交わらない平行線
私たち姉弟は生まれつき交わる事が出来なかった。
私は耳を患って、弟は目を患って生まれた。
聴覚障害を抱えた私は手話をメインに生活していたが視覚障害の弟は点字が主だった。
互いにズレた喪失を抱えた以上コミュニケーションは難しかったがかえって互いの気持ちを強く理解できた。そこだけが互いの共通認識であり、信頼だった。
お互いの気持ちをここまで理解できるのは自分たちしかいない、そう思ってお互い生きてきた。
私たちは試行錯誤し、支えになって生きてきた。そんなある日、共通の五感を使ってコミュニケーションをとる方法を思いついた。
触覚越しに伝えるモールス信号だ。
私たちはモールス信号を学ぶと互いの手を指で叩いた。文字の読めない弟には特に効果的だった。
生まれて初めての意思疎通に感動した私たちは互いに抱き合った。
私達の口からは喜びの声が漏れた。