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77.黒髪美少女


本日は夏休み明けの1発目!



この夏休みはエリたちと海に行ったり、BBQしたり、ママの実家に帰省したり...いろんなイベントがあった楽しい1か月だった。


それに何と言ってもリッキーと夏祭りに行ったことはこの夏一番の思い出だ。これまでずっと言えずにいたお互いの秘密を話せたことで嘘偽りなく心から言い合える仲になったと思う。






いつも通りの時間に学校について教室に向かう。今日はエリから「先に行っててほしい」と連絡を受けたので一人で学校まで来た。おそらくこの時間だともうリッキーはいるはずだけど...。



そっと教室を覗いてみると窓辺の席でぐでーっとしながら涼んでいるリッキーを発見した。



「リッキー、おはー!」


今にも溶けだしそうなほどダウンしているリッキーに近づいて前から声をかけた。するとリッキーはゆっくりとナマケモノのような動きで顔を上げて私の顔をまじまじと見つめたのち、またぺったりと机に顔を付けた。



「おはよ」


「なんでそんなにぐでってるの?」


「机がひんやりしてて気持ちいいんだ」


なるほど。試しに私もリッキーの机に顔をつけてみると、ほどよくひんやりしていて気持ちがいい。その体勢だと至近距離で見つめあうことになるわけで、リッキーはしばらくすると照れて顔を上げてしまった。あぁ、残念。



「本当に心臓に悪い...。今日ちょっとテンション高くない?」


そうなのかな?

まぁ、久しぶりのリッキーだしテンションあがっちゃってるのかもしれない。



「リッキーと直接会うの久しぶりだし!」


「夏祭りの時に会ったじゃん。それにディスコで通話もしたし」


「いやいや2週間は長いよ!それに通話はノーカン!」


本当は夏祭りだけじゃなくていろんなところに連れていきたかったんだけどリッキーは人の多いところは苦手だし何かと忙しそうだったから誘えなかった。一度私の家にも誘ってみたが、「流石にそれはハードル高すぎ」という謎の言葉で断られてしまった。



「そういえば、今日は髪くくってるんだ」


「お、気づいた?ポニテにしてみた。どう?」


「似合ってると思うよ」


「ふふーん、ありがと!」


リッキーは夏祭りのときしかり、よく人を見ているのか割と人の変化に気づきやすい。それにちゃんと素直に褒めてくれるからこちらも気分がいいのだ。これはなかなかイケメンポイント高めだね。



むむ...これは私も何かリッキーのことを褒め返してあげなければ不公平というもの。私はじーっとリッキーの顔を見つめると顔をそらしてしまった。その横顔を見てある変化に気づいた。



「な、なに?」


「リッキーもしかして前髪切った?」


「え...わかる?ちょっと切っただけなんだけど」


「あったりまえじゃーん!」


今日はよくリッキーと目が合うなーっと思っていたが、その原因は目にかかるくらいまで伸びていた前髪が切られていたのだ。そのおかげでリッキーのキリっとした瞳がばっちり現れている。



「わた...いや、僕も少しづつ変わらなきゃなって思ってさ」


リッキーは周りに聞こえないように小さくそうささやいた。リッキーにとってそこまで伸びた前髪は外界と境界をつくる壁だったのだろう。それはリッキーにとって勇気をもった大きな一歩だと思う。



「うん!こっちのほうが似合ってる!」


「ありがと...」


そういうとリッキーは少しだけはにかんだ。うーん、この顔で微笑まれたら男子は勘違い間違いなしだな...これは私が守らなきゃ。







そんな感じでしばらく窓辺で話していると後ろから誰かが近づいてきた。私が振り返ろうとした瞬間にぱっと手で目を覆われてしまった。



「だーれだ」


「この声は~...エリでしょ!」


振り返ってみるとそこにはさらさらな黒髪で清涼感のある美少女が立っていた。



「大正解~」


「いや、だれぇ!?」


「誰って...エリだけど」


いやいやいや...。

私の記憶の中だと両耳にバチバチにピアス開けてて、髪染めてて、スカート丈もギリギリを攻め続けてたんだけど!最後に海水浴に行ったときは普通だったのに急にどうしたの?!



「あ、瀬川さんおはよ~」


「...お、おはようございます」


「髪切ったの?似合ってんね」


「あ...どうもです...」


なっ...リッキーが逃げない!?

この前はわかりやすく顔が蒼白になっていたのに今日はちょっと困惑しているだけで全然ビビっていない。



「ちょっとエリこっちきて!」


「え、あぁー...」


私はリッキーと話しているエリの手を強引に引っ張って離れたところまで連れて行った。これは流石に訳を聞かなければならない。



「ちょっともー...瀬川さんと話してる途中だったのに」


「いやいやどしたんその恰好!後ろ振り返ったら知らない清楚美少女いたからビビったよ?」


「いやー、照れるね」


確かにこれはこれで似合っているんだけど一気に真逆の方向に転換してしまったのはなぜなのか。



「なんで急に...この前海行ったときは違ったよね?」


「まぁこの格好なら瀬川さんも逃げないかなーって。私の格好にビビってたらしいし」


「それはそうかもだけど...」


たしかに今回のリッキーはどもりはしたもののちゃんと話せていた。



「でもこれからはイメチェンしてこれでいくの?エリ金髪好きだったじゃん」


「そんなわけないよ。これは瀬川さんと話すきっかけづくり。そのうち戻すし」


「そ、そう?」


それならいいんだけど...。



「最低でもあっちが下の名前で呼んでくれるまではこの格好ですごそっかなー」


「うーん...いやそれはどうだろ。やっぱリッキー人見知りだし」


私の場合、半強制的に呼ばせたところもあるしリッキーの方から下の名前で呼ばれるのは相当な時間がかかると思うけどねー。



「ん~、もしかして...瀬川さんが取られると思って嫉妬してる?」


「嫉妬!?」


「そんなに嫉妬しないで。ほら悠にも抱きついてあげるから」


そんなどこかで聞いたような言葉とともにおもむろにガバっとホールドされてしまった。くっ...いつぞや私がエリに言った言葉がそのままそっくり返ってくるだなんて。



「なんだっけ。悠のことも好きだからー...だっけ?」


「いじわるだね...」


「さて、なんのことやら」


エリはわざとらしくにやっとしたしたり顔を浮かべた。彼女とはもう5年の付き合いになるが実のところ私がギャルになったきっかけも彼女だし、いつもいつも彼女には敵わない。



「さ、早速リッキーちゃんにエリって呼んでもらいにいこっか」


「ちょっとそれ私の!!」


『リッキー』は私が特許取ってるんだからね!

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