104話 ゼーリオの本気
復活したリュウガの実力を認めたゼーリオが本気を出す。激闘の行方は??
雷撃により上級の神と同等の力を有していた天使、1000体以上を瞬殺してしまう龍帝。
「ありがとうございます。流石に死を覚悟しました」
「気にすんな。オレ様よりもスイに礼を言うんだな。ここまで粘ってなかったらオレ様が復活する前にお前は死んでたからな」
「そうですね。ありがとうございます。スイ」
礼を言われたスイは悔しそうにする。
「ご、ごめんなざい!! 翁の心臓にアグニールの炎の結晶も喰らっておいて全然役に立てながっだ!!」
ボロボロと泣くスイ。
「強くなったとはいえまだまだ子供ですね」
「まぁ、強くなっても精神的にはまだまだ成長が足りないようだからな」
泣いてるスイの頭を撫でる龍帝。
「オレ様たちは生きてるんだ。泣くな。後の事はリュウガに任せろ」
その言葉に、
「主様が生きてるのですか?」
「何があったのかは知らないが生きてるぜ。それも、ゼーリオを殺せるレベルまでの実力を身につけてな。もし、今のあいつでゼーリオを殺さないようなら諦めるしかねぇ。それだけの実力をリュウガは手にした」
「そうですか」
ウェンはリュウガに会った時の事を思い出す。
(あの時龍神になれると言ってはおりましたがどうやら本当に龍神になったのですね)
ウェンの視線の先遥か遠くでは光速の戦闘が繰り広げられていた。光速移動の出来る2人による戦闘は目にも止まらない速さであり龍帝であっても瞬殺されてしまうものでありこの戦闘に介入出来る存在はこの世界には存在しない。
「ここまでの存在になるとは思いもしなかったぞ。練龍牙!!」
ゼーリオにとってはここまで戦闘が長引いた事はギールス以来であった。しかし、それはギールスの死を与える力があったから中々決めきるのが難しかっただけで戦闘能力はゼーリオの方が圧倒的に高かったのだ。本当に実力が拮抗している存在はリュウガのみであった。そんなリュウガは、
「・・・・・・」
無言であった。喋るのすら無駄だと判断していた。いくらゼーリオに対抗出来るまでの身体能力を手に入れたとはいえまだ体に馴染んではいない。そのため早期に決着を付けたいのだ。これが普通の相手なら可能であったのだが同速であるためにそれは不可能であった。死を与える力を刀に付与しているのだが当たらないのでは意味がない。
(ギールスとの戦いも考えていたし何より昔戦っているのが大きいな。死を与える力の対策は充分なんだよ)
フルールドリスのように生命の力を聖剣と自分自身にかける事で死の気配を中和する事で即死を防いでいるゼーリオであるが、
(基本性能は癪ではあるが向こうのが上か)
即死能力を無効化していなかったら既に死んでいるくらいには傷を負っている。ゼーリオは最高神として絶対的な力を持っているが戦闘経験は少ない。それに対してリュウガは敵の強さはピンキリであるものの実戦経験に関してはゼーリオを遥かに凌ぐ。そんなリュウガの戦闘経験から来る予測も相まってリュウガとゼーリオは共に光速ではあるもののリュウガはゼーリオの動き出しを潰したりと戦闘を有利に進めていた。それでもゼーリオを殺し切るには足りない。ゼーリオは多少の傷であればすぐに直ってしまう。
(こいつが強くなった所で我には勝てない。絶対は我だ!!)
リュウガは突然水の中に閉じ込められる。全属性を使えるゼーリオによる水属性の攻撃だ。これを軽く手を振るだけでリュウガは水を消し飛ばすのだが光速戦闘においてそれは無駄な所作であった。
『裁きの光』
最強の攻撃技がリュウガに当たるがそれを物ともしないでゼーリオに斬りかかるがリュウガの周囲だけ酸素がなくなる。呼吸が出来ないままではあるが一瞬の動きの鈍化をついてゼーリオの斬撃がリュウガを襲う。ガードは間に合いはしたがあまりにもギリギリであったために吹き飛ばされてしまう。
「クッソ!!(ただの斬り合いなら俺のが上だがその他の要素で負けてやがる!!)」
死の気配を纏う事で基本攻撃が即死になってはいるがそれを無効化されている今は基礎戦闘力だけでゼーリオを圧倒するしかないのだ。
(いや、死の気配を無効化出来ないぐらい出力を上げればいいだろ!!)
実際に冥府での戦いにおいてフルールドリスは確かに死の気配を無効化していたが本気になったギールスの死の気配の出力はフルールドリスでも無効化する事ができなかった。生命の神であるフルールドリスで無効化出来ないのだ。いくら最高神であっても本職であるフルールドリスほどの無効効果を出せている訳ではない。
(つまりは俺がギールス並の死の気配を出さないといけない訳だが出来るのか?)
ゼーリオに対抗出来るだけの力を身につけたとはいえまだ完全に力を使いこなせていないリュウガで死の気配の出力を出せるのかが問題なのだが、
(考えるだけ無駄だな。そもそも俺は2代目に殺すと宣言した以上は殺すしかないんだよ!!)
宣言したからには殺す。これは絶対だ。ゼーリオを殺すのを実現するために死の気配をより濃くするために殺気を高めてより強く死をイメージする。自分自身が死であるという認識を持ったリュウガの纏う死の気配はギールスと同等となっていた。それを感じたゼーリオはリュウガの周りの酸素を抜いて真空を作り出そうとするのだが、
「何故だ? 何故真空にならん!?」
出来なかった。今のリュウガは自身を中心とした半径1mが死の空間となり生き物だけでなく魔法すらも存在することが出来ずに死に絶える空間を生み出していた。それを理解した瞬間にゼーリオの左腕はリュウガに斬り落とされる。
「ぐぉおおああああ!!!!」
魔力防御により名持ちの龍の鱗よりも硬いゼーリオの体を容易く両断してしまうリュウガ。おまけに、
(クソクソクソが!!!! 魔力さえあれば腕を生やすのなぞ簡単なのにあいつの死の気配が邪魔で生やせない!! フルールドリスでなければ無理だ!!)
しかし、フルールドリスはこの殲滅戦には反対であり邪魔出来ないように現在神界に閉じ込めている。
(仮にいてもリュウガがいる以上は直せない!! つまりはこいつを殺さねば我の左腕は戻らない)
流石に死が近づいているゼーリオ。そんなゼーリオに、
「終わりにするぞ」
リュウガの殺意の籠った言葉が投げられて、
「舐めるなよ!! 神のなり損ないが!!」
リュウガとゼーリオの戦いの決着はこれより数秒後に着くのであった。
次回決着!!
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