93話 開戦
新年を迎えて地上にいるものたちと神との戦いが始まる。
新年を迎えた。普通ならば世界中の人々は新年を迎えた事を祝うのであるが今年はそうはならない。神との戦いが控えているからだ。昼の12時に開戦すると大神、ゼーリオは宣言した。そのため誰も新年を祝う者など世界のどこにもいなかった。そして開戦の時が来た瞬間に世界中は光に包まれるのであった。
「開戦だな」
1人で運命の宿木にいるリュウガは抜刀術の構えを取る。
(いきなり大将であるゼーリオが来るとは思えないが仮に来るとしたら俺か龍帝のどっちかの場所にだろ)
そんな考えをリュウガは持っていた。最高戦力の1人である風翔龍に関しては除外していた。確かに強い。だがゼーリオに挑むには実力不足だ。光を司る神であるゼーリオを相手にするなら最低でも雷速は欲しいからだ。
「さて初手はどう来るか・・・・おいおい!? いきなりこれで終わらせる気かよ!!」
光の正体は開戦の合図などではない。
「これは戦争ではない。殲滅戦だ」
そう言って光の矢が世界中に降り注ぐ。
(不味い!! 全部は撃ち落とせねぇ!!)
降り注ぐ光の矢を迎撃するリュウガであったがその全ては迎撃出来ずにガルダ王国を襲う。
きゃあーーーー!!!!
ぐぁーーーー!!!!
イヤーーーー!!!!
国中から悲鳴が響く。そんな事がガルダ王国だけでなく世界中で起こっている。
(クッソ!! この感じ・・・・数万人が死んだ。死ななかったとしても重症者多数。戦える奴残ってんのか? マジでヤバいぞ)
汗を流すリュウガ。
「さて殲滅の時間だ。ゆけ。我が天使たちよ」
「「「「はっ!!!!」」」」
世界中に天使たちが現れて攻撃を開始する。天使の強さは1人1人がSランク以上であり戦争のために必死こいて訓練していた冒険者、騎士といった各国の兵力を次々と殺していく。
「バカな! 俺はこの国最強の騎士」
とある国の騎士は首を斬り離されて死んでしまう。これによりその国の兵力はなくなり非戦闘員はただただ悲鳴を上げながら殺されてしまうのであった。そうして1つの国を滅ぼした天使たちは次の国に移動する。
「こ、これが天使か。強いな」
ぜぇはぁと息切れしているゴウ。片手でも経験は死ぬ訳ではない。何よりリュウガといった例外と手合わせしたりしたのが大きい。おかげて天使相手に善戦していた。
「これで雑兵か。全員気を引き締めろ!」
ギルド総本部の冒険者やフリーの冒険者を指揮する。しかし、被害がない訳ではない。既に瀕死の人間が多く死人も出てしまっていてゴウを含めて50人はいたのが20人になってしまっていた。
「俺の所には来ないな。体力を削るために大量に投入してくると思ったんだがな」
リュウガの所には天使が来なかった。それでも何もしなかった訳ではなく斬撃を飛ばして数十体を殺していた。
「他は激戦になってるな。あちこちで戦闘音が聞こえるな」
城、魔法学院、錬金術学院という大勢の人間がいる場所にはもっと多くの天使が攻撃を仕掛けた。しかし、その天使は悉くが殺されるのであった。
(強い。これでまだ序盤に投入される兵力か。そんな連中を瞬殺してしまうのか)
城の防衛に当たっている騎士団の団長であるキュウイは同じく防衛に当たっているルイの実力を目にして驚きを隠さないでいた。
(最後にあった時よりも格段に強くなっている)
以前に副団長に挑んで来た時よりも強くなっているルイ。そんなルイ同様に運命の宿木の冒険者たちは天使たちを殺し尽くすのであった。他の所だと薔薇の花園のレオナも無傷で殺し尽くすのであった。ガルド王国は他の国よりも被害が少なかった。他国を襲った天使たちは、
「ウォーミングアップにもならねぇな」
龍帝の雷撃で灰になるか、
「前哨戦にしてはしょっぱかったな」
風翔龍の風によって切り刻まれるのであった。それを見たゼーリオは不快そうな表情をする事なく。
「それでは第2陣出撃だ」
そう言って再び天使を出撃させる。
「さっきよりは強いな。まぁ、オレ様の敵にならねぇがな」
