105話 終撃
リュウガvsゼーリオの戦いは終幕へと向かう
光速の戦闘を繰り広げるリュウガとゼーリオ。この戦いも終わりが近づいていた。リュウガの殺意が極限まで高まった事により死の気配の出力がギールス以上となりゼーリオの守りを突破出来るようになりリュウガが優勢となった。当たれば絶殺の一撃となったリュウガの斬撃をゼーリオは避けるしかない。聖剣で受けようものなら聖剣が死ぬ。つまりは、神と妖精の加護だけが消えるなんて優しいものではなく完全な破壊である。
(こんなのは問題ない。ギールス以上の死の気配には焦りはしたがそれは諸刃の剣だぞ)
ニヤ〜と怪しく笑うゼーリオ。そんなゼーリオの表情を見たら何かあるのかと不審に思い別の手に切り替えたり間を置いたりするのが普通かもしれないがリュウガは止まる事が出来ない。集中力と殺意が高まり過ぎているのだ。ここで集中力を途切れるような行為をする事がリュウガには出来ない。ここで止まったらせっかくの死の気配の出力が落ちる可能性があまりにも高い。そうした理由で止まらないリュウガから繰り出された一撃をひたすらに避けるゼーリオ。攻撃は繰り出さない。聖剣による攻撃も魔法による攻撃もだ。理由は手詰まりだからではない。とある変化が周辺に起きていたからだ。それに気づいたのはゼーリオ以外だとウェンであった。
「不味いかもしれませんね」
「何が不味いの?」
ウェンの言葉にスイが疑問を持ち質問するが答えたのは龍帝であった。
「リュウガの野郎が覚醒したんだよ。ただ力を制御出来てない。このままじゃ地上は死の気配で埋め尽くされる」
「それって!!」
「えぇ。第二の冥府が出来てしまうでしょうね」
「止めないと!!」
「止めれると思うか? オレ様ですら無理だ。最速でなくなっちまったからな。そんなオレ様より弱いお前が止めれる訳ねぇだろ」
「だからと言ってこのままほっておく訳にはいかないでしょ!!」
「お前の言い分は分かるが無理なもんは無理なんだよ。ウェンの出力は勿論生命神であるフルールドリスであっても今のリュウガの死の気配の出力だと打ち消す事は出来ない」
「そんな」
「だから信じるしかないのですよ。主様がこの世界を殺す前にゼーリオを殺す事を」
ゼーリオはひたすら逃げていた。自分の手によって地上を滅ぼせない事は気に入らないところではあるが目的を達成出来ずに殺されるのは最悪なのだ。だったらゼーリオはどうするのか? それは、
(逃げ場なしの地上全てを覆う尽くす裁きの光で殺せばいい)
死の気配によりどんな攻撃も殺せるリュウガでも殺し切れないほどの圧倒的出力と質量による最強の技で神界から攻撃すれば良いのだ。そんなゼーリオの狙いにリュウガは気づかない。普段のリュウガなら気づいた。あまりにも集中し過ぎている。
(殺す! 殺す!! ぶっ殺す!!!!)
思考は殺意で埋め尽くされていた。そんな思考のせいでゼーリオではなく自分が地上を滅ぼそうとしている事に気づかないでいた。それを別の神界から見ていたタケミカヅチは、
「あ〜あ、せっかく最強に成ったのにあれじゃあ何もかも滅ぼしちまうぞ? いいのか?」
「いい訳あるかよ。だがまぁ何とかするだろ」
「ほう? どうやって?」
「知るかよ」
まさかの返答に思わずずっこけるタケミカヅチ、
「今の流れは答えを知ってないと可笑しいだろが」
「知らないもんは知らないんだよ。もう、あいつは俺やお前ですら敵わないような領域にいるんだからよ」
「嘘言うなよ。お前だったら相手が光速でも対処出来るだろ」
「出来るな。だが俺のやり方と同じにはならない。俺のはあくまでも光速で動けない人間の悪あがきでしかない。だが、17代目は光速を生きる人間だ。俺とは違う対処方法を見せてくれるさ」
ビッ!! 鋭い突きにより右耳が千切れるゼーリオ。
(どういう事だ? 速さは同じだ。それに今の我は最高神としてのプライドを捨てて逃げに徹しているのに何故攻撃が当たる??)
