼であり残ってる左目は碧眼である。練式剣術‘神凪’を雲耀にまで達している内の1人。
歴代最強と呼ばれているが強さ的には、
2代目>超えられない壁>17代目>超えられない壁>初代、10代目>超えられない壁>その他歴代当主
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