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6.未知との邂逅

セリフと間違いを修正しました。

 

「なんだここは...」



気がついたらなんだか妙な部屋にいた。



確か配信のあと疲れすぎてボタンを押した瞬間に、ベッドに倒れ込んだはずだ。  



僕の部屋はこんなに広くもないし、第一に何もなさすぎる。セオリー通りに行くならば、このあと女神が出てきて「あなたは死にました」と異世界出向を命じられるだろう。


そう思えるような白く平坦な地面が地平線の果てまで続いていた。




現実的に考えるならばここは夢の世界だろう。

まぁ、こうして夢だと自分でも理解できるということは白昼夢ということになる。



それにしても、何もなさすぎる。

白昼夢をみるならもう少し欲望に忠実であってほしい。何が悲しくてこんな精神と時の部屋みたいなところに閉じ込められねばならんのだ。



「誰かいないのか?」


「いるよ」


その問いは別段誰かに問いかけたものではなかったのだが、自分の真後ろから声が聞こえて慌てて振り返りざまに転んだ。


「そんなに驚かなくても」


そういうとそいつはカラカラと明るく笑った。


「な……」


「どうしたんだよ?そんな信じられないものでも見るような目をしてさ」


最初こそ驚いたのは急に後ろから人が現れるという恐怖体験からであった。


しかし、二度目に驚いたのはそいつの顔…というか、姿が前世の僕そのものだったからだ。


いままで、前世の姿については薄ぼんやりとしか思い出すことが出来なかったが、今この姿を見て確信した。そういえば、自分はこういう顔をしていた。


「この世界は君の夢のなかだ。何があってもおかしくはないだろう」


「確かに...そうだけど」


彼の差し出してきた手を恐る恐る掴んで立ち上がる。

だからといって急に思い出すことなどあるのだろうか。深層心理の奥深くから呼び覚ましたとか?




そう考え込んでいるとソイツが問いかけてきた。


「ところで君、最近充実してるかい?」


すると急にそいつはそんなことを問いかけてきた。なんだ、それは?