当たるはずのない攻撃に疑問を持つ。
(そもそも今の攻撃も確実に避けたはずだ。それが何故・・・・成程な。死の気配によって刀身が伸びているのか)
実際に刀が伸びた訳ではないが死の気配により目には見えないが刀身が数1十cm伸びたのだ。
(そんなもので殺せる我ではない。タネに気づけば避けるのは容易い)
そう思っていたゼーリオであったがそれが間違いであると気づくべきであった。今のリュウガは死の気配を完全に掌握しており垂れ流してるだけではない事を。
(もっと殺意を!! 刀に込めろ!! 同速になった今なら死の気配による先読みもいらねぇ!! ただ死の気配を刀に集中させろ!! さっきの突きよりも鋭く!! ゼーリオだろうが何だろうが一撃で殺せる死の気配を集めろ!!)
地上を覆い尽くそうとしていた死の気配が急に消えた。しかし、
「何、、これ?? 震えが止まらない」
世界でも最高峰の力を持つ龍。その中でも最強の龍である龍帝に次いだ力を持った存在であるスイが震えていた。ウェンなんかは立つ事が出来ずに地面に膝をついていた。
「ははっ!! 笑っちまうよ!! 何だお前は!! 今のお前は紛れもない最強の龍神だよ!! リュウガ・レン!!」
龍帝の視線の先にいたリュウガからは殺意も死の気配も感じない。ただ彼の持つ刀からはとてつもない死の気配が凝縮されていた。それを見たゼーリオは、
(こいつはここで殺す!! 神界からの攻撃ではダメだ!! 今しかない!! これ以上力を増す前に殺す!!)
ゼーリオは拳を握る。それだけの簡単なモーションで地上の酸素を奪う・・・・はずだった。しかし、奪う事が出来なかった。ゼーリオが拳を握ると同時どころかそれよりも早く刀を振っていたリュウガにより拳を握ろうとしていた左腕が斬り落とされていたからだ。
「ぎゃああああ!!!!」
悲鳴が上がる。しかもその悲鳴を上げる行為すらも無駄な行為であった。相手は自分と同じ速度を生きているからだ。
『神喰』
上段斬りで真っ二つにされるところで聖剣により防ぐ。おかげて死ぬ事はなかったが聖剣は完全に破壊されてしまうのであった。
「舐めるなよ。聖剣なんぞ簡単に創り直せる!!」
聖剣を新たに創り直すがそれを即座に破壊するリュウガ。おまけに、
「クソがああああ!!!!」
胸を真一文字に斬られる。生命の加護により即死は防いだが寿命と魔力を半分以上は殺された。
(これでは龍帝にも殺される)
とんでもない弱体化だ。しかし、
「貴様の勝ちだ。練龍牙。だが殲滅戦は我の勝ちだ」
自分の生命力と神界に残った自分の配下の神、天使の生命力、魔力を吸い尽くして放つ最強の技は、
【裁きの光】
それもゼーリオ自身をも滅ぼしてしまう自爆技として放たれる。神々しい光ではあるがそれは地上を飲み込みあらゆる生命の命を奪う死の光。それに対してリュウガは構える。目の前に自分の命を奪う光が迫っていても焦りはない。あるのは、
(殺す!!)
殺意のみだった。そして放たれた最強の技、
【死双閃】
光速では既に発動された裁きの光に飲み込まれる。だから光速を超えた。そんな理由だけでは光速を超えれる訳がない。それでもリュウガは超えてみせた。初撃で裁きの光を完全に殺して、そのまま二撃目でゼーリオを完全に両断する。それだけの威力を持った技であったが裁きの光とゼーリオ以外には被害は何もなかった。
「終わった」
犠牲はあまりにもデカい。残った国は一つだけ。人口も残り僅かとなった。それでも戦争は終わったのだ。最後に光速を超えたリュウガの体はボロボロであるが生き残った皆んなの所へ向かおうとするが、
「終わりましたね。それではこれからの世界のお話といきましょうか」
生命神フルールドリスが現れるのであった。
ゼーリオを倒したリュウガの前に現れた生命神・フルールドリスの狙いとは?
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