とある国を襲っていた天使たちの下に雷速で向かうと瞬殺する龍帝。その調子で各国を攻撃している天使たちを龍帝は狩っていく。風翔龍も龍帝同様に天使を狩っていた。しかし、ガルド王国にいるリュウガは、
(チッ! あいつらほどの機動力が俺にはないから面倒だが走るしかない)
龍の中でも特に機動力に優れる龍帝、風翔龍に及ばないだけで人類の中では最速であり各地に散っていった天使たちを片付けるがそれでも、
(マイ、ルイ、レイは問題なくこのレベルを始末出来るだろうが他はキツいだろ。つーか下手すりゃ全滅もある)
急ぐリュウガ。向かう先はゴウが担当する地区だ。ゴウは強いし経験豊富だ。しかし、先程の天使レベルなら対処出来ても今現れた天使たちはリヴァイアサンやサンダーバード、フェンリルといった伝説のモンスター以上の実力を持っている。そんな相手に片手のゴウでは殺される。そう思って天使たちを斬り殺しながら向かうとそこには、
「あ〜サブマスターですか。昨日ぶりですね。すいません。ご心配おかけして」
ゴウと共に防衛に当たっていた冒険者たちと天使たちの死体が転がっていた。そこの中心にいるゴウは瀕死になりながらもリュウガに話かける。
「エリクサーはどうした! 飲めよ! 死ぬぞ!」
昨日の内にアズサが錬金したエリクサーを3つ冒険者たちに渡していたのだ。
「ないです。2回目の襲撃で来た天使が格上だったのでエリクサーを飲みながらのゾンビ戦法で戦っていたんですから」
そう言ったゴウに自分の持っているエリクサーを飲ませようとするが、
「無駄な事をしないでください。あなたが死んだら地上はお終いです。正直エリクサーは全部あなたに渡すべきだと俺は思ってました。それでも自分が死ぬ確率を少しでも下げれると思って受け取ったんです。まぁ無駄になりましたがね」
そう言って徐々に生気がなくなっていくゴウに、
「こんな所で無駄な時間を過ごすな!!あなたはこの戦争を勝利に導くのに絶対に必要な人だ!! 行け!!」
死に際とは思えないほどの声量で怒鳴られて、
「じゃあな。今まで世話になった」
強さもそうだが長年の冒険者としての経験を活かして貢献してくれたゴウに礼を言ってリュウガは別の地区へと走っていった。それを見届けて、
「忙しくも充実した生活が出来たんです。お礼を言うのは俺のほうですよ」
そう言ってゴウは静かに息を引き取るのであった。
(わかっていた事だ。今回の戦いで人が死ぬのなんてのは。俺ですら生き残れない可能性のない地獄のような戦場だ)
そう言い聞かせてゴウが死んだ事を割り切るリュウガ。仲間の死により動揺して本来の実力が出せないようでは話にならないからだ。
(他の連中は大丈夫なのか)
天使が続々と襲ってくる。地区を殲滅した連中が少しでも力を削ぐために来たのだろう。
「邪魔だ」
速攻で終わらせる。
(この調子だと負けたギルドが結構あるな)
ガルド王国には44もの冒険者ギルドがあるがどこもSランクが所属するという訳ではない。そんなギルドが防衛している地区は全滅したと考えていいだろう。
(Sランクが防衛してるところでもやばいだろうな。ここからだと近いのは暗闇の一等星か)
No. 1ギルドである暗闇の一等星が防衛している地区へと到着する。そこに生存者はいなかった。
「さっき始末した天使どもはここを担当してた連中が流れて来たのか」
それでも数人の天使の死体が転がっているのでまったくの無駄死にではないらしい。そんな地獄が各地で起きているのだろう。実際にガルド王国各地で防衛していた冒険者たちはほとんどが死亡していた。残っているのは運命の宿木所属メンバーと共に戦っている冒険者たちだけだ。生き残った者たちもレベルの違いに絶望し戦意喪失していた。そんな事が世界各地で起きておりこの世界に存在する58国の内既に53国が滅んで世界人口100億人もいたが既に5億人を下回っていた。
「龍神の末裔に龍共が住まう所は天使では歯が立たないか。それでは本格的な殲滅といこう」
神々の襲撃は苛烈さを増ばかりである。
最終戦なので続々と敵も味方も死んでいきます。
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