そこでしてないとでも言えば異世界に連れて行かれるのか。いきなり気持ちの悪いやつだ。





「まぁ、それなりに」


推しだっているし、学校生活...はまぁ、そこまでだけど幼馴染が2人もいれば十分だ。


「そうかそうか。まぁ、それならよかったよ」


「はぁ...?」


訳知り顔で一人で頷くこいつを見ているとなんだかムカついてきた。自分の体だといえども一発殴りたくなってくる。



「別に君の体じゃないよ。今はボクの体だよ」


思考を読まれた。



「元々は僕のだ」


「ふぅ...今の君に何言ったって理解できないよね」


なんだってこいつはさっきからこんなに偉そうなんだ?自分の体を殴るのもやはり気が引けるのでここはぐっと拳を握って耐えた。



「お前はなんなんだよ。夢先案内人かなんかか?」


「なにそれ。夢先案内人って?」


「語感が良かったから言ってみただけだ」


「あぁ...そう」



夢先案内人通じないなんて、もしかしてこいつ現代っ子なのか。いや、僕が言えたことじゃないけど。



「ボクは強いて言うなら君の裏人格?みたいなやつだよ。まぁ、一般的な定義とは全くちがうんだけどね」


「僕って二重人格者なのか?僕が知らない間に夜な夜な徘徊とかしてないだろうな」


「いや、だから一般的な定義とはちがうって言っただろう。もう、ちゃんと話聞いてよ」


・・・。



「どう違うんだよ」


「裏人格って言っても表に出るもんじゃないってこと。それに今は君と全く別の思考段階にいるから裏人格とも全然ちがうんだけどね。これ以上いうとアレだからさ...」


そういって言葉を濁す。そこに突っ込んでもおそらく答えてくれないだろうし、何だったらムカつく一言でも返されそうだったからあえて受け流した。


「名前とかないのか?」


呼びづらくて何かと不便だ。


「そうだね。これからもしょっちゅう会うことになるだろうし何か決めておこうか」


これからも僕の夢に現れるつもりなのか、こいつ。厄介なやつだな。


「じゃあ、ジキルなんてどう?」


ジキルとハイドか。

まてよ、それなら裏人格だしハイドでいいのではないのか?あんまり原作はしらないが。


「ハイドじゃなくて?」


「どっちでもよくないかい」


まぁ、本人がそういうならどうでもいいけど。



「で、ジキルはどうして僕の夢の中に?」


「君はさっきから質問ばかりだね。しかもどうでもいい質問。謝罪会見の記者みたい」


こいつやっぱりいけ好かない。暇だからって質問しちゃ悪いのか。あぁ、早く目が覚めてほしい。こんなところ二度と来てやるもんか。


「それは困るな。しょうがない。できる範囲内なら質問に答えてあげるよ」


「...」


「いや、ごめんって。ボクも悪かったよ。言葉狩りする記者って人間として最下層だよね。一緒にして悪かった」


「そこまでは言ってない」


「よかった。君が機嫌を直してくれたみたいで」


別に機嫌が直ったわけではないが、これ以上無視するともっとウザそうだから適度に話をすることにしただけだ。



「そういえば、君ってクラスのあの子と友達にならないの?」


「誰だよ。あの子って」


「えーと、あの金髪でギャルっぽい見た目のさ」


「篠宮さんか」


「そうそう!篠宮悠。彼女いい子そうだしクラスの友達1号になれるんじゃないの?」


「いい子そうっていう根拠はなに」


「ボクの直感!」


そういって胸を張るジキルをみて白けた目をおくってやる。こいつ現世なら友達いないけどズケズケと他人のグループ内に入り込んでいくタイプだ。僕は嫌い。



「とにかく、話しかけてみればいいじゃない。だってあっちから友達になりたいって仄めかしてたんだよ」


「別に友達ほしくないし...」


「震えるくらいなら痩せ我慢するんじゃないよ」



友達になるっていったってコミュ障なことを除けば、上辺だけならなんとかなるだろう。まぁ、コミュ障ってのが1番厄介だけど。


その後、どう自分の身体について告白する?

相手だって自分が女子のつもりで好意を持っているわけだし、簡単にはいそうですかとはならない。恐らくは失望してそのまま去っていくだろう。

もしかしたら、そのことを学校中に言いふらすかもしれない。そうしたら、僕はもう一生立ち上がれないだろう。


そうであれば、最初からなんの関係も持たないのが一番である。そうすれば相手も深くは踏み込んでこない。



「でも、もしかしたら理解してくれるかもしれないよ?」


「リターンにリスクが釣り合ってない。One or nothingだ」


「保守的な思考だね」


「変化を求めて失敗するよりはマシだ」


現状維持こそ己の信条だ。




「今の君はまだ何もわかっていないようだし、卑屈すぎる。どうしてこんなふうになったのかな...」


「親でもないお前に心配される筋合いはない」


「いや、ほら。ボクだって一応君の一部だしさ」


「初対面だがな」


「君は覚えていないだろうけどもう数回会ってるよ」


そうなのか?

だとしてもその日見た夢のことなんて子供のときに見た悪夢以外は何も覚えていないので証拠もない。



「じゃあ今回はこの内容を思い出せるようにしてあげるよ。いつまでも進歩がないしね」


「別にいらない」


正直僕が見たい夢はもっと自分の欲に従った至って健全な男子高校生的な思考に基づく世界だ。できるなら今からでもそういう世界観に変えてそこから、思い出せるようにしてくれ。



「無理だよ。それにそろそろ目が覚める時間だ」


「ようやくか。長かったよ」


「そんなこというなよ。これからも長い付き合いになるんだからさ」



そういうと次第に視界に靄がかかったようにぼんやりとしてくる。その世界から体が浮かんでいるように上へと上っていく。


上を見上げるジキルがこちらをみてにやりと笑いかける。



「次来るときはもう少し面白い話を持ってきてよね」







「なんてシュールな夢なんだよ...」


僕はベッドから起き上がり、今の時間を確認する。配信を終わったのが夜の10時頃。

今は昼過ぎだった。


12時間も寝ていたのか。どおりで体がところどころ痛いわけだ。今日が日曜日で助かった。



それにしても見た夢の内容を覚えているということは白昼夢だからなのだろうか?




「まあいいや。殿下のアーカイブでもみるか」



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夢と自覚できてる夢は、白昼夢ではなく明晰夢では? 白昼夢だと起きているのに夢のようなものが見えることだったような